コント蕎麦屋
ガラガラー
A「いらっしゃい!」
B「あの……こちらでそばを頂けるって本当ですか?」
A「まあ蕎麦屋なので」
B「ヨシッ!!やっぱりここで間違ってなかった……」
A「あっ、もしかして何か口コミとか見て探してきてくれた感じですか?」
B「いや、この辺散歩しててなんでもいいから麺類食いたいなあって思って」
A「思ったより全然軽かった」
B「ラーメンは昨日食べたしパスタって気分でもないし、しゃあねえそばでいいやって思って」
A「そんな消去法で」
B「それで、もしかしたらここなら俺の求めていたものに出会えるんじゃないかと意を決してこちらの入り口をノックしたわけです」
A「まあウチ引き戸だけどね、さっきガラガラ言ってたし」
B「でも俺のカンは鈍っちゃいなかったってわけですね」
A「看板にも旗にも書いてるからねそば処って」
B「ふむ……店内は清潔ですね」
A「……?」
B「よし、とりあえず喉乾いたんでカレーあります?」
A「なんでだよ」
B「蕎麦屋のカレー好きなんですよ」
A「いや、あるけども。喉乾いたんじゃないのかよ」
B「カレーは飲み物じゃないですか」
A「急なデブキャラ設定どっから来たんだ。てか蕎麦食べに来たんじゃなかったの」
B「でもカレーの方が美味しいし」
A「それ蕎麦屋で一番言っちゃいけないやつだからね」
B「わかりましたよ。そこまで言うなら出してみなさい。その……そば?とやらを」
A「なんで蕎麦初めて食べる貴族みたいになってんだ」
B「とりあえず天ざるで」
A「あい天ざる一丁」
B「あっ、この天ざる何が入ってます?ちょっとアレルギーが」
A「あー、エビイカ大葉入ってるけど大丈夫?」
B「それなら大丈夫です。僕メインはキウイアレルギーなので」
A「じゃあ絶対大丈夫だろ」
A「はい天ざるおまち」
B「どれ……おっ、これは美味い!」
A「どうよ、美味いだろう?」
B「シェフ呼んでシェフ!」
A「俺だよ。シェフ俺なんだよ俺が作ってんのこれ」
B「え!?そうだったんですか!?」
A「今まで俺のことなんだと思ってたの」
B「常連客かと」
A「店員とすら思われてなかったのか」
B「いやでも本当に美味しいです!僕こんな美味しいの初めて食べました!」ズルズル……
A「いやいや大げさだよ。まあでもそう言ってもらえると嬉しいねえ」
B「これならそばの方も楽しみだなあ!」
A「ちょっと待て何食ってたのお前今」
B「えっ、天ぷらですけど」
A「蕎麦食えよ蕎麦!なんだったんだよさっきの効果音」
B「天ぷらすするタイプなんですよ」
A「知らねえよ蕎麦食ってくれよ!」
B「そんな!大将頭あげてください!」
A「下げてねえよ!なんで俺がお前に土下座したみたいになってんだ」
B「しかし本当にいい味ですねえ。これなら星二つ……」
A「え?」
B「いえ、すみませんこっちの話です。ではいただきます」
A「ああ」
B「……くっ……」
A「えっ、おいどうした大丈夫か?」
B「すいません……そばアレルギーが……」
A「キウイよりそっち言えよ。てかじゃあなんで蕎麦食ってんだ」
B「大将が蕎麦食えって……」
A「いや言ったけど」
B「懇願するから……」
A「してねえよ」
B「すみません何か飲み物を……」
A「ああ悪い!ちょっと急いで水持ってくるわ」
B「早く……カレーを……」
A「デブキャラ貫いてる場合か」
B「ふう……」
A「落ち着いたかい?」
B「ええ、本当にありがとうございます」
A「いいってことよ」
B「素晴らしい味、客の急なアクシデントにもすぐに対応するホスピタリティの高さ、そして何より大将の人情溢れる人柄……本当に素晴らしいお店です」
A「なんだい急に改まって」
B「星2つ……いや3つ。つけさせてもらいます」
A「……?」
B「本当は正体を明かしてはいけないのですが実はわたくし……」
A「あんた……まさか」
B「えぇ、地元密着フリーペーパー『好きっちゃ福岡』編集部グルメ担当の野田ともうします」
A「微妙だなおい」