死に際の記録
ゴゥンゴゥンと、戦車が走る。
ドォンドォンと、砲撃が鳴る。
銃弾が、雨のように降る。
誰かの血が、雨水のように滴る。
無線越しに聞こえる上官の声が、小さくなる。
やがて、聞こえなくなった。
上官からの指示を待つ。
既に死んだとも知らず、ただ待ち続ける。
やがて、敵兵に見つかった。
ゴゥンゴゥンと、戦車が走る。
ざりざりと、足音が鳴る。
発砲音が鳴り響く。
ずどんと、音がした。
腹部を穿たれていた。
ばたん、べちゃりと、音を立てながら倒れ込む。
荒れた地べたは血に濡れる。
敵には、温情など無く。
走馬燈を見ることさえも、許されない。
遠くの方で、ゴゥンゴゥンと戦車が走る。
遠くの方から、ドォンドォンと砲撃が鳴る。
銃弾が、雨のように浴びせかけられる。
私の血が、雨水のように滴り落ちる。
銃声が、小さくなる。
やがて、聞こえなくなる。
「あぁ……眠……たいな……。」
掠れた声で。
小さな声で。
私は最期に、呟いた。
小説家になろうに投稿するのは初めてです