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暁の薔薇の伝説~ゲームの始まる前に滅亡した国の王女に転生したので回避したいと思います~  作者: えとう蜜夏
第一章 覚醒編

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十八 光の剣は中級だったはず

「ファルク様、時が参りましたら神殿には必ずご相談いたします。それまではまだこのことは内緒でいて欲しいのです。悪戯に世間を騒がせたくありませんもの」


 ――リルアって本当に使えないキャラだったのよ。だから、大仰なことをしてハリボテだったなんてがっかりされたくないの。


「しかし……、分かりました。ただ」


「ただ?」

 

「この礼拝堂に光の痕跡は残ります。これだけの光跡なのですよ。司祭長にはいずれ誰だかお分かりになられるでしょう」


「そのときに私からご説明を致します」


 魔術は『薔薇伝』では魔術屋とか道具屋で手に入ったの。


 カウンター越しに魔女の姿をした人からお金を払って買うの。形は水晶玉になっていて、それぞれの属性に初級、中級、上級と分けて売ってあった。それぞれの街で属性に応じて売っていた。


 ここエイリー・グレーネ王国は始まりの場所でもあるので初級が多かったけれど全属性が手に入ったと思う。幾つかの魔術は中級も扱っていたと思うけれど。上級とかになるとやっぱり海洋諸国にある聖地とかエードラム帝国でないと手に入らなかったように思う。


「……分かりました。王女様のなされるがままにいたしましょう。でもそれなら、一層魔力感知と制御を訓練しなければなりませんね」


 にこりとファルク様が微笑まれると何だか部屋の温度が二、三度下がった気がした。残りの時間は魔術をコントロールする練習をした。




 その後は音楽に裁縫などをこなして、本日の日課は終わり休憩となる。自室に戻ると勉強や公式行事もないときはお茶をしたり、大人しく刺繍をしたりしていた覚醒前のリルアだったけれど今は違う。


「アスラン様、剣技をお教えいただきたいのです」


「リルア王女様、護衛に様はいりませんよ。それにあなたのその手に剣は不向きでしょう」


 ――ぐぐ。


「今はアスラン様だけだから様はつけさせていただきますわ。それで剣をお教えいただけますか?」


 アナベルにはお茶の用意をするように言ったので部屋には二人だけだった。


「率直に言わせていただければその手では細剣が精々といったところでしょう」


「やっぱり……」


「やはりとは、先程の光の魔術と言い、どうやらあなたは見た目のままではないように感じる。まだ何か、夢とやらで我々の知らないことを知っているのだな。それにはあなたのような幼いレディが剣をもたないといけないことがあるのか?」


「……」


 流石、未来の皇帝陛下。鋭い。


 だけど私の知っている『薔薇伝』では今の年齢で彼が皇帝の座に就くはずなのよね。どのような形でなるのかしら? それまでに少しでも彼から剣を習ってみたい。だって、彼は後に剣聖と称されるほどになるのだから。


 そのときアナベルがお茶の道具を持って戻って来た。今日のお茶請けは焼き立ての熱々アップルパイ。


「さあ、お茶の時間ですよ」


 私は目の前の美味しい物に釣られた。さっきまで真剣に話していたアスラン様は私がアップルパイを頬張った姿を見て肩を震わせていた。


 ――顔は平静を保っているけれど内心は笑っているわよね。だって、アップルパイは出来立てが一番美味しいと思うのよ。


 熱々でさくっとしたパイ生地に甘酸っぱいリンゴのハーモニーは今でないと味わえない。


「ふふ。嬉々としてお菓子を頬張るようではまだまだ……。それに王女様にあられては剣技より魔術を極められた方が得策と思いますよ」


 アスラン様は私に向かって微笑みながらそう言った。


 細マッチョのイケメンに微笑まれたら喉を通り損ねたのか咳き込んでしまった。将来のレディとしては失格ばかり。


「ごほん。確かにアスランの言う通りですね。でも私だって黒流剣とまではいきませんが、ライトソードとかを使ってみたいのです」


 それならリルアも習得できるし、今から練習すれば大丈夫と思うの。


「黒流剣だと? あの伝説の大剣をそなたのような者が扱うなどできる訳がない。私だってまだ会得できていないのだから」


 あれ? 伝説の技ってほどでもなかったと思うけど。大剣をとってレベル上げすればできるものよね。でも確かに大剣のレベルは他の武器よりは上がりにくかった気がする。


「それにライトソードも、あれは普通の剣を光の剣へと変える技だ。光の魔術を取得しても、上位の光の使い手でなければ意味がないのだぞ」


「そうなのですか……。せめてライトソードぐらいは取っておきたかったのだけど仕方ありませんね」


「あれはぐらいというレベルではないぞ。王女よ。ライトソードを会得できるのは選ばれた光の勇者のみと言われるほどなのだ」


 ――嘘。初級のライトボールの次に中級でできるようになるのがライトソードだったはず。何か記憶違いでもあるのかしら。


「ライトソードを纏った剣なら闇の眷属どころか闇の神まで切ることができると言われている」


 ――闇の神、やっぱり存在しているのね。


「でしたらやはり私が会得しておかないとなりません」


「言い出したら聞かないようだな。王女様は。まあ、勝手に見えないところで練習してお怪我をされるよりかは私が手ほどきをお教えした方が良いな」


 渋々ながらアスラン様に剣術を習う了承を得ることができた。


 ――いずれはライトソードで闇の眷属をばったばったと切り伏せてみせるわ。

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