そろそろこのRPGな世界観にいちいち驚かなくなって来た自分が怖い
「初クエストクリア、おめでとうございます!」
受付のお姉さんに盛大に祝われた。奥でテーブルを囲んでいる人たちの視線を感じ、なんだか恥ずかしい。
「次はどうされますか? ちょうどアキヒト様のような駆け出しの冒険者様向きの討伐クエストも入って来ていますよ。討伐クエストは、倒したモンスターの数や種類に応じて報酬が上乗せされるステムになっているので、初心者の方でも稼ぎやすいクエストになっております」
「へぇー。じゃあそれで」
そろそろこのRPGな世界観にいちいち驚かなくなって来た自分が怖い。
「わかりました。今入ってきているものですと、あちらのスライム討伐クエストがオススメですが、いかがなさいますか?」
受付のお姉さんが手で示す方を見ると、カウンターの隣の掲示板に森でのスライム討伐クエストの紙がピン留めされていた。
「じゃあそれで」
じゃあそれでBotになりつつある。
「かしこまりました。では、クエストの説明をさせていただきますね。この酒場の通りから東に面した森で現在スライムが大量発生しておりまして、農民の皆さんが畑や作物を荒らされて困っているようですので、これをできる限り討伐してください。最低討伐ノルマは十五体。それを超えたり、大型や別種のスライムを倒した場合は追加報酬が得られますので、頑張ってください」
「クエストの発生理由が嫌にリアルだな……」
「はい、クエストは基本的に困っている方が酒場を通して冒険者の皆さんにご依頼する形をとっているので、そのクエストがどうして必要なのかを知った上で挑んだ方が、やりがいも格段に違いますよ」
そこは現実的というか、ゲームとは違うらしい。
「簡単なクエストではありますが、アキヒト様は今回が初の討伐クエストとなりますし、念のためパーティメンバーを組んでいかれますか?」
「え? あぁ、じゃあ、お願いします」
「ではクエスト番号483と言いながら、冒険者カードを掲げてください」
「え、はい。クエスト番号483」
掲げた冒険者カードが、ポッと淡いオレンジ色に光る。
「続いて、パーティメンバー三人募集、と言ってみてください」
「はい。……パーティメンバー三人募集」
すると、淡い光からレーザー光線のように光が伸び、奥でテーブルを囲んで談笑していた三人組と繋がった。繋がった三人組は落ち着いた様子で立ち上がると、各々の冒険者カードを取り出し、裏返して何かを見ているようだ。真似して僕も裏返して見る。と、パーティメンバーの欄に光る文字が並んだ。
『パーティメンバー
・アキヒト 旅人 ステータス:リーダー
・ペティ 見習い剣士 ステータス:サブリーダー
・イアン 見習い魔法使い ステータス:メンバー
・マードラ ヒーラー ステータス:メンバー』
「おぉ」
終始驚いていると、コスプレみたいな格好をした三人組が近づいて来る。というか今更気づいたが、この酒場でまともな格好をしているのは受付のお姉さんくらいで、あとは全員ゲームからのけ出して来たかのような奇抜な格好をしていた。