RPGかよ
『ーーーー託を捧げよ!! 神託を捧げよ!!』
「っ!?」
すさまじい声量に目がさめる。床が震えるようだった。
『神託を捧げよ!!』
床に倒れこんだ姿勢で目を開けると、見知らぬ高い天井があった。さっきの教会のものではない。もっとずっと大きい、巨大な天井だった。起き上がると、教会というより大聖堂のようだ。あのときのピアノはなく、巨大な十字架が飾られていたはずの場所には大きなパイプオルガンがあった。
そして、
『神託を捧げよ!!』
男女入り混じった圧倒させられるほどの大声が、床を震わせるほど響き渡る。
「なんだ?」
声は四方八方から聞こえた。しばらく呆然と立ち尽くしていると、壇上の両脇の扉が開き、ロウソクを胸の高さに掲げた聖職者の行列がぞろぞろと流れてきた。二つの列は壇上の角で曲がって、パイプオルガンのある中央に向かって行進していく。
『神託を捧げよ!!』
今度は真後ろの扉が開いた。壇上の向かい、さっきひとりでにしまったはずの大きな扉が人の手によって開かれ、やはりロウソクを胸の高さに掲げ、ローブを目深にかぶった聖職者の集団が現れる。
「ん?」
先頭の立派な長い白ひげを生やした大柄な老人が足を止め、立ち尽くす僕を見下ろす。
かぶっていたフードをめくりあげると、ロウソクを僕に向けてきた。
「急用か?」
「い、いえ」
「ならばなぜここにいる?」
不思議そうに首をかしげる老人。
「悪いがアーレーン様の儀式の最中だ。出て行ってくれ」
「あー、れーん?」
有無を言わさず腕をつかまれ、そのまま外に引っ張り出された。
「は?」
そこには見たことのない光景が広がっていた。
白いレンガとコンクリートで固めた正方形の家々が立ち並ぶ大通り。色もあいまって豆腐が並んでいるかのような独特な街並み。どう見ても日本ではない。それとも外国を模した町なのだろうか。どちらにせよさっきまで僕がいたはずの場所ではなかった。
そして、夕方だったはずの空が、まるで朝方かのように明るい。
「そういえば!」
振り返るのとバタンと大きな扉が閉められたのはほとんど同時だった。
さっきまで隣にいたはずのシスターさんが、どこにもいなくなっていたのだ。
『神託を捧げよ!!』
中からは依然、あの声が聞こえてくる。とても確認する気にはなれなかった。
「……はぁ。なんなんだよまったく」
夢でも見ているのだろうか。ほほをつねったらちゃんと痛かった。仕方なく歩き出すも、やはり町並みは変わらない。三角屋根のない豆腐のような白レンガとコンクリートの家がずらりと立ち並ぶ。
しばらく歩いていると、その中にカフェなのかバーなのかわからない、木造の古風な飲食店を見つけた。珍しく見慣れた三角の屋根や洒落たデザインも含めて、RPGにでも出てきそうだ。
早速入ると、中まで変わった作りだった。全体がすべて木造で、入ってすぐのところに謎の空間があり、レジカウンターが向かいの壁際にあった。
受付らしきお姉さんがいらっしゃいませと頭を下げる。そこは普通だ。
「あの、ここって……」
声をかけると、受付のお姉さんの顔がパッと明るくなる。
「初めてのご利用ですか?」
ご利用? 変わった言い方だな。と思いつつ、お姉さんに続きを促す。
「ここではクエストの受注やパーティメンバーの募集、パーティバランスの確認などができます」
「は?」
どこかで聞いたことのある(しかし耳を疑う)言葉の羅列に一瞬で頭が真っ白になる。
「何かお困りですか?」
「お困りっていうか、その、ここはなんなんですか?」
「はい? あぁ、他の町からいらっしゃった方ですね? この町では、宿屋で回復、教会で能力強化、酒場でクエストの受注を行っております。冒険者志望や転職を希望される方も、この酒場に来ていただければ対応させていただきますよ」
「……RPGかよ」




