クインアキューズド
8つの尻尾が起こした振動で木々は軋み地面は裂ける。
震度8以上の揺れが山を襲う。
アルマゲドンも火神も平然としているが立っていることすら困難な状況だ。
八岐大蛇は4つの頭を器用に動かしながらこちらを観察している。
火神はオロチ丸が何とか正気を取り戻さないか声をかける。
「おーい!俺だよ?分かるかい?オロチ丸!戻ってこいよー!」
『オロチ丸?誰だ?それは。我が名は8つの頭と尾を持つ蛇種として恐れられる八岐大蛇。脆弱な人間如きが我に話しかけるなど甚だしい!食らえ!』
八岐大蛇は4つの頭から4属性の攻撃を繰り出す。
目に白と書かれた頭からは聖属性を。
目に朱と書かれた頭からは炎属性を。
目に玄と書かれた頭からは地属性を。
目に青と書かれた頭からは水属性を。
同時に4つのブレスを吐く。
元々8つの属性を使い分けていたオロチ丸とは下位互換の様に感じるがオロチ丸は同時にブレスを吐くことは出来なかった。
それぞれ固有の属性とスキルを持っていたが同時制御が難しいと話していた。
『那岐様はズルいですよね~左手には滅炎龍ヴァルバリー。右手には天之尾羽張。口からは僕と同じブレスを吐けるんですもん、、、ズルいですぅ~』
と過去に言っていたことを思い出す。
火神はオロチ丸を元の状態に戻すことを最優先にオロチ丸のブレスを避け続ける。
4つの頭から発せられるブレスは止むことなく常にブレスが吐き出される。
しかし呼吸が必要なのか1分に1度ほど2つの頭からブレスが止まる。
その隙をみて攻撃するも硬い鎧のような鱗に阻まれる。
「火神様。ここは僕がやります!」
「いや!俺がやる!まぁ見てて?」
火神はオロチ丸に近づくと炎のブレスを避けなかった。
炎に呑まれていく火神。
「火神さまーーーー!」
アルマゲドンが必死に声をかけるが地獄の業火のような炎に呑まれた。
炎の中では火神の黒い髪が揺れている。
衣服は一瞬で焼け焦げ裸になっている事が予想されるも全貌は見えない。
呼吸するために八岐大蛇がブレスを一旦辞めると火神の体が顕になる。
『なっ、、、貴様、、、炎が効かぬのか!?ならば、、、』
今度は八岐大蛇が聖と氷のブレスを同時に火神にかける。
火神の後ろにある木々や草花は凍りつき土の中にいた虫の魔物は浄化される。
それでもブレスの中の火神は微動だにしない。
『くそっ!くそっ!貴様何者だ!我が奥義で終わりだ!』
《八式嵐舞!》
しかし八式嵐舞は発動されなかった
『えっ!?なんで、、、?我の8つの頭から発せられる、、、、あ、、、えっ?、、、8つ無い、、、頭がない、、、?』
八岐大蛇は混乱している。
「君はね?オロチ丸。八岐大蛇じゃない。嘗ては八岐大蛇と呼ばれた事もあったみたいだけどこの世界に来てからの君はオロチ丸だ。僕の唯一の友達さ!」
『オロチ丸?、、、覚えてない、、、カガミ、、、?鏡、、、?八咫鏡?貴様!俺を封じる気か!?あの忌まわしき陰陽師、、、は!?陰陽師、、、、?素盞嗚尊じゃない、、、?』
八岐大蛇はかなり混乱していたがブレスを吐いたまま首をブンブン振り回し周囲を破壊し尽くす。
『ちっ、、、我としたことが、、、血迷うなどと、、、八岐大蛇たる所以。それは喰らった鬼の数よ!喰ろうた鬼の生き血を啜り子供の肉を合わせたこの芸術作品を見よ!』
蠢く首が透けると今まで普通の蛇の首に見えていたが、そこには鬼の顔や子供たちの体や服がそのまま合成させられていた。
「オロチ丸、、、君は最近何か食べたのかい?」
火神は周囲が凍る程の殺気を込めて言う。
『な、な、ななんだ!?こやつは、、、?我は最近は記憶がおかしゅうてここ最近は喰った記憶はないわ!それがどうした!』
「ふふ、、、そっか。ならまだ間に合うかもね。オロチ丸。ちょっと手荒にするよ?」
「呪術にたけるものよ。その呪縛から解き放ち我が眷属となり力を授けよ!」
《クインアキューズド》
鎖でぐるぐる巻きにされたウェーブがかった金髪の裸婦が現れる。
目と口には拘束具が嵌められ卑猥な雰囲気を出している。
思念体なのか召喚した火神の脳内に直接話しかける。
【ワタクシを呼んだのは坊や?何がお望みなの?】
「はい。俺です。あの、、、八岐大蛇の呪いを解いて欲しいんです。」
【ふぅん?あの雌蛇がそんなに助けたいのぉ?ねぇえ?】
「今すぐにでも助けたいのです。何か間違いを起こす前に!」
【ふぅん?でもワタクシには関係ない事よねぇ?で、、、?坊やはワタクシに何をくれるのぉ?】
薄ら笑いを浮かべたクインアキューズドが火神を舐めるように見回す。
「オレの眷属になれる権利を与えます。」
【権利?あひゃひゃひゃひゃ!坊や面白い事を言うのねぇ?あなたとワタクシの関係性は主従関係ではなくてよ?ただ呼ばれただけ。神の中でも5本の指に入るワタクシを眷属に?あひゃひゃひゃひゃ!笑わせてくれるわ?うふふふふふ】
「じゃあ力ずくで。」
【えっ!?】
クインアキューズドが返事をする前に彼女の鎖を暗黒の炎で焼き切る。
拘束具にも熱が伝わった様子でクインアキューズドは苦しむ。
【き、、、貴様ァ!ワタクシの顔になんてことしてくれたの!?許さない、、、許さないわ、、、!】
この緊迫した状況の中更なる敵が現れた。
『へぇ、、、なかなか面白いことになってるじゃん?僕も混ぜてよォ。』
妖精ティンカーである。
朱雀の式神であり、最も妖力を持つ妖精。
まぁ本質的には妖精ではなくただの安倍晴明の手先だ。
火神は鎖を離すことなくずっと持っていた。
ドロリと溶けた鎖はクインアキューズドの体から離れた。それに伴い口や目の拘束具も外れる。
【えっ、、、?私は何を、、、?】
クインアキューズドは呪術の神。
最高位の呪術を施すことも解除することも可能だ。
しかし彼女は呪いにかかっていた。
自らのかけた呪いに。
自分で矛と盾を試した結果失敗して呪われたアホである。
そして今その呪いが火神の手によって解かれた。
それは命を救われたと同義である。
「ワタクシは、、、一体、、、、貴方は?誰?」
「俺の名前は火神那岐。召喚士です。貴方を召喚しました。今から貴方は俺の眷属として働き、あの八岐大蛇の呪いを解いてください!お願いします!」
火神は深くお辞儀をした。
クインアキューズドと話しているこの間にも八岐大蛇がブレスを放ってくるも無視。
火神にはほぼダメージは無い。ただ衣服はボロボロに焼けてしまいあわやチンポロ状態である。
アルマゲドンも八岐大蛇の意識を逸らせるように行動している。
【ワタクシが眷属に、、、?あの、、、正気ですの?あの蛇の呪いを解くためにとは言え、ワタクシは邪神。眷属にするなど、、、常識を逸してますよ?】
「それでもです!俺はあいつを助けたいんだ!この世界で出来た、、、たった1人の友達だから!」
【ふぅん、、、その女1人のために邪神となる事も厭わないと、、、なかなか面白いではない子ね?。うん。ワタクシはそちの眷属となるわ!】
「ありがとう!アキュ!」
【え!?ア、、、アキュ?】
「うん!君のあだ名だよ?」
【初めてですわ、、、あだ名なんて、、、なぜだか心が少し暖かい、、、】
彼女中にある冷たく凍っていた心が少し溶けたようだ。
《ゼ・レジスト》
最上位の解呪術である。
八岐大蛇は呻き声を上げて頭を振り回す。
ブレスは全て止まり苦しんでいるようだ。
尻尾が木々に当たりフラフラよろける。
酔っ払いさながらである。
しかしレジストされてから数分経つと頭がハッキリしてきたのか首をブンブン振り、火神を睨みつける。
『貴様らぁ~!何をした!?我の体に何をしたのだ!』
八岐大蛇の体からは赤い蒸気が吹き出してきた。
そして八岐大蛇は本来の色を取り戻した。




