八岐大蛇と戦闘開始
不意に現れた女性は真っ黒に黒光りした漆黒の長い髪をサラサラと揺らし体の線が分かりにくいストンと真っ直ぐな真っ白なワンピースを着ている。
イェド・プリオルに来た女性である。
あの日鈴鹿御前に会う約束を取り付けた女性。
それは今から数日遡る。
鈴鹿御前に約束を取り付けた女性は翌日の昼過ぎにギルド内部へと通された。
ギルド内部は受付等がある場所に比べると埃っぽかった。廊下は薄暗く掃除が行き届いていないようである。
表の顔とは違い普通のギルドっぽい。
ギルマスの部屋に通されると書類が山積みにされていた。
書類に目を通していた眼鏡を掛けた女性がこちらを睨む。
「誰だい?いや、、、何者だい?」
『ふふふ。受付の人にお願いしたんだよ。貴方に会えるように。《雌鬼の鈴鹿御前》に会いにね。』
「そうかい。そちは妖かい?あちきをどうしようって言うんだい?」
『私の力になってもらおうと思ったんだけどね?どうやらその様子じゃ《鬼玉》を捨てちまったようだね?』
「そうだ。あちきは鬼を辞めた。こんな老婆喰らっても美味く無いしさっさとお帰りな。」
『そういう訳にもいかないんだよ。私は力を溜めないといけないのさ。晴明様の力となるためにね。』
「はっ!またあ奴の手先か、、、じゃあ教えてやるよ。この街の太守には娘っこがいる。それも幼子だよ。喰らえば力も取り戻せるだろ?あちきが知っているのはそんなところだよ。さぁ、、、さっさと帰りなんし!」
『ふははは!これは良いことを聞いた。分かった。今日のところはそれでいいだろう。だが私はまた来る。その時はこの街全員の幼子を用意してもらおう。私の生贄としてな?それが出来ぬなら貴様諸共街中を血の海に変えてやる!ふはははは!』
女性は帰っていく。
「ちっ、、、八岐大蛇か、、、?奴に雰囲気が似てやがる、、、まぁどちらにせよ安倍晴明の手先。このままじゃまずい、、、アンもこの街も蹂躙されちまう、、、」
「おい!お前ら!太守に繋げ!急げ!時間が無いぞ!」
鈴鹿御前はギルド職員を呼びつけると太守の元へ走らせた。
その後ギルドへ丁度八岐大蛇を探しに来た若者たちと出会い、アレが八岐大蛇だったのだと確信した。
事情を話す訳にはいかなかったが太守を紹介してやった。
後日若者たちが実力者と知ったがその時には太守フォーゼに取り入りアンを助ける作戦を聞かされた。
あまりに無謀だと発言したが鬼を辞めた鈴鹿御前が代わりをできる訳もなく渋々納得した。
「神様、、、どうかアンを、、、街を助けてください、、、」
永きときを生きてきた鈴鹿御前だが鬼の体内にあるとされる《鬼玉》を取り出し鬼を辞めた。
それは元勇者討伐が本格化する前の事。
数百年の時が経っても若々しかった鈴鹿御前だったがその日を境に歳を重ね始めた。
現在の見た目は60歳くらい。
ヨボヨボという程ではないが皺も入り瑞々しさを失っている。
髪は全てが白髪で頭皮が赤い為、少し透けて赤く見える。
まるで老婆が幼女を売った様に感じるだろうがこんな老婆を喰らわない事を鬼だった鈴鹿御前は知っていた。
自分も嘗てそうだったからだ。
そして目的さえ固定してしまえば次の手を打てるかもしれない。
そう思っての咄嗟の作戦だったが功を奏した。
しかし鈴鹿御前は幼女を売った。それは変わることの無い事実である。
「フォーゼ殿、、、申し訳ない、、、己可愛さでは無いがあれしか方法が無かったのじゃ、、、」
地面に額を擦りつけながらフォーゼ宅を訪れた鈴鹿御前は謝罪の言葉を言う。
額からは出血し痛々しいが辞める様子はない。
『、、、鈴鹿御前。いや。ギルマス殿。顔を上げてくれい。そなたがこうするしかないと思ったのならそうなのかもしれん。』
「いや!もっといい方法があったのやも、、、」
あの時咄嗟に考えたことはとても褒められたものでは無い。
どんなに上手くいったとしてもギルマスとして最善だったとしても納得できるものでは無い。
『分かったよ。そなたがそう言うなら私からもお願いがある。もしも失敗してしまったらこの街をお願いできるかい?鬼を捨てた君でもそこら辺の荒くれ者を纏めるのは得意だろう?この街を捨てて皆で逃げて欲しい。頼めるかい?』
「、、、そんな、、、それじゃあちきは、、、」
『それしかこの街の民を守る方法は無い。今から君にはギルドや王都へ連絡し協力を頼んでくれ。じゃ私はまだまだやる事がある。頼んだよ?』
そう言うとフォーゼは席を立ち執務室へと戻って行った。
フォーゼが歩くが覇気は無く時折ソファーやテーブルにぶつかる。
かなり強がっていたようだった。
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「きっさまーーー!私のペットをよくも!よくもーーーー」
女性はみるみる黒い煙を上げるとその巨体を露わにした。
白銀色に輝く4つの頭8つの尾。
八岐大蛇である。
ぐるぁぁぁああああああああああああーーー
激しい咆哮をあげる。
うねうねと動き回る頭部。尻尾は地面をバシバシと打ち付け山が揺れ動物たちが逃げる。
いよいよ八岐大蛇との戦闘である。




