生贄の真実
ヒルバ達は指示された山の中腹に籠を置いた。
「お嬢ちゃん。これでお別れなのは悲しいが、、、決意は固いようだし帰るな?」
『はい。。。護衛して頂きありがとうございました。道中の会話とても楽しかったです。では。帰りの無事を祈っております。』
「、、、」
言葉にならなかった。
自らは街の為に生贄になる。それなのに護衛の身を案じてくれたのだ。
ヒルバは言葉を失い目頭に熱いものが込み上げる。
だが今更かける言葉もなく足早に去ることを決意する。
ヒルバ率いる5人は山を下っていく。
合計7人で登ってきた山を6人で降りていく。
いつものメンバーだ。
ヒルバ、オルテス、ヤンガ、ティバ、テローナ、ルイゼ、、、ん?
さっきまで7人居なかったか?
普通に溶け込んでいた謎の1人に今更気づく。
短髪ボサボサ頭だった。
胸が少し膨らんだ少年とも少女とも感じられる風貌。
浅黒いローブを顔まで覆い籠から少し離れた位置で歩いていた。
しかし既に任務は終わった後だ。
あれが化け物だったのか妖の類だったのかは分からないがもう後戻りは出来ない。
籠に振りかけられた属性龍の胆汁で魔物は寄ってこない。
謎のボサボサ頭は籠の少女に話しかける。
「そろそろ奴が来るよ。俺は隠れてるけどいざと言う時は出てくるからね?安心してね。」
「はい。分かってます。僕頑張るね。」
山頂から唸り声が聞こえる。
生贄の少女が入る籠がポツンと森に佇む。
そこへ現れたのは、、、古代龍アルキゾアス。
属性龍を恐れぬ上位種だ。
古代から生きる龍は叡智に長ける。
戦闘も力任せの魔物に比べ賢く討伐が困難でギルドへ討伐依頼が来ても誰も受けない。
国を上げて討伐隊を組むしかない災禍である。
古代龍アルキゾアスは紫色の鱗を持つ多属性龍。
炎と氷を掛け合わせた多属性龍である。
属性龍の気配がしなかったのは古代龍の影響もあったようだ。
いよいよ籠に近づくアルキゾアス。
右手を振り上げ斜めに爪を振り下ろした。
籠には深い傷が入り切り口からは炎があがる。
火炎属性の引っ掻き攻撃だったようだ。
籠は燃え上がり中に居た人物の姿が顕になる。
中からは白と黒の針が、、、見えた。
どうやらアルマゲドンである。
間違えようもない。空の覇者アルマゲドン。山嵐だ。
ではアンはどこに行ったのか。
それは2日前に遡る。
ヒルバ達がフォーゼ宅を伺った日のこと。
火神達一行もまた太守に会うためフォーゼ宅を訪れていた。
火神達はまだ生贄の話は知らなかったが街の異変に気づいていた。
賑わいは消え憔悴したムードだった。
音楽は消え花でさえも萎れている。
街を出歩く人は疎ら。
街の住民は皆知っていたのだ。
内容を全て理解している訳では無いが悟っていた。
太守が脅されていると。
冒険者や兵隊を使っても尚倒せないだろう相手からだと。
彼女は古代龍に乗って去っていった。
古代龍ですら手に負えない人間に上位種が生贄を求めたのだ。
人々は噂した。
《伝説龍》の再来だと。
かつて全世界を飛び回っていた伝説の龍がいた。
体長15mの巨体で音速で飛行し、姿を自由に変えられる生物。
下から見上げるほど大きな影に人々は《伝説龍》と名づけていた。
それがイェド・プリオルに来たのだと。
そしてそんな折に火神達が現れた。
いつも通りを装う人々に聞き周りやっとの事で手に入れた情報を元にフォーゼ宅を訪れた。
そして生贄の話を聞いた。
「俺たちは仲間を探しています。ここの近くに居ることは分かっているのですが、、、もしかしたらこの事件に関わってるかもしれないのです。もし宜しければ我々に任せて貰えませんか?」
『、、、それは我々2人にとっては有難い相談です。ですが貴方たちは他国の人々。この街の一大事に人様に頼んでもしもの事があればこの街も貴方たちも滅亡は免れないでしょう?しかし我々と致しましても、もし貴方たちが確実にやり遂げると感じられる根拠があれば是非ともお願いしたいのですが、、、不躾ですが、、、力を示せますか?』
「そうですよね、、、分かりました。では少し街の外に出て頂けますか?ここでは建物が壊れてしまいますので。」
火神はそう言うとフォーゼを連れて町外れの外壁の外まで連れてでた。
移動中明らかに怪しいヤツと疑われたのか衛兵達も着いてこようとしたがフォーゼが諭し止めた。
「では、、、始めますね?アルマゲドンいい?クラもお願い。」
『『はっ!火神様!』』
アルマゲドンはみるみる15mの巨大な山嵐となった。
空の覇者と呼ばれたあの図体をフォーゼに晒す。
破壊神クラは破壊に長ける能力を全て持っている。それは固体、気体などの概念に囚われることなく破壊できる。
その小さなからだでビュン!と拳を振るうと空気が破壊されヒビが入る。
破壊された空気の塊は大気を押し上げて近くを飛んでいた鳥に命中し血を吹き出し絶命した。
巨大化したアルマゲドンと少女クラが起こした大災害を見たフォーゼは腰が抜けた。
『はは、、、こりゃ凄い、、、火神様。疑ってしまいすみませんでした。是非とも貴方たちに全てをお任せしたいと思います。』
腰が抜けたフォーゼは膝をガクガクさせながらも冷静を装い火神に全てを話した。
そして火神達は作戦を立てたのだった。
まず籠の中に身代わりのアルマゲドンを用意する。
ヒルバ達には依頼していため訳を話さずそのまま利用する事に。
道中の会話はアンが考えたカンペを用意。
本来アルマゲドンは見た目も変えることが出来る。しかし今まで火神が動物好きな為に、山嵐の姿から変えたことは無い。
アンに化けたアルマゲドンが籠に入り、運び屋達に混じって火神もついて行く。
疑われる事を避けるため火神は姿隠しの術を難陀から習うことにした。
『これが姿隠しの術です。心を静かに保ち自然と一体化する。体臭も極限まで無に持っていくことが重要です。』
練習してたった1回で会得してしまう火神に難陀は嫉妬する場面もあったがそこは放置プレイ。
実はまだ火神は怒っていた。オロチ丸の情報が無いからだ。
破壊神クラとウロボロスはフォーゼ宅でアンの護衛任務に着いた。
難陀は遊撃隊として火神達の後をこっそり追う。
まぁここでも放置プレイだった。
怒った火神は怖いのだ。
そして現在に至る。
いざ古代龍との決戦である。




