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八岐になった大蛇爆誕

幼き日の八岐大蛇は山田辰明と一緒に暮らすことになった。

元々爬虫類が苦手では無かった辰明はたまたま畑で見つけたヤマカガシが自らの牙を折ってまで戦意がないことを示したことに感銘をうけ飼うことにしたのだ。


蛇の食料は肉食で八岐大蛇は家にいるネズミやアリなどを食べて暮らした。


何不自由なく。幸せに暮らした。

今までヤマカガシとして生活していた八岐大蛇は食料に困ったり人に襲われたり色々あったが今は平穏で1番幸せだった。


しかしそんな幸せも長くは続かなかった。

ある日部落に熊が迷い込んだ。

人々は逃げ惑い家の中に逃げ込む。

猟師は猟銃を急いで家に取りに戻る。その隙に取り残された子供が1人襲われ頭から喰われた。


その熊は部落の真ん中で子供を喰らった。

まるで餌場に来たかの様に。ゆっくり咀嚼していた。辺りには血が溜まり死臭が立ちこみ始める。

そして猟銃持った猟師が熊の眉間を狙って撃つ。


パーーーーン!パーーーーーーン!

合計2発の銃弾は熊に命中した。


しかし眉間を僅かに外していたのか熊は倒れることは無く逃げるように部落を北に登ってくる。

山田さんの家がある近くまで。


ドシーーン

熊は山田さんの家の近くで大きな物音と共に倒れた。

頭を撃たれた熊が最後の力を振り絞って歩いて来たのだろう。

そして吼えた。


グォォォォォオーーーーー


断末魔をあげた熊はその後ピクリとも動かなくなった。


部落の住民はその熊の肉や毛皮を余すことなく素材とし皆に振る舞われた。

それが不味かったのかも知れない。それは今となっては分からない。

あまりに昔のこと。八岐大蛇が覚えていることもうろ覚えなのだ。


そしてその日の晩に部落は壊滅した。

7頭の熊の集団によって24人いた人々は皆喰われた。山田辰明も例外無く。


八岐大蛇は熊達に果敢にも向かっていった。

辰明を守るために。最後まで抵抗した。

我が家に侵入してきた熊は大きな羆であった。昼間の比ではなかった。あれは子供の熊っだったのだ。


たった1m程の長さしかない細いヤマカガシと体長2mの羆。勝てる理由がなかった。

それでも八岐大蛇は足や耳に齧り付いた。

牙を失った攻撃手段のない顎で。


「逃げろ!お前だけでも逃げろ!」と辰明が八岐大蛇に言ったが齧り続けた。


大好きだった辰明が殺され食べられるその時まで坑がった。

必死に。必死に。

八岐大蛇も辰明にどうにか逃げて欲しかったからだ。


八岐大蛇は幾度となく攻撃を続けた。全く痛みは無いだろう攻撃を。

しかしいい加減邪魔に感じた羆に手で振り払われた八岐大蛇は吹き飛び壁に激突すると意識を手放した。


そして目が覚めた時には血溜まりが家にあるだけだった。

大好きだった辰明の強烈な死臭が漂っていた。

八岐大蛇は叫んだ。心の限り叫んだ。

その願いは届かなかったのだ。


八岐大蛇は人のいなくなった部落を徘徊した。

大好きだったこの場所を忘れない様に。

そして必死に仇なす羆達の臭いを覚えた。

7頭の羆の臭いを。


彼女は1人山へ向かう。いや、、、1匹で山に向かう。

その姿はあまりに無謀。小さなヤマカガシが1匹で何が出来るというのか。

誰しもが期待しなかっただろう。

しかし八岐大蛇にはある考えがあった。

それは猟師が打った猟銃の銃弾が脳に達した時羆は倒れた。

脳を攻撃すれば良いと八岐大蛇は考えた。

八岐大蛇は熊が眠る夜にひっそりと山に登る。

熊は基本的に夜行性ではなく昼行性である。

その隙を狙うことにした。


まずは辰明を殺した個体を必死に探す。

見つけたのは3日後だった。山の中腹にある横穴の中に寝そべる大きな羆。

奴だ。とすぐに分かった。

そのまま夜まで待ち奴が寝静まるのを息を殺して待った。

そして顔の傍に近寄る。

グォーーーグォーーーと鼾をかいて寝る姿は阿呆面だった。

復讐の鬼と化した八岐大蛇は羆の耳から侵入すると脳に到達。

耳から入った異物に気づいた羆は飛び起き暴れ回るも時すでに遅しである。

脳をぐちゃぐちゃに掻き回しぶち殺す事に成功した。

そして脳を喰らってやった。臭くて失神しそうになったがそれでも喰らってやった。

辰明の仇討ちだからだ。


奴を殺すと横穴の奥にもう2匹の羆が居ることに気づいた。

どうやら家族の様だ。

しかし7頭の羆には情けをかけるつもりは無かった。


同じく耳の穴から入ろうとするとふと違和感に気づく。尻尾が2つに増えていた。

少し入りにくく感じたが難なく脳に到達すると暴れ回る前にぶち殺してやった。

そして脳を喰らう。これは南に住んでいた朱美婆さんの分だ。


こうして八岐大蛇は全ての羆を喰らい尽くした。


1頭目に起こった身体の変化はその後も続き8つの尻尾になっていた。

しかし尾の太さは細く脳に侵入する事に影響は出なかった。


1個の頭と8つの尾を持つ異形のヤマカガシとなった八岐大蛇はそのまま山に住むようになった。

そして、数日経った。

身体は徐々に膨らみ体長4メートル胴回りも50センチはある大蛇になっていた。

1日経つ度に大きく育つ、まさに育ち盛りだ。

しかしあれから何も食べていないのにお腹も空かなかった。


食べないのに死ねなかった。

辰明さんが居ない世界は絶望しか無かった。


そして怨みを込めて羆を丸呑みする八岐大蛇が爆誕したのだった。

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