破壊神クラ
深い眠りにつく前、裟伽羅は悶々と考えていた。
私は何故安倍晴明に従っているのかと。
火神は何故こんな怪しい者に優しいのかと。
答えは明確なのだがはたして目的を達しても、約束を反故にされ妹が帰って来ないかもしれないのだ。
ただの口約束。
今まではそれを信じてやってきた。
トンドラの人々を騙し、欺き、街が栄えることを妨害した。
沢山の人も殺した。
その中には鬼も含まれ《元勇者》が命乞いをしていたが虫を踏み潰すかの如く躊躇なく殺した。
しかし、、、火神は良い奴だ。
暗殺者という事は最早なんの疑いもなくバレているはず。
なのに全幅の信頼を寄せてくる少年に心が揺さぶられるのだ。
安倍晴明は生死は問わぬと言っていた。
しかし殺せるようなら殺せと。
だから無理やりにでも誘拐するしか無かったのだ。
自分の手で殺したくないから。
話は変わるが自分と妹は曲がりなりにも8大龍王である。
世界最強の種、龍族だ。
そんな2人を捕らえる程の力の持ち主が命令してまで暗殺を試みるのか?という疑問がある。
不意打ちとはいえ自分たちは負けたのだ。
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目を覚ますと埃の臭いが立ち込める薄暗い部屋の中に居ることが分かった。
咄嗟に目を閉じ寝ている演技をした。
この状況を整理しよう。
俺は明日の朝サルバトロス達と一緒にケプラー王国へ向かう予定だったはず。
そうなるとここは宿屋だろうか?
否、、、
という事は、、、、
誘拐されたと言うことになる。
何とも恥ずかしい限りである。
高校生にもなって、、、いやインヴァースでの年齢は10歳程度なのだが、誘拐されるだなんて悲しすぎる。
でも誰に誘拐されたかも分からない。
ここはさり気なく状況把握といこう。
もう一度薄らと目を開ける。
!!!!!
、、、、やらかしたか、、、?
目の前に女性の顔があった気が、、、
咄嗟に目をつぶってしまったが、、、もう言い逃れが出来ないほどバッチリと目が合ってしまった。
こ、、、殺されるのか?
しかしその後声をかけられることも無く数分経過する。
きっと俺の額には脂汗がダラダラと垂れていることだろう。
顔が暑い、、、
良し、、、、ここは全力で《チカラを解放》するか、、、
《我が名において召喚する。いでよ、、、破壊神クラ!》
と心の中で叫んだ。
火神は自身が召喚士になったことを忘れてたんじゃないの?と言うほど仲間に頼りきりで召喚術を使うこともなかったのだが、滅炎龍ヴァルバリーや難陀をも凌ぐ《破壊神》を召喚した。
そもそも火神の召喚術があれば契約していない精霊すらも召喚出来たりする。
しかも無詠唱で。
召喚術とは魔法陣に描かれし契約内容に基づき召喚される。
契約内容に反故があったり、契約期間が終了すれば元の世界や場所へと戻る。
しかし火神の召喚術は違った。
言うなれば《空白の召喚術》なのだ。
魔法陣には契約内容は記されていない。
召喚後に交渉するという内容である。
そして契約は断れないと来たもんだ。
この世界の召喚術とは似ても似つかないものであった。
まるで火神も世界の理から外れた存在のようであった。
目の前に顕れた破壊神クラは2mを超える漆黒のカニであった。
世界で最も硬いと言われるウルツァイトの数倍の硬度を誇る甲羅で包まれ弱点は関節部のみである。
「我はクラ。全てを壊す者なり。召喚者は誰だ?我を呼ぶとは、、、余程高位な召喚者、、、、」
クラはブツブツと言いながら泡をブクブクと吹き出し始める。
どうやら火神の姿を見て侮っているようだった。
「はんっ!貴様が我を呼んだのか?名を申せ!」
威圧するようにデカい声で言い放つ姿は勇ましいがお陰で裟伽羅は尻もちを付き床には水たまりが広がっていた。
「僕の名前は火神。カグツチ?の生まれ変わりなんだって!よろしくね?クラ!」
「な、、、、カグツチ様だと、、、?カグツチ様はかつて父上に殺された火の神、、、何故貴様が、、、、?」
「さぁ、、、?でもカグツチなんだって難陀が言うから、、、じゃあ僕のチカラを見せるから!それで納得してくれるかな??」
火神はそう言うと自らの体に点火した。
体を包む炎は轟々と音を立て燃え上がるが衣服は燃えてはいない。
「、、、その炎は、、、カグツチ様の、、、いや、、、まだ、、、」
ブツブツとクラは言いながら更に泡をブクブクと吹き出す。
その泡は床にも到達するほどに放出されている。
床にポトっと当たった瞬間木で出来た床は解け落ちる。
どうやら溶解する作用があるみたいである。
「いいよ?もっとだよね?じゃあ、、、これでどうかな?」
みるみる大きくなる炎を今度は小さく縮小させると右手に集める。
「いでよ!滅炎龍ヴァルバリー!左手に宿りし龍よ!我が名において解放せん!」
急に口調の変わった火神の姿を見たクラは体を強ばらせ小さく萎縮する。
見間違えかと思われた収縮だったが本当に小さくなり140センチ程の火神よりも小さくなり130センチくらいになったところで跪いた。
「か、火神様。も、もう充分にチカラを見せて頂きました。我は一生貴方様について行きます。カグツチ様の下僕となり身を粉にして働きます、、、、どうかお怒りをお鎮めくださいますよぅ、、、、」
泣きそうな顔をした小さくなった少年クラは跪いたと思いきや土下座をすると床に頭を擦り付けたのだった。
更新が遅くなってすみません、、、
人物紹介しようと思っていたのですが断念しました笑




