封印が溶けた時の真実
火神達は宿にたどり着くと倒れるように眠った。
深い深い眠りについた。
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うろこ雲が空にびっしりと浮かび歩く足音に落ち葉のザシュッザシュッと乾いた音が混じる。
『あれ?ここは、、、どこ?』
周囲は薄暗く夕刻に鳴く美しい鳴き声の鳥が囀っている。
ふふ、、、、こっちへ、、、、
『なんだか不気味なところだな、、、?あれ?那岐様は?』
オロチ丸はひとりぼっちで歩いていた。
『ん、、、どこか見覚えがあるような、、、?』
ここはかつての日本の山の中。
島根県出雲市である。出雲大社で有名なこの場所は八岐大蛇が討伐された所である。
数千年も前に討伐された八岐大蛇。
討伐されたその当時の怨念も凄まじく数百年に渡り蛇石で怨みを溜め続けた。
その怨み続けた蛇石の記憶はあるが数千年前の記憶は曖昧になっていた。
山の地形は変わり果て人類は進化を遂げた。
狩猟の民も槍から銃に変わり、管理された山の中には人も動物も少ない。
火神とインヴァースに来ていなければ数年にわたり逃げ続け討伐されていた事だろう。
しかしオロチ丸と火神はインヴァースに来た。
この夢はオロチ丸がこの世界に来てしまったきっかけのお話である。
オロチ丸は蛇石で数百年怨み続けた。
その怨みの塊は蛇石に宿った。
吸われ続けた怨念の塊は蛇石の下に溜まり続け、血のような真紅に染まる宝石になっていた。
ドンドン大きくなった宝石は軈て安倍晴明にその力を知られる事になった。
安倍晴明はその力を我が手にしようと画策したのだ。
火神が蛇石の封印を解いた張本人だがそれはあの《おじいさん》に騙されたからである。
あのおじいさんとは、、、《安倍晴明》その人であった。
風貌は痩せこけ腰の曲がったおじいさんだが中には疚しい心を持った陰陽師が居たのだ。
安倍晴明は陰陽道を極め、異世界転移を得意とした。
インヴァースに転移したのも彼である。
転移する前にネックレスが火神の体に入り込んだがあれは意図せぬ事態だった。
蛇石の下で育った宝石は蛇石の中に存在していたオロチ丸にも干渉をし始めた。
8つの頭と8つの尾の全てに宝石の力が宿った。
各頭には属性が与えられ闇の属性も付加されていた。
恨みの力は闇に染まっていた。闇属性なのも頷ける。
その力の全てを陰陽道奥義の1つ《転換》を用いて真っ白な石の首飾りに封じ込めようとしたのだ。
《転換》とは。
そこにある力を別のところに移す秘術である。
力に対し器が小さすぎると成立しない。
人から人への転換も可能だが器が小さすぎると単純に破裂して《死ぬ》ことになる。
陰陽道の秘術として使われてきたがそのあまりにも残酷な使用は惨憺たる結果しか齎していない。
戦場における戦神とも評される《将》を討ち取ることなく無力化させる。
それも自分には危害が及ばぬように式神を使って。
悪質極まりないこの《転換》は力の全てとはいかないがその性質から魔力や神力といった類の力さえもあながえず全てを器に移される。
しかしこの《転換》にも弱点があった。
1度移した器から簡単には《転換》で移すことが出来なくなるのだ。
力の《転移》を再度するならば《器の破壊》が必要になる。
安倍晴明が画策した蛇石《怨念転換》は神社という八百万の神々によって張られた結界に護られ、悪事に染まり穢れた式神は入ることが許されなかった。
ここで安倍晴明は無駄に数十年の足止めを余儀なくされる。
陰陽道に身を堕とした安倍晴明は神社へ直接関与が許されない。
そして参拝者も居ないのだ。
それは蛇石に宿る異常な怨念によるものだった。
人を避け神すらも弾き飛ばすほどの《怨念》だった。
そんな檻に火神がやってきたのだ。
安倍晴明は嬉嬉として火神に任せた。これが安倍晴明の初めての失態。
蛇石に宿りし力は単純な《八岐大蛇の怨念》では無い。
悲運の火の神《火之夜藝速男神》の力による浄化の力に気づかなかったのだ。
蛇石《怨念転換》の画策は想像を超えた怨念の強さと火之夜藝速男神の力により失敗に終わり、100人分の怨念を溜めることの出来る首飾りは八岐大蛇から禍々しい怨念の憎しみのみを吸い取ると蛇石を離れ天高く舞い上がった。
オロチ丸の封印が溶けた時に晴れ晴れしい気持ちであったのは《転換》によるある意味幸運が齎した偶然だったのだ。
そして舞い上がった首飾りは火神の両手に吸い込まれるように落ちていった。
その首飾りが火神に《火之夜藝速男神》の力を《転換》させる器となるきっかけとなることも知らずに。




