歪みの中から
《玄武》とは中国における霊獣。
安倍晴明が式神を用いて現代に呼び寄せた霊獣。
姿形は安倍晴明の趣味に沿って創り出される。
ティンカーもその1人。
まぁ一言で言うなればロリコンクソ野郎である。
此度の歪みから顔を覗かせる《玄武》もまた幼き妖精である。
安倍晴明はまだ知らないのだ。
ウーラニアの《未来予知》の力を。
そして火神の夢には続きがあったのだ。
火神の予知夢の始まりと終わりには真っ黒な画面が目の前に広がり中心にはこれから始まる夢の題目が映し出される。
心で願ったことが題目に反映され女神の力によって改竄される。
例えそれが本来の事実と異なろうとも。
此度の題目はこうだった。
《題目 失せ物ウルツァイト見つかる。新たなる式神の再来。》
そして夢の終わりを告げる時には次に起こる事が書かれている。
《次回 オロチ丸の頭部をチラつかせる輩が現れる。》
この時《次回》の意味を知っていれば火神達は《玄武》に遅れを取ることはなかっただろう。
玄武は火神の作った歪みから見つからないように顔を覗かせる。
火神達の感心が自分に向かないように外に出る必要があるからである。
火神達は呆れていた。
天叢雲剣を振るってから半刻は過ぎた。
ダンカンの店の前にある道の往来で剣を振る光景は周りから見ればかなりの狂気である。
オロチ丸達は必死に止めたがあまりにも楽しそうに天叢雲剣を振る火神を見ていると躊躇してしまうのだった。
呆れ顔のオロチ丸達が火神から目を離したのは半刻をすぎた時の事である。
天叢雲剣に取り憑かれたかのように振り続ける火神。
半刻が経ち横なぎからの体を反転させ上から下への袈裟斬り。
袈裟斬りした刀身を回転させ下から弧を描く様に上へと斬る。
歪みの存在など気づくことも無くただ剣舞を舞い続けた。
火神が横なぎをして反転した時に大きな歪みが発生した。
半分は火神によるもの。もう半分は式神《玄武》の力である。
玄武は慎重にかつ大胆にも歪みからそのまま出ようとした。
しかし少し幼児体型過ぎたのか歪みお腹が引っかかっていた。
本人は焦る感情を押し殺し必死に歪みから出ようとする。
オロチ丸達は気づいてない。
火神が下から切り上げ勢いそのままに空中に飛び上がるとそのまま後方宙返りをする。
後ろにいた《玄武》は内心ヒヤヒヤであったが今は歪みにつっかえたお腹を通り過ぎ膕をするりと抜けた模様。
あとは足を出すだけになる。
間もなく歪みから出られると安堵するのも束の間、後方宙返りを終えた火神と目が合ってしまう事態に陥る。
歪みから出る玄武と剣舞を舞う火神が口をあんぐりと開けた滑稽な出会いであった。




