暗殺者裟伽羅と優鉢羅
地上で大空を仰ぎ勝負の行く末を見守っていた仲間たちも火神の元へ到達した。
アルマゲドンとの圧倒的な体格差が無くなりジリジリと大空から押されるような妙な威圧感も滅していた。
火神の元へ飛んできたオロチ丸達は消え去ったと思われたアルマゲドンのキュートな姿に驚きを隠せない。
皆あんぐりと口を開け周りを見渡す。
火神は相変わらずアルマゲドンを抱きしめながら首元を揉んでいた。
その愛でる火神の仕草にトロンと蕩けた顔のアルマゲドン。
大陸のような大きさから一変人型程の大きさなのだ。
難陀やオロチ丸も龍化や変身によって大きくなったりすることは出来るがアルマゲドン程は出来ない。
アルマゲドンのそれは変身と呼ぶには余りに変わりすぎでまるで精神体を別の何かに写したかのようであった。
『那岐、、、様?もしや、、、その山嵐がアルマゲドンなの、、、ですか?』
『これは、、、数百年生きた我の想像を超えておる、、、』
『流石はカグツチ様。俺の主こそ唯一絶対神最強の火の神です。それにしても生物を誑かすのが上手すぎる、、、』
何やら難陀が失礼なことを言っている気がするがまぁ俺はこのもふもふから逃れることは出来ないのだ。
4本の頭になり小型サイズのキュートな見た目なオロチ丸も可愛いが、この触り心地はオロチ丸異常なのだ。
オロチ丸はまるで塩ビの人形のような触り心地であまり触り心地は良くない。
戦闘中はガチガチに硬くなった鱗を触ると皮膚が着れるほどだが気を緩めればぷにぷに感覚なのだ。
しかし動物のもふもふには勝てないのも事実である。
オロチ丸はこの一瞬の出来事に全てを悟り頭を項垂れる。
『那岐さまぁ、、、僕の那岐様が取られちゃう、、、うう、、、』
オロチ丸は目尻に涙を溜めるとポロポロと流す。
咄嗟にハンカチを出す女子力の高い裟伽羅だが仲間の目も他所に感嘆しポロポロと涙を流し続けるオロチ丸は気づく素振りも見せなかった。
このハンカチに猛毒が塗られてることを意図せず回避したオロチ丸である。
裟伽羅は雇われの暗殺者であった。
目的は2つ。
火神とオロチ丸の《死》である。
報酬は1つ。
妹の身柄の解放である。
しかしそれを口にする事は出来ない。
呪術によって封じられているのだ。
彼女の妹は龍王《優鉢羅》職業は遊び人ながらも序列3位の龍王三強の1柱である。
彼女は遊び人スキルである《すろっと》のプロであり得意技は《目押し》である。
例え0.00001秒のタイミングでしか止められないタイミングであっても彼女にとっては意図も簡単に止めることが可能だった。
しかしその目押しが仇となり催眠をかけられたのだ。
《すろっと》に細工を施し催眠術をかけた安倍晴明は序列3位の実力者たる優鉢羅を傍らに侍らせインヴァースを手中に入れんとしていた。
序列2位の《跋難陀》は剣に生きる剣士であり、自由奔放な性格から従わせることは難しかった。
序列1位の難陀は火神の下僕であり、元々は洞窟に引きこもる出不精な性格だった。
遊び人の《優鉢羅》が従者としては適任だったのだ。
遊び人とは言え彼女は最強スキルを所持し、本気で戦えば難陀や跋難陀すら勝てるかどうか五分五分だった。
跋難陀は賭け事に負けることは無い。
万にひとつも、いや、億にひとつもないのだ。
跋難陀に勝負を挑むと言うことは負けると言うこと。
だから誰も勝負したがらないのだ。
戦闘だけならば難陀や跋難陀の方が強いのだが運要素が入るなら話は別。
確実に勝てるとは言いきれないのだ。
それでも様々な要素で決まる龍王の序列は人からの人望の乏しい優鉢羅は3位に留まっていた。
虚ろな目をした優鉢羅は遊び心の無いだだっ広い石畳の玉座の間にただ立ち尽くす。
元々は屈託のない笑みが自慢の華奢な体からは想像もつかないほどの巨乳で天然な性格をしている。
美人と言うよりは可愛いと言った表現が最適で彼女が歩けば色んな人から物を貰うことも多かった。
しかしその目には生気はなくまるであやつり人形のようであった。
安倍晴明は優鉢羅に命令し火神を殺そうと目論んだが失敗に終わる。
優鉢羅は全く動こうとしなかった。
そして裟伽羅に白羽の矢が立ち火神たちの暗殺を命令したのだ。
裟伽羅は溺愛していた優鉢羅を人質に取られてしまい嫌々ながらも安倍晴明に従っている。
催眠はされていないが呪術は施され逃げる選択肢を消されていた。
最も妹を助け出すためなら神をも殺せる彼女が逃げ出すはずもないのだが保険の為と呪術をかけられる。
呪術の内容は先程説明した優鉢羅の誘拐に関しての情報を他人に話さないこと。
あと一つが火神、オロチ丸を殺すまでは優鉢羅に触れることが出来ないことである。
間接的ではあるが2つの呪術で縛り付けられた裟伽羅は逃げ出すことが出来なくなっていた。
抜け殻のような優鉢羅を無理やり連れて行こうとすれば自分は死ぬ。
そして裟伽羅は上手く仲間に加わり今か今かと隙を見ては火神を殺そうとしていたがその屈託のない笑顔と素直な性格の持ち主を殺めることへの罪悪感に押しつぶされそうになりなっていた。
そしてその矛先をオロチ丸に向けるのだった。




