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山嵐はペットとなる

晴れ晴れとした青空が背中いっぱいに広がり刺すような日差しを浴びながらも身動ぎすらせずただ彷徨い続けるアルマゲドンの飛行速度は遅い。

しかし1度攻撃の姿勢をとり空から降下するとその速度はリンゴをピサの斜塔から落とす実験したことで有名なニュートンの万有引力の法則が作用し音速を超える。

しかし今は優雅に飛行していただけである。

アルマゲドンの周りを虫がブンブン飛び回っていたが退避の姿勢をとってからは最早興味の対象ではない。


火神がアルマゲドンへと到着するまで数分とかからなかった。


火神はアルマゲドンの顔と思しき所へ飛んでいた。

初めは柔らかそうなお腹目掛けて攻撃するつもりであったがそのあまりの巨体に攻撃は断念した。

まずは意思の疎通が取れるかどうかの確認である。


「止まってくれ!俺の名前は火神!お前は何の目的で攻撃してるんだ?」

最大限大きな声で叫ぶ様に話しかける。


『ふふ。なぁに?小さき者。僕はアルマゲドン。可愛い山嵐だよ?僕のエサになりに来たのかい?ふふ、、、』


アルマゲドンは逆光になって見えにくく黒い影が顔にかかっている。


「可愛い?君、、、可愛いのかい?エサになるつもりはないけれど俺は可愛い動物には目がないんだ!可愛いならその顔を見せてくれないかい?」


『、、、急になんなんだ?君は。僕のエサにしては小さすぎて美味しくなさそうだし、、、良いよ?ちょっとこっちにおいでよ?』

アルマゲドンは初め首を傾げて火神のことを見据えていたがそのあまりの体格差に考えることも馬鹿らしくなっていた。


「分かった!今からそっち行くね?」

火神はブーンと飛行機が飛ぶように手を広げそのままアルマゲドンの首元に抱きついた。

そして火神はその柔らかい首元の感触に思わず頬を赤らめて恍惚の顔になり歓喜の声を上げる。

「わぁ!柔らかい!離れたく無くなっちゃう柔らかさだ!」

本来山嵐は体の後ろ部分のみが硬い針のような毛に覆われているがアルマゲドンは頭から尻尾に至るまでが針に包まれている。

しかし体からみてお腹に当たる部分は意識しない限り針を纏うことは無い。

首元に至っては針で覆うことも出来ない本来なら弱点になり得る急所である。


本来動物なら急所や弱点を見せない。

しかしアルマゲドンには弱点らしい弱点はなく、首元であってもその覆われた柔らかい蕩けるような毛質によって守られる。

大砲の類だったとしても皮膚に到達することはないのだ。

しかし現世でアルマゲドン担当の飼育員の彼は度々アルマゲドンの喉元を撫でてくれた。

あれから数百年経った今でもその当時の記憶は薄れるものではなかった。

そしてアルマゲドンはその大きな眼の目尻に涙を溜める。

懐かしい記憶が蘇り飼育員に愛されていた日々を思い出したのだ。

火神はふがふがと喉元に生える柔らかい毛に顔を埋めて狂喜乱舞していた。


『ねぇ、、、火神君だっけ?君、、、僕の物になってくれない?』

アルマゲドンは火神のその求愛にも似た行動に感化され思わず世迷いごとを嘴る。

ハッと思わず出てしまった感情にアルマゲドンは驚愕するもその表情は穏やかであった。


「君の物?それは難しいかなぁ、、、?だって君大きいもん。それじゃ俺の傍には居られないよ?」

火神は率直に質問に答えた。

アルマゲドンの巨体は小さな島国にも劣らない程の大きさ。

尻の穴1つとったとしてもそれはブラックホール級にでかいのだ。


『そんなの、、、問題じゃないよ?』

アルマゲドンが一言話すとみるみるうちに火神と同じくらいの大きさに変形する。

通常日本でお目にかかれるサイズの5倍くらいのサイズである。


「わわ!小さくなれるんだ!、、、可愛い、、、でも、、、おかげで抱きつくことが出来なくなっちゃったね、、、?」

火神はアルマゲドンの風貌の変化よりもその愛くるしさに目を奪われる。

そして喉元にハグできなくなった姿に落胆する。


『そっか、、、僕のこの針が痛いんだよね?じゃあこれでどう?』

アルマゲドンは針に包まれていた全身から通常の山嵐と同じように背中から後方にかけてのみ針を集約した。

アルマゲドンは永き年月により体毛の変化すら容易にできる様になっていた。


「わーーーー!可愛すぎる!!」

火神は思わずアルマゲドンの元へ飛び込んだ。硬化されていない体毛は柔らかく刺さることも無い。

火神はギューッと抱きしめる。

アルマゲドンはその音速も超えた火神の神速に驚愕したが現世を思い出し泣きそうになる。


『これで、、、、僕の物になってくれる?』

アルマゲドンは恐る恐る声をかける。


「んー、、、僕には他にも仲間と言うか愛蛇(ペット)達もいるけどそれでもいいなら君も一緒に行こ?」


火神は申し訳なさそうにモジモジしているアルマゲドンをキツく抱きしめて喉元を揉んでいる。


『んん、、、それでいい!それでいいから一緒に居たいの!』

最早火神の《神の手》に魅了されてしまい恍惚の表情を浮かべ思考停止しているアルマゲドンは否応なしにペットになる事を決意する。

こうして空の覇者であったアルマゲドンすらもペットとして使役する火神なのであった。

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