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アルマゲドンの過去

アルマゲドンは眠気眼で空を飛行していた。

しかし横を通った小さき物が横腹を突き刺してきた。

身体中を覆う硬い針に阻まれ全くダメージは受けていなかったが空の覇者として見過ごすことは出来ない所業である。


全身に力を込め咆哮する。

空は振動し空気を伝わって熱を帯びる。

音波による格子振動が起こるための現象であるがアルマゲドンはただ威嚇の為に鳴くだけである。

まるで欠伸をするが如くの小さな咆哮だが小さき物を滅するには最適である。

飛行艇の機体は揺れ外壁を溶かし砲弾はドロドロになる。

鉄など熱伝導率の良いものは格子振動の影響を受けやすいのである。

そもそも格子振動とは物体が熱を帯びると原子が揺れ物質の抵抗が増えるという仕組みであるが、この世界の生物が知っている現象ではない。

しかし魔法では知らず知らずのうちに使われているのだからあながち知らぬとは言えないのだが。


アルマゲドンの咆哮で飛行不能となった飛空艇は退避していた。

アルマゲドンには興味もなかったが自分に害のあるものは全て排除してきた。

かつてアルマゲドンは現世で動物園で飼育されていた山嵐。

見世物にはされていたが担当の飼育員には大切に育てられていた。

しかしある日飼育員が事故で死んでしまいアルマゲドンは動物園から飼育放棄されてしまったのだ。

実際は山嵐の飼育方法を知る人物が突然いなくなった事での飼育不足であったのだがアルマゲドンは知る由もない。

満足に与えられない少量の餌を噛み締めながら人を恨んだアルマゲドンは次に来た飼育員の目を目掛けて針を飛ばす。

飼育員は脳まで貫通した山嵐の針で絶命する事になるが助けようと次々と押し寄せる飼育員達をアルマゲドンは全て殺した。

山嵐による殺人事件など前代未聞であるが通常の山嵐と異なりアルマゲドンの針の先端は鋼鉄のように硬く、軟鉄ならば貫通するほどであった。

担当していた飼育員はアルマゲドンの危険性について認識していたがその穏やかな性格のために問題視していなかった。

こうしてアルマゲドンは動物園の飼育員を次々と殺し、隙を見て柵外に出るのだった。

こちらの世界に来たのはアルマゲドンが脱走してから3日後のことである。


動物園から脱走したアルマゲドンは近くの山の中に入る。

そこで穴を掘っていた。

掘って掘って掘り進めるとこちらこ世界に出てしまったのだから笑いものである。

現世では逃走した山嵐に危機感を募らせたが数年も姿を表さない事から死んだのだと安易な憶測をする。

人とは自分都合に考える浅はかな生き物なのだ。

自らを賢いと思っている人類こそ最も無様で滑稽な生物だと思う。


アルマゲドンはこちらこ世界に来た時こそ従来の30センチ程の体であったが餌を食べれば食べるほどに大きくなった。

その大きさは魔力に比例し膨大な魔力と共に巨体に育っていく。

ある時飛龍を丸呑みする程に大きくなった時、草食動物であったアルマゲドンだが飛龍を丸呑みしてみる事にした。

この世界でやる事も無くただ貪り続ける日々に飽きたのだ。

小さな草を食べても急に大きくなることは無かったが飛龍を食べた時は突如として2倍ほどの大きさに変化した。

更に背中には二対の翼が生え空も飛べるようになったのだ。


次々来る獲物に彼は喜んだがこのサイズになってからは成長は止まっていた。

この世界にも理があるようでその理の中で最大の大きさに到達してしまっていたようである。

アルマゲドンには食にも戦いにも興味を失いただ空中を漂う日々を続けているのだった。

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