氷の大熊
ミスティリオの中腹に到達した火神達。
到達した俺たちを待ち構えるように氷の大熊は5頭同時発生する。
しかし幸いな事にどの個体も3m程の小さな個体であり子供サイズの様だ。
危険度でいえばかなり低く然しながら素材集めの目的としてはあまり嬉しくないのも事実である。
サイズが小さければ素材の大きさも小さくなる。
危険度も下がるのでどちらがいいとは一概に言えないのだ。
しかも5頭の氷の大熊を倒すと急にエンカウントしなくなった。
今まで麓からあった針葉樹はなりを潜め、雪の降りしきる雪原と化す。
髭があったならばカチコチに凍っているだろう-30度越えの温度である。
「ガチガチガチ、、、うう、、、寒い、、、火焔狼の毛皮を貸してもらったけど、、、寒すぎるよぉ、、、裟伽羅とウロボロスはだぁぅぃぼぅぶ、、?」
ダラダラと止まらない鼻水で声も鼻声になっている。
そんな中裟伽羅とウロボロスは平然としている。
『カグツチ様は冷気無効が無いのですか?自動発動するのは戦闘の時のみなので道中は意識しないと発動しませんよ?私は寒くないですねぇ。』
(うーん、、、コイツ天然なのか?それともタダの馬鹿なのか?まぁどちらにせよやりやすいが、、、ふふ)
『火神様は阿呆ですか?早く発動なさい。我ならば冷気無効など使わずとも環境対応能力でどうとでもできますよ。』
「阿呆って、、、酷い、、、もぅ、、、いいもん!オロチ丸と一緒に行けばよかったなぁ、、、俺のオロチーン!こっちこいよぉ、、、ハグしたいよぉ、、、、」
火神はオロチ丸不足に陥っていた。
トンドラでの数日も合わなかった時も寂しかったが冒険中は尚更その想いは強くなるようである。
彼女に対して恋愛感は無いのだがペットや玩具を愛でるように好きなのだ。
火神達がアホなことを言い合っている間オロチ丸と難陀はミスティリオ東側の火の魔物と戦っていた。
東の魔物は危険度も低く強者もいない。
しかし環境が悪いのだ。
燃えさかる山の影響で酸素濃度は低く、魔物もバラけている。
長時間の戦いを強いられるために環境に対応できる龍族でないと厳しい。
集落の民が毛皮を得るには魔法使いが冷却の魔法を使い麓に近いところで戦闘を繰り返すのだ。
難陀とオロチ丸が2人行動になったのはトンドラで得た能力を実践で身につけるためとも言える為に、彼女らは既に本来の目的を達成しつつも火神達同様に頂上を目指していた。
『ふぅ、、、火焔鹿を20頭って簡単に終わったな。オロチ丸はどんな能力を得たのだ?まだ使ってないようだが、、、?』
『ふふん。この龍眼玉凄いんだよ!じゃあいくよ、、、?』
おもむろに取り出した龍眼玉を水属性の頭にある眼に入れ込む。
『んんん、、、はあぁ、、、、!?』
どうやら眼に龍眼玉を入れると痛みがある様でオロチ丸は悶絶していた。
段々と痛みが引いてきたのか動きが止まり4本の首を下にだらんと垂らす。
するとオロチ丸の体が突如光り出す。
龍眼玉を入れた頭を中心に他の首が巻き込まれるように取り込まれていく。
そうして4色の斑模様になったひとつ首の龍族が生まれる。
『ふぅ、、、この姿久々だよ、、、まぁ4本しかないからまだ半分のチカラしかないんだけどね?』
ぷぷぷと笑っているが自分の落ち度であることをオロチ丸は既に忘れている。
『、、、して?龍化したという事か?』
『うーん、、、龍化ではないんだよね。僕ってそもそもが龍族に近い存在だし。どちらかと言うと能力の1本化かな?全ての属性攻撃が同時に出来るようになるんだよ。例えば炎属性の魔物に炎属性攻撃は聞かないだろう?でも八本の頭を融合させた僕には属性って概念が無くなっちゃうんだよね。炎属性が混じっていたとしても回復はさせないし的確に水属性や氷属性で攻撃する必要が無くなるんだ。更に単純に1本の頭の8倍の力になる。今は4倍だけどねぇ、、、はぁ、、、早くおじいさん見つからないかなぁ、、、』
『はっはっは!そうなんだな?ではこれからはオロチ丸に任せるとしよう!』
難陀は快活に笑いながらオロチ丸の肩をバンバンと叩いた。
その鱗の硬さも4倍になっているらしくバンバンと叩いた手には血が滲む。
『むぅ、、、?これ程までの力が生まれるのか?これは我も負けてはおれんな、、、?』
こうして難陀とオロチ丸は山頂に向けずんずんと登っていく。
一方火神達。
吹雪に霞ががった遠くに一際大きな氷の大熊が見えていた。
大熊もこちらに気づいたようで足元に雪煙を巻き上げながら猛ダッシュで此方に下ってくる。
その全貌が徐々に明らかになってくる。
体躯は5メートルを超えた大型である。
Aランクと判断したがその後ろからは3頭の通常サイズの5メートル程の氷の大熊がついてきていた。
火神達は《超電磁波》を発生させる。
空気を伝って高速で一直線に大型のリーダーに向かっていく。
バリバリバリバリ、、、ドガーーーーン!
誰もが火神の先制攻撃で殲滅したと思った。
巨大な爆発でもくもくと燻っていた煙が晴れがそこには大型の氷の大熊の姿は無く、2頭の大熊が黒焦げになって転がっていた。
あと2体には避けられた様だった。
火神達は爆破の起こった周囲を見渡すが氷の大熊を見つける事は出来なかった。
すると不意に後ろから殺気を感じた。
まるで瞬間移動したかのようであった。
咄嗟に距離をとり後ろを振り向くとそこには超巨大な氷の大熊が存在し、今まさに襲いかかろうと手を振りかざしていたところであった。
もしも殺気に気付かず咄嗟に前に出なければ頭を吹き飛ばされていたであろう。
空振りに終わった右フックからは真空刃が発生し火神達に襲いかかるがウロボロスが難なくいなす。
『ふふん、、、こやつは骨がありそうだな?我が相手をしようではないか。ふふふ、、』
ウロボロスは獲物を狩る眼になると龍化し氷の大熊に負けずとも劣らない巨体になる。
氷の大熊は目を白黒させながら此方を睨んだがそれも束の間、ニヤリと口角を上げると腰を沈めまるで武道家の如くスピードで突進してくるのだった。




