商業都市ムリフェン
洞窟を脱出した火神達は一路トンドラに向かう事に。
道すがら裟伽羅がいた現世の話になった。
彼女の名前が諫山 優子であること。
そしてバスガイドだったこと。
記憶では1930~1950年頃に現世にいたらしいことも分かった。
日本では日中戦争や第二次世界大戦の勃発時期である。
ギブリ洞窟での《ちょこれーと》はその時代のバスガイドさんが知るチョコの味とは随分と違った模様で、《加加阿》と砂糖を直接食べた味の方がまだマシだったと。
しかしあの光景は凄惨であった。
口にベッタリと付けていた見た目麗しかった魔物にも驚愕したが加加阿を次々と水溜まりにぶち込んですり潰していたのだ。
気持ち悪いにも程がある。
火神は興味本位で舐めた一口が止まらなくなったのはメンバーの周知の事実であるので文句は言えないのだが。
裟伽羅の身の上話を聞いているうちにトンドラに到着した。
彼女は元々昭和初期の人でありこの世界での適合率も良かったようで高度な幻術を会得した事で龍王となり何不自由ない生活だったようだ。
龍王になってからは特にやることも無くギルドへ登録しているのだとか。
流石に龍王の名は知られ渡っていて偽名を使わざるを得ないのでユウコリンと名乗っていた。
ギブリ洞窟へはとある貴族からの依頼で《ちょこれーと》なるスイーツを持ってこいとの指名クエストであった。
決して裟伽羅自信が《ちょこれーと》を食べたかった訳では無いと念押しされた。
このクエストは大都市ムリフェンの貴族の依頼で裟伽羅はトンドラで数日過ごした後ムリフェンへと行かねばならない。
火神達は裟伽羅に事情をはなし、大都市ムリフェンについて行く事にした。
オロチ丸の頭を探す旅である。
そして数日の時間が経った。
ある朝裟伽羅は新鮮な《ちょこれーと》を取りにギブリ洞窟へと向かう。
火神達は流石について行かずトンドラにて旅の支度をする事にした。
トンドラ街では秋の収穫祭に向け着々と準備が進んでいた。
どこからともなく屋台の美味しそうな匂いや青果のたたき売りがあちらこちらで見られるようになり、現代的な風景から一転しバザーの様な会場が中央広場に広がっていた。
秋の収穫祭は2日後に開かれ3日間続くらしい。
しかし俺たちは大都市ムリフェンに同行するために参加できそうもなかった。
大都市ムリフェンは商業都市であり基本的にいつでもお祭り騒ぎらしいがトンドラの秋の収穫祭はムリフェンにも匹敵する位の賑わいを見せるとか。
近代的な技術がこのときを待っていたかの様に炸裂し、祭りの風物詩である射的はレーザーによる照射も可能な高精度な拳銃を使うらしい。
まぁ尤も銃弾はコルク製なので景品は中々落ちないそうである。
祭りの間は気球船が空中を漂っており子供たちの遊具と化すことも有名だそうだ。
オロチ丸はとても残念そうにしていたが目的である裟伽羅がムリフェンに行く用事があるため仕方がないのだ。
後ろ髪を引かれつつも馬車も手配しムリフェンへと旅立つことになった。
馬車はトンドラからムリフェンまで行くという定期便の商隊に同行させてもらう事になった。
護衛兼務の為ほぼタダで乗れるためである。
馬車のレンタルも考えたのだがレンタルにすると返却する手間がかかる。
価格は銀貨10枚なので別に金銭的に問題がある訳では無いがまたすぐ返さないといけない面倒くささもあるのだ。
商隊ならば旅にも慣れており、御者を探す手間も省略できる利点もある。
まぁ様々な理由を加味した結果であった。
トンドラを出発する前日の出来事である。
火神は夢を見た。
この世界に来てから初めての出来事である。
「んん、、、ここはどこだ?」
周囲には何も無く真っ白なだだっ広い部屋である。
視界に入るもの全てが白く目を開けているのか閉じているのかも分からないほどである。
・・・時空を超えし勇者よ・・・
・・・そなたがこの世に導かれたことは必然であり偶然なのだ・・・
・・・混沌とした・・・いや・・・数奇な運命を辿りつつあるインヴァースを救ってくれ・・・
・・・気づいているかも知れないがこの世界はある人物の手によって乱されているのだ・・・
・・・世界の滅亡を・・・反逆者を・・・お前の手で・・・正しい道へと・・・導き・・・
チュンチュン、、、チュンチュン、、、チチチチチチ、、、、、
鳥の囀りが聴こえる。
「ん、、、変な夢だったな、、、真っ白な部屋でただ変な声が一方的に話しかけてきてたけど、、、どこかで聞いた気がする声なんだよなぁ、、、?まぁ考えても仕方ないか!今日は出発の日だもんな。いざ商業都市ムリフェンへ!」
こうして火神達はムリフェンへと向かうのだった。




