大量発生
ギブリ洞窟地下三階へと到達した火神達。
地下三階は洞窟内とは思えない程に光が差し込みキラキラと中央に聳える湖の水面を輝かせる。
時々吹いてくる風も生暖かいが春の芽吹きを想像させるかの様な草花の匂いがする。
フワァー
「ここ洞窟内だよね?神秘的だねー」
『ですね!那岐様!僕湖で泳ぎたいくらいだよ!』
室内は蒸し風呂の様に少し湿度が高く温度も30℃前後で風が吹かなければ過ごしにくい気候である。
「ふふっオロチ丸はまるで子供だなぁ、、、俺より精神年齢低いんじゃ?」
『むぅ、、、那岐様?乙女にそんなこと言ったらダメですよ?何年経っても乙女は乙女なんです〜!』
ぷんぷんと聞こえてきそうな程肩を上下し頬を膨らませている。
『我にとっては過ごしやすい気候であるな。龍族は湿度が高い方が鱗の調子が良い。カグツチ様ここで一休みしてはいかがでしょうか?』
どうやら難陀とウロボロスはここが気に入ったようだ。
外に出ればトンドラの乾いた気候が彼らを苦しめるのであろう。
そんな事情もあったが龍族は全ての気候や環境に適した上位の存在。
決して口に出すことは無かったが火神は昔ペットでミドリガメを飼った事を思い出す。
ミドリガメは水が無いと乾いてきしまい、逆に全く陸が無いと肺呼吸の為に休まる暇が無くなるんだとか。
ミドリガメと比べるのは少し違うが爬虫類が巨大化したような体をしているのだ。
人と同じように環境に左右されやすくなっても不思議ではない。
と火神は思慮を巡らせここで少しの間、休息をとることにした。
「そうだね。少し疲れたし休憩しようか?オロチ丸も変身して水浴びしてきていいよ?ただ魔物がいるかもしれないから注意してね?」
火神の見た目は10歳程度なのにまるで保護者の様である。
それに引き換え八岐大蛇はゆうに1000歳を超え、英智の存在で無ければならないはずだ。
だがそんな歳のことなど忘れて無邪気にはしゃぐオロチ丸を見て逆にホッコリとする火神はある種の神々しさも感じられる程だ。
パシャパシャー
キャッキャッ
素っ裸になったオロチ丸と難陀とウロボロスは水浴びを始める。
火神はあまり水泳を得意としておらず荷物番である。
「那岐様~!一緒に遊びましょうよぉ~」
『カグツチ様。水浴びは良いですぞ?体に染み渡るようです。』
『、、、、気持ちいい、、、、』
どうやら龍族に性別のような感覚は無く、見た目が超絶イケメンのウロボロスが水浴びしていても問題ないようである。
しかし火神は違っており水浴び中の3人を凝視する訳にもいかず床にゴロンと寝転がって洞窟の天井を見上げた。
するとそこには無数の《漆黒蟲》が居た。
天井を覆い尽くすほどの《漆黒蟲》である。
そして天井が少し覗くと光が差し込んでくる。
「ああ、、、、光が差し込んでくるんじゃなくて《漆黒蟲》が光を遮っていたのか、、、、はっ!?」
こ、これ、、、もしも衝撃でも与えてしまったら、、、《漆黒蟲》の雨が降るのでは?
急に恐ろしくなった火神であったがこのまま何も起こらないならば衝撃を与えることは無いと感じ目を瞑り天井を見ないようにした。
しかし天井には覆い隠す程の《漆黒蟲》。
目を瞑ろうともその額には脂汗が出てくる。
決してここで寝る訳にはいかないのである。
もしも寝てしまって口に《漆黒蟲》が入った日には、、、自殺ものである。
火神は何事もないことを願いつつ水浴びしているオロチ丸達に近づいた。
「お、オロチ丸?そおーっと天井見てみて、、、?」
みんな唖然としていた。
天井には見渡せる限りの《漆黒蟲》
まぁ軽く数万匹は居るのだ。
例え広範囲殲滅魔法を使ったとしても半数も殲滅出来ないであろう数である。
『ぎ、、、』
「ぎ?」
『ギャァァァァァァァァァァァァーーーー』
オロチ丸が我慢の限界を超え大声を発する。
火神は咄嗟にオロチ丸の口を抑える。
『むぐっ、、、むー!むー!む、、、、』
どうやら少し落ち着いた様だった。
火神はそっと口を塞いでいた手を離した。
「落ち着いた?大声出したら落ちてきちゃうよ、、、」
何とかオロチ丸の大声にも反応することなく《漆黒蟲》は落下していなかった。
「ふぅ、、、危ねぇ、、、もしもアレが落ちてきたら生き地獄だからね?ダメだよ?」
オロチ丸は自分の口に手をやり激しく頭を上下に振る。
そのおかげでおっぱい様がブルンブルン上下に揺れる。
目のやり場に困った火神は難陀が居た場所に声をかけながら振り向くとそこには難陀は居なかった。
ブクブクブクフグ、、、、、
『クワァグゥツゥチィサマワァ?ゴッギィブゥリィワァ?』
難陀は咄嗟に湖の中に潜り込み難を逃れようと考えたみたいだった。
もう大丈夫と言う意味で頭を上下に振り親指をグッと立てる。
それを見た難陀は顔を赤らめ更に湖の奥深くに潜っていってしまった。
頭にはてなマークが沢山出ている火神であったがそれは当然である。
火神からしたらもう大丈夫だよ?と言う意味であったが、この世界では親指を立てる仕草はアレが立った事を示すサインであることを知らなかった。
それを恥ずかしげもなく何度も何度も立てる火神を見て難陀も異なった意味を悟るがどうも気恥ずかしく中々湖から上がることが出来ないでいた。
彼女も素っ裸なのである。
至極当然なのだが難陀は元々好意を寄せる相手でないならば裸を見られること自体恥はなく逆に敵意すら覚えるが、好意を寄せ主従関係にある火神とは禁じられた恋にあり恥も感じるのである。
その赤く火照った体や鍛え抜かれた腹筋を見せることに抵抗を覚えてしまったが故に酸素が切れる10分間の間水中で火神が去るのをただひたすらに待つ。
火神は更に難陀を心配し一向にその場を離れようとしなかった。
それが仇となり難陀は酸素欠乏によりぷかーっと水面に浮かぶ事になったのだった。




