ラファエルの試練
エミリー、ウルバエル、ルッカスの3人は死の恐れよりも圧倒的な力の前に為す術もなく動けなくなっていた。
それほどまでに《龍黄金鎧》を纏った闘気は異常であった。
だが難陀が試行錯誤をしているお陰で意識が飛んだり絶命することは無かった。
しかし圧倒的な力は溢れ出る強者の覇気の如く弱者を威圧する。
魂動は早まり血が滾る。
すぐさまここから逃げよ!と体が叫んでいるのである。
バトルロワイヤルに参加した他の者は此処に居合わせなくて幸せであった。
目の前には魔王級の闘気を纏う龍王が存在のだから。
「ふはははは!どうやら龍闘気を鱗鎧に練り込む事には成功したか、、、では行くぞ?」
難陀が下に重心を落としたと同時に見えくなる。先程まで居た場所にはゆらゆらと揺れる残像が残る。
『『なっ、、、』』
戦闘に長けた剣闘士とエミリーと、素早さが自慢の盗賊頭ルッカスはその危険性に本能で気付き防御体勢をとる。
防御が一瞬遅れたウルバエルは目の前に現れた難陀の下段回し蹴りにより両足がくの字に曲がっている。
『うわぁぁあ、、、、、いてぇ、、いてぇ、、、、』
ウルバエルは聖人有るまじき汚い言葉で痛がっていたが次の瞬間には意識を飛ばされる。
難陀は首元の頸動脈を右手親指と人差し指で掴むとそのまま押し込み喉を潰す。
通常柔道の頚部圧迫であれば押すのみだが力加減をミスした難陀は押し潰し首の骨を折ってしまったのだ。
ここで常人ならば殺してしまっているだろうが、やりすぎに気づいた彼女は自身の使える唯一の回復魔法遅延型のヒールを唱える。
ウルバエルからすれば生殺し状態となるのだがこの遅延型のヒールは骨や腕が切断された場合においても激痛を伴うが再生可能なのである。
そのあまりの痛さに気絶したウルバエルに合掌を送ろう。
難陀は防御態勢を取ることが出来た両者にも同時攻撃を行っていた。
エミリーには胸の前でクロスした腕にわざと直撃させた中段突き。
二刀流のルッカスには武器が壊れるように神速回し蹴りを放ち真空刃を発生させる。
2人とも場外ギリギリに吹き飛ばされ床に転がる。
エミリーは両腕の橈骨、尺骨、上腕骨が粉々に砕け、肋骨にもヒビが入っていた。クロスした腕で持っていた愛刀斬鋼剣も刃が欠けている。
ルッカスの状況ははもっと酷かった。
致命傷こそ負っていなかったが真空刃による斬撃で武器は粉々になり通り抜けた刃が体のほぼ真ん中を軽く切断されている。
もしも難陀が全力で真空刃を放ったならば完全に切断されていただろうが殺める訳にはいかないため手加減を施したことで臓器にダメージは無かった。
「ふふふ。さぁ、、立ち上がれ!そして我の前に立ちはだかるのだ!」
『『無理だよ!(無理よ!)』』
2人の声がハモると難陀に遮られる前に降参を宣言する。
『『棄権します!』』
ルッカスに至っては立つことも叶わぬ重症、エミリーも最早武器を持てない状態、棄権はやむを得ないことである。
「そうか、、、今からが本番なのに、、、」
『『調子に乗って、、、すみませんでした!もう勘弁してください!』』
2人は棄権したがその恐怖の存在はそれをも無視して、命を嘲笑うかの様に奪い取りそうに見え頭を床に擦り付けて懇願していた。
「我は強者と戦いたいだけだ。次はラファエルの試練だったな?我は疲れておらん。このままかかってこい!」
会場はシーーーンと静まり返る。
本来ならばこのバトルロワイヤルで勝者は3名。
そこからは三つ巴の試合を行うことが定例である。
それなのに難陀が強すぎてほぼ全ての者が瀕死或いは棄権してしまった。
実際数日後に決勝戦を催す案も出たのだが難陀を除く全員から断られる。
誰もが龍王とは戦いたくないそうであった。
そうして難陀はバトルロワイヤル最凶の伝説を残し、実質上の出禁になるのである。
あとは三つあるラファエルの試練。
一つ目は魔界の番犬で知られるケルベロス三体による死闘なのだが、、、
このケルベロスは殺していいとの承諾を得ると《龍闘気》を纏いものの3秒で絶命させてしまうのだった。
本来ならば優勝者と言えども公開処刑に近いこの蹂躙を逆手に取り蹂躙してしまった難陀である。
ラファエルの試練は二つ目に突入する。
次の魔物は合成獣であった。
合成獣と言えばライオンや蛇などを合成したイメージであるだろうがこの合成獣はドラゴン、トロール、シルバーバックなる錚々たる魔物が合成獣されていた。
しかし力の差は歴然で合成獣は難陀に服従の意志を示すと床に背中を着け、お腹を見せる。
所謂犬の服従ポーズである。
観客も唖然とする程の1戦であった。
更にこの合成獣はみるみる小型化し人型程の大きさになると難陀に懐いてしまい部下に加わることになる。
前代未聞の珍事であった。
ラファエルの最後の試練。
それはラファエルの指輪の力を抑え込めるかと言ったものである。
神具である《ラファエルの指輪》はその内部に大天使の裁きを直接封じ込めている。
この力を解放し自らの物に出来ねば使えないのは必然である。
会場の真ん中で12名もの術士による指輪の解放を執り行う。
彼らの解術の儀は30分に及んだが観客は未だかつて行われなかった第3の試練に固唾を呑んで見守っていた。
難陀も会場の中心で腕を組みその儀式を見守る。
解術の儀が終盤に差し掛かるとラファエルの指輪から青白い光が溢れはじめる。
会場も初めて見る光景に騒めきだつ。
おおおおぉぉぉぉぉぉおおおーーー
その光はどんどんと光量を増していき会場は光に包まれる。
難陀はその眼を一切逸らすことなく中心部を見つめる。
中心には10センチ程の光り輝く翼を生やした妖精?天使?が顕れる。
その姿は神々しくも可愛らしい銀髪のサラサラ長髪の全裸の存在であった。
性別は無いのか胸も性器も存在しないようだ。
その者は難陀に声なき声をかける。
〘汝は妾を呼び寄せ何を望む?力か?権力か?〙
「我が望むものは主を護る力。守護を望む。」
〘むむ、、、守護の力か、、、それならば大天使の裁きよりも良きものを汝に与えよう。天使長の加護である。〙
「天使長の加護?してその力は如何程なのか?」
〘天使長たる我に対等な物言い、、、許し難いが、、、まぁよいか。その力は万物からの守護である。力や魔力全てのエネルギーから護ることが出来る。そしてそのエネルギーを吸収し自らの糧とし、仲間に分配するのである。〙
「ほほぅ、、、それは素晴らしいチカラ、、、是非とも我に授けてくだされ!」
〘ふふふ、、、良いであろう。しかしタダと言う訳にはいかぬ。我の分体を封印せしめる忌々しいこの指輪を破壊してはくれぬか?さすれば我の分体は汝に宿りその力を授けよう!〙
「うむ、、、わかった!では行くぞ?」
難陀は拳に龍闘気を纏わせると指輪を叩き割った。
「「「なっ!?ラファエルの指輪を叩き割っただと!?まずい、、、まずいぞ、、、」」」
12名の術士は慌てふためく。
それはそうだ。ラファエルの指輪に封印されし力が暴発するのだから。
こうして会場の難陀を除く全ての人が意識を手放したのだった。




