基督の取り巻き
聖地獄へと向かった火神とオロチ丸──
中に入ると4体の巨大な石像が脇を固め、中央の台座に座る小さな石像を中心に膝を折り頭を垂れている。
巨大な石像にはそれぞれ違った翼が特徴的で、左手前から大きな炎のような放射状の翼、左奥は8対16枚の小さな翼の集合体、右奥は蝶の様な美しい紋様が刻まれた翼、そして右手前の2対4枚の上下左右に別れた翼の石像だ。
中央の台座に座る小さな石像に向かって頭を垂れる形なので翼を確認することが容易だった。
──そして俺たちが聖地獄の扉を閉めた瞬間に変化が訪れた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォーーーーーー
台座に座る小さな石像は動くこと無く何やら面倒くさそうな表情に変わる。
すると中央に頭を垂れていた石像達の翼がギギ…という音とともに僅かに動き始めたのだ。
「これって4体も同時に相手にしなくちゃいけないわけ?無理ゲーじゃん!」
「そ、そのようですね……火神様。でも僕らなら何とかなるのでは……」
脆くもその考えは即座に打ち砕かれる事となる。4体の翼が動き始め、更にこちらに完全に向き直った。
よく見ると4体の石像の台座には名前が掘ってある。ミカエル、ウリエル、ガブリエル、ラファエルと書かれていた。この4つの名前は四大天使として有名であり、神様が持つ最高戦力とも謳われる存在だ。
「まぁ……もしかしてとは思ったけど四大天使たちとはね……でも俺も負ける訳にはいかないんだ!オロチ丸!全力でいくよ!!」
「はいっ!火神様!いっけぇ!《八式嵐舞》!!」
「天叢雲よ……その身に我が力を宿せ!付与。《神紅蓮紋入魂》!宿れ!浄土の業火よ!!!」
天叢雲の刀身をなぞる様に触る火神。そのなぞった場所には紅く滾った文字や紋様がユラユラと蠢き出し刀身がパキパキと乾いた音とともに脱皮を始める。
そう──今ここに誕生したのだ。
世界最強の神剣が。
神をも焼き尽くす聖なる焔。それは母なる伊邪那美を生まれながらに焼き尽くす焔の神──加具土命。その生まれ変わりが火神那岐なのだ。その力の一部がひと振りの剣に譲渡された瞬間が今なのである。
神葬──全喰
それが全てを喰らい尽くす程の殲滅力を誇る神剣の名。神が仮に世界を平にならそうとするならばその力を使ったであろう神剣。神のみが創り出せる神の為の神の力を持った剣。
魔族を倒すと言われる聖剣とは似て非なるものである。全てを神の意のままに《壊す》事が出来る神剣。
「うぉぉぉりゃぁぁぁあ!」
火神が神葬全喰を使って横薙ぎ一閃。右手前のラファエルが4枚の翼を翼を動かす。ふたつが合わさると激しい金属音が響き渡る。
ガギキィーーーン
石像達は既にその封印を自らが完全に解き放ち、火神達の前に大天使として立ち塞がる。
ギャギャギャギャーーーー
「何こいつら……天使かと思ったら魔物っぽいな……会話が出来ないとかキモイな…」
「キモイです!キモキモです!醜い存在はこの世から消えて無くなればいいんだ!消えろ!《八連無双噛》」
オロチ丸の8つの頭からなる巨大な口が左手前のミカエルに伸びる。1度の攻撃では傷1つつけることが出来なかったが8つの頭で同箇所を執拗に責め立てることで属性疲労が発生。噛まれた場所は壊死した様に真っ黒に染まりその範囲は侵食をするかの如く広がる。
ギェギェギェギェ!!
やはりミカエルも話す事が出来ない低レベルの魔物の様だった。大天使という造形に騙された訳では無いが見た目からは強そうに見えたことも事実。低レベルの魔物ならば嬉しい誤算だ。
《基督様。ご命令を!》
「「喋れるんかい!」」
俺たちはツッコまずにはいられなかった。




