これは稀だ。すっごい稀
本日二話目の更新です。
時は過ぎて、あのネール嬢による下級精霊侮辱事件から一ヶ月経った。つまり、学園で行われる精霊契約の日である。
もちろん、私は見学。だって精霊契約しようにも、私自身が霊王だから、契約のしようがない。私自身が人間と契約するとかなら出来るけど、する気ないし。
ちなみに、リーナ嬢は参加してる。ティナと契約はしたものの、あれは仮契約状態だからね。ティナは私のところにまだ報告に来てないから、正式な契約ではない。まだ契約書類作ってないし。
契約書類というのは、契約を報告にきた精霊がどこの世界の誰と、どんな条件で契約をしたかを書いてる。
これ作らないと人間と精霊の間に遺恨が出来ちゃったりするんだよね。実際前に大事になったことあったし。
私がいなかった十五年間分は八霊達が自分のエレメンタルの精霊達を分担してやってくれてたらしい。合計で百七十人くらいだったかな?
この時期はどの世界でも精霊契約があってるから、精霊の契約者の情報調べたりするのが結構楽しかった。全部の世界合計で毎年十五、六人くらいが契約するから、ある意味今年は楽しみ。
だって、この世界だけでも有望な子が今年は七人くらいいる。これは稀だ。すっごい稀。私がいなかった十五年間を見ても、こんなにはいなかった。つまり、この世代は中々に将来有望だ。
【さぁーて!!始まりました。毎年恒例、精霊契約大会!!実況・解説は皆さんご存知この私、アズサ・ロンクレードがお送りするよ!!】
そんなこと考えてたら、突然聞こえてきたハイテンションボイス。声の方向を向けば、そこには金髪でサングラスかけてるちょび髭おじさんが。
すんません、皆さんご存知って言ってますけど、私全然わかんないっす。あと、テンション高すぎじゃない?あのクソジジイよりかはマシだけど。あの人の最高テンションは普通に鼓膜破れるからな。
【さーて、精霊契約のルールを知らない一年生のためにルールを説明だ!!
まずは第一関門だ!今から君たちには数々のトラップが待ち受けているダンジョンに向かってもらう!そこにある試練は精霊の力がないと突破できないぞ!】
ふむふむ、つまりはそこで精霊に力を貸してもらえれば、とりあえずは第一関門突破。そして第二関門で仮契約かな?
ならうちの派閥は全員平気か。リーナ嬢は確実にティナが力を貸してくれるだろうし、リズ嬢とダイアナ嬢もまず貸してくれないというのはないだろう。二人とも霊力の質はいいんだから。
てか、試練ってどんなのだろ。
戦闘がらみのやつだったら場合によっては全くもって役に立てない精霊もいるぞ?別にネール嬢とかその他大勢がどうなろうが私にとってはどうでもいいけど、さすがにリズ嬢達が傷つくのは嫌だわ。
兄様とかディアマス殿下はもう契約してるだろうから心配してない。これって主に契約してない人が頑張るやつだろうし。
ああ、ちょっと心配になってきた。いくら武闘派令嬢が集まってても、手に負えないモンスターは少なからずいる。
未来予知を使えば回避なんてらくらくだけど、私が余計に干渉しすぎて、世界の理を変えるのはダメだ。それをするためには爺様から許可を取らないといけない。少しのテコ入れでも未来は変わるかもしれないし、変わらないかもしれないから。
だから、私は怪我人が出ると分かっていても、手を出してはいけない。
"イレギュラー"の調査に来たのに"イレギュラー"に認定されて、あのエレンかクローカに消されるのはさすがに笑えないからな。
危ないことがあっても、こればかりはリズ嬢達に頑張ってもらうしかない。出来れば、怪我なく帰って来て欲しい。
………
一方、リズ率いるアストランス公爵家の派閥一行(ローゼを除く)はダンジョン入口前にて、作戦会議をしていた。
「ローゼ様がいない以上、最大火力の霊法は使えそうにありませんね……」
「連携技が使えないとなると、個々の能力で魔物を各個撃破でしょうか?」
そう、リズの派閥は前衛をリズ、リーナ、ダイアナが務め、ローゼが後衛から援護しそれに合わせて攻撃するスタンスだ。
しかし、ローゼがいない以上それをするのは難しい。三人も平均より上の霊力を保有しているが、さすがにローゼほどバケモノじみたものではない。
リズも後衛は出来ないわけではないが、後ろからちまちまするのは得意ではない。そして、性分でもない。
やはり各個撃破しかない、意見がそうまとまりかけたときである。
「あ、そうだ!」
リーナが突然にして声を上げた。
「ティナさん!ティナさんはいますか?」
『なぁにぃ〜?ボクならここだよぉ。』
リーナの呼びかけに、いつからいたのか服の胸ポケットの中からティナがヒョコリと顔を出す。眠たいのか、目をごしごしと擦っているのが可愛いらしい。
「あの、ティナさんって後方支援とか出来たりしないでしょうか?」
『後方支援?うーん……あ!あれだ!ヴァンパイア様がヴァルキリー様にいつもやってるっていうアレ?アレなら出来るよ!』
アレとはなんだろうか。今すぐローゼという訳が欲しいが、生憎ローゼは見学である。しょうがない、だって彼女は霊王なのだから、参加しないだろうし、運営も許すはずがない。
「アレとはよく分かりませんが、よろしくお願いします!ティナさん。」
こうして、リズ達の精霊契約大会第一関門は始まった。
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