閑話_嘘なら全然笑えないわよ
すみません、スランプでした。また今日から更新を再開して行こうと思います。
少し時は遡り、神域の三割を破壊したあの喧嘩の三日後である。
エレンから腹部に一発くらい、始祖神から説教を受け、ペナルティを課せられてしまったクローカは、現在………
「ふむふむ、【永遠の恋と奇跡の魔法】が第二弾に続いて第三弾も発売されるのね……」
自室に籠り乙女ゲームを漁っていた。
彼女の自室は広く、白亜の宮殿の内部に相応しい豪華絢爛な造りになっている。
ノックの音が聞こえ、クローカが扉の方を向くとそこには白髪のメイドエルフが。
「冥王様がクローカ様に用があるとのことですので、ひとまず応接室にお通ししましたが、どうなさいます?」
「ヒューズが?私、今日の分のペナルティは終わらせたはずだけど?」
「火急の用事らしいです。随分急いでいましたが。」
「ふーん……じゃあとりあえず行ってみるわ。後で飲み物出しといてー」
「かしこまりました。」
大好きな乙女ゲームのリサーチを邪魔されたクローカだが、こればかりは仕方がない。殴り合いの喧嘩でヒューズに負けたことはないが、口喧嘩では連敗しているのだ。今度のイレギュラー対策会議で馬鹿にされてはたまったものでは無い。
結局は殴り合いをするつもりだが、喧嘩両成敗ということで勝ったクローカまでエレンに殴られるのだ。
冥法でついた傷は冥法でしか治らない。魔法でついた傷も魔法でしか治らないと前に記述したはずだ。しかし、殴り合いならば話は別だ。
殴り合いで出来た傷ならば、天法で治すことが可能。
これが、戦闘においてエレンが四界の王の中で最強の理由だ。彼女は殴り合いだけならば自分を作った始祖神でさえも打ち負かすことが出来るのだ。
つまり、何が言いたいかというと、エレンを怒らせてしまうと殴られるということだ。それに例外はない。
クローカはうんざりした気持ちで応接室の扉を開け、ソファーに座り足を組む。ヒューズ相手に礼儀を払う必要などない。
「……で、あんたがこんなところまで来るなんて珍しいわね?なんかあったの?」
「うん、なんかあった。バリバリあった」
「で、なんで私のところに来たわけ?私が提出したイレギュラーの殲滅報告書に不備でもあったわけ?」
「いや、ないけど。それよりもっとやばいイレギュラーが起きてる。」
ヒューズのその言葉に、今まで興味がなさそうに爪を弄っていたクローカは目を見開いた。
「は?なに?ふざけてるの?嘘なら全然笑えないわよ。」
「嘘でこんなこと言うわけな…………あ、ごめん言ったことある気がする。」
「でしょうね。それで三回くらい騙されたもの。で、ほんとなの?嘘なの?嘘なら今度こそ殺して転生コースよ。」
「いや今回はほんとだから!!ガチの方のイレギュラー!!お願いだからその拷問器具をしまって!!」
どうやら今回は本当にイレギュラーらしい。クローカはヒューズに騙され今までに何度も間違って世界を破壊しようとしたことがあるのだ。
ちなみにヒューズはその度に半殺しにされ、執務室を書類の海にされたらしい。その量はレイの倍どころではなかったそうだ。
「で、内容は?」
「爺様が言うには、【おっしゃ異世界召喚されたひゃっほー!!この力を使って魔王を倒して世界征服してやるぜ!!】現象が七つの世界で起こってるらしい。」
「なによ。別に珍しくもなんともない話じゃない。わざわざ私が耳に入れるほどのことでもないわ。ベネルヴィかケルベロスに出向かせて心をボキボキにすれば良いだけじゃない。」
そう。クローカの言う通り、勇者が召喚され強い力を得て魔王を倒し、世界を征服しようと企むことなど、珍しくもなんともない。むしろよくあることである。特にクローカが気にするべきこともない。
「いや、それがね。レイちゃんがいる世界でも起こっちゃってるらしいの。国は違うらしいけど。そして、まさかの魔王と霊王イズ悪い人認定されちゃってるわけ」
しかし、ヒューズのその言葉にクローカは絶句した。身体は硬直し、一ミリも動かない。
「それだけは……それだけは絶対にありえないわ!!!ふざけるのも大概にして!!一つの世界にイレギュラーが二つ同時に起こる?そんな事例、今までに一度もなかったでしょうっ!!!」
クローカは思わず叫んだ。それは、騙された怒りなのか一つの世界にイレギュラーが二つあることへの驚きなのかどちらかは分からない。しかし、感情を制御できていないのは確かだろう。
幼女の姿だったクローカは十五、六歳ほどまで成長し。眩しい金色の髪の毛先は黒く染まっている。
応接室の窓は粉々に砕け、壁にかけてあるヘンテコな絵は床に落ちてしまっている。
「…………とりあえず落ち着きなよ。今入ってきたばっかのメイドちゃんがビックリしてるじゃんか。」
「………そうね。ごめんなさい、アネル。コーヒーを入れてくれる?」
「カフェインの摂りすぎ身体に良くないよー」
「うるさい………もう一度聞くけど、それは本当なの?だいたい、伝承なりなんなりで霊王は自然の管理者ということは分かっているでしょう?」
「うん、クローカならともかく、レイちゃんって結構人界に尽くしてきてるし、悪い伝承とかないはずなんだけど。残念ながら、チキュウから来ちゃった勇者さんらしいんだよねー」
「ああ、なるほど。もうこの際イレギュラーが同じ世界で二つ起きてることはどうでもいいわ。だってイレギュラーだもの。こういうこともあるはずよね。」
やっと感情が落ち着いたクローカはコーヒーと共に出されたミルフィーユを頬張りながら「でも…」と続ける。
「そうね。レイに手出しでもするのなら、私が直々に潰しに行きましょうか、その勇者。もちろん、精神的にも、肉体的にも。」
うん、今なんかカッコイイこと言ったけどミルフィーユ頬張ってたから全然キマってないね。と、ヒューズは思ったが、あえて何も言わないことにした。
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