セルティル先生って凄いよね
目の前にいるネール嬢をとりあえず殴りたい!
ネール嬢が泣くまで殴ったらリズ嬢に土下座で謝罪させてやるっ!!
私のパンチは痛いんだからな!!クローカ程ではないけど、ネール嬢くらいなら簡単にぶっ飛ば………せなかったわ。
そういえば、私霊王としての能力にほとんど制限付けられてたわ。
クソっ!なんてこった!!
霊法使えないなんて終わってるじゃないか!!
……………………やっぱエレンに頼んであのクソジジイ殴ってもらおっかな。さすがに霊法無しで"イレギュラー"調査は難しいわ。
あ、でもやっぱり今のローゼとしての私でもネール嬢くらいならぶっ飛ばせるかもしれない。
てか、私の特殊能力って未来予知と転移と精神のない霊を操ること、それと気配を消すことくらいだもんな。
それに、霊を操るのはクローカとの喧嘩じゃ意味なかったし。これはそんなに使わないかな。
さて、この場はどうやって切り抜けようか?出来ればネール嬢は殴り……
『嫌いー!!』
『霊王様のこと馬鹿にする人嫌いー!!』
『どっかいけー!!』
『ついでに殴られろー!!』
たい。
ってオイ。なんか増えてんぞ!!水の精霊二体だけだったのが、雷の精霊二体増えてんぞ!!
どうなってんのペガサス!!それとも、私がまた無自覚に増やしちゃってるの!?
「っな!?嫌いですって!?なんなんですのこの無礼者!!」
「無礼者はどちらでしょうね?ネール様。
彼らは精霊です。恐らく、この世界での精霊の価値はネール様より高いでしょう。
そんな彼らの不興を買って、貴女が誇っているロイヤード公爵家も只では済まないと思いますが?」
おっ!リズ嬢がネール嬢に反撃を?確かに、精霊によって公爵家が潰れちゃったら元も子も無いもんね。
「私のお兄様は中位精霊と契約していますのよ!下位精霊ごとき、恐るるに足りませんわ!!」
ん?今、ネール嬢はなんて言った?
下位精霊ごときだって?いくら君のお兄さんが中位精霊と契約してたからって、君のお兄さんが下位精霊より凄いわけじゃないんだよ?
あ、待って、いいこと思いついた。
もういっそ下位精霊達に今後一切のロイヤード公爵家の直系と接触するのを禁止するってお触れ書き出したら良くない?
そしたら、一ヶ月後の精霊契約でネール嬢に赤っ恥かかせられるし。
よし、思い立ったら吉日だ!早速実行してやろうじゃないか!
「そうですか。ネール様は下位精霊の助けなどは必要ないと。」
「え?ええ!!私は下位精霊になど助けて貰わなくても、中位精霊から上の精霊が助けてくれるはずですわ!!」
「その傲慢もいい加減にした方がいいですわよネール様。」
おう、リズ嬢が介入して来てからなんか傍からみたらネール嬢を一人対二人で苛めてるみたいになってるぞこれ。
講義の先生も来たけど、手が出せないっぽい。
何しろ、先生は伯爵家の次男。身分的に公爵令嬢に注意とか勇気がいるか。
そう考えたらセルティル先生って凄いよね。身分関係なしに誰にでも説教くらわせてるもん。
「まず、本来の話に戻しますと、ローゼ様は私の派閥なのです。貴女にローゼ様を引き抜く権利はありませんわ!」
「あら、ローゼ様はリズ様が困っていたからしょうがなく貴女の派閥に入ったんでしょう?本来ならお兄様の派閥に入っていたのではないですか?
本当は貴女の派閥など入りたくなかったのでは?」
「ローゼ様が私に手を貸して下さったことは事実ですが、ローゼ様は自分の感情に正直なお方です。嫌なら私の派閥などとうに出ていっているのではないです?」
あ、先生が限界になって誰か呼びに言ったぞ。やっぱりこれを止めるならセルティル先生かな?あとは学園長とかそこら辺?
あと、二人とも、私のために喧嘩しないでっ!!
………………って言いたかっただけです。ハイ。神域では私とクローカが率先して喧嘩してたから、一回言って見たかったんだよ。
恥ずかしい奴?なんとでも言え!!
………
これは一体どういう状況なのだろうか。
そう彼が疑問に思ったのも仕方ないだろう。
何せ、自分の受け持つ講義場に何時もどうり、開始時刻同時に入場したら、十家ある公爵家の中でも特に指折りの国への影響力を持つ三家の令嬢が言い争いをしていたら誰でもそう思う。
故に、彼は逃げた。否、助けを呼びに言った。
ロイヤード公爵家を敵に回せば今後、日用品などを購入するのが困難になってしまう。あの家は商業全般を陛下から任されているのだ。
アストランス公爵家を敵に回せば、王族の怒りを買ってしまう。陛下はシスコンなのだ。あと、A級冒険者からの不興など買いたくない。
アイリーン公爵家を敵に回せば、社交界で生きづらくなるに違いない。何しろ夫人は社交界の華と呼ばれるお方だ。
それに、ローゼ嬢は霊王。不興を買えば自分どころか国が潰れてしまってもおかしくはない。
こんな、嫌がらせのような組み合わせを注意しようと思う人が、ミス.セルティル以外にいるのだろうか。
そう考えながら、彼は走った。
今は周囲の目を気にしている場合ではない。
今までの最大速度で職員室へ向かい、ドアを勢いよく開けた。
………のだが、そこには誰もいなかった。
当然だろう。皆、受け持ちの講義場で生徒達に講義をしているのだから。
受け持ちのない学園長室を訪ねてみても、そこはもぬけの殻。
テーブルの上にある書き置きをみると、今日は王城に呼ばれているから午前中は不在とのこと。
彼は泣きたくなった。
最後に、彼が藁にもすがる思いで向かった場所。それは…………




