そう捉えてもよろしいでしょうか?
前話の後半を大幅に変更しています。
見ていない方はそちらからお読みください。
レイが視線を向けた先にいたのは、金髪で赤い瞳の見目麗しい幼女。しかし、血のような赤い瞳は生気を帯びていない。
「ヴァルキリー、レイ様になんの用だ?見て分かるだろうが今レイ様はお前に構っている暇はない。」
ヒュドラーがレイを庇うように前に出てそう告げるが、彼女……ヴァルキリーはそれがなんだと言うように笑っている。
「それで、レイ様。何故クーデターなどという馬鹿のような愚行が起こるなどとお考えで?」
愛らしい顔を傾け、幼子が分からないことを親に問いかけるような仕草でもう一度レイに問いかける。
レイは観念したかのように一度目を瞑ると、溜息を付きこう答えた。
「私弱くなってるから、必然的に起きるかな、と。」
その言葉を聞いた瞬間、ヴァルキリーの目からハイライトが消えた。元々死んだような瞳は怒気を充満させ、上がっていた口角が更に上に上がっている。
誰がどう見ても怒っているのに、顔は可愛らしい笑顔だ。
だが、
「は?」
その笑顔と、一言の"は?"に込められた殺意は尋常ではない。
ちなみに、彼女が殺意を向けているのはレイではなく、レイが想像したクーデターを起こす霊である。
何処にも存在しない霊だからいいが、それだけで並の人間は気絶、または失神しているだろう。
「へえ……つまり、レイ様は私達からの惜しげも無い忠誠を疑っている。そう捉えてもよろしいでしょうか?」
一応問いかけだったが、これは問いかけであって問いかけではない。「そう捉えてもよろしいでしょうか」この十五文字の言葉には、「私の忠誠を疑っているの?違うわよね?まさか配下を誰よりも大切にしてくださるレイ様がそんなことをするわけがありませんよね」という、深い……もうそれはそれは深すぎる意味があった。
「いや、まさかそんなわけないじゃないか。私は君達を信じてるし、君達から捧げられる忠誠心は何よりも強いものだと知っているよ。」
この意味が分かってしまえば、レイはこう答えるしかない。
何せ彼女は最高位の八霊の戦闘能力トップで、今戦ってしまえばレイは無傷ではいられないからだ。
「ええ、ええ!まさかレイ様が私達の忠誠を疑っているわけがございませんよね!!ご安心ください!この光の最高位霊のヴァルキリーがいる限りそんなクズでクソがするような愚行などぶっ潰してみせます故レイ様はまた霊界の城の玉座に永遠に腰をかけていてください!!」
なんとも恐ろしいことだろうか。
普通の霊が放った言葉なら、微笑ましい。それで終わるだろう。しかし、ヴァルキリーは少し異常だ。
彼女は今の言葉を一言も息継ぎをせず、狂気に満ちた瞳で言い放ったのだ。顔はヒュドラーの方を一度も向かず、何事かと覗きに来たヴァンパイアも目に入らないとでも言うように、ただひたすらにうっとりとした顔で、レイだけを見つめていた。
レイはヴァルキリーのことを変わっていると表現していたが、それは間違っている。この霊は、幼女の皮を被った狂気そのものである。
狂気という言葉を人型にし、ただひたすらに主人を求める狂犬のようなもの。
その狂気に関しては、クローカにも一目を置かれている。
ただひたすらに狂っているとしか言いようのない思考回路、主人でさえも手を焼く感情の数々。
レイが彼女を護衛に選ばなかったのは、その幼子のような容姿からではない。それに、ヴァンパイアとは違って彼女の容姿は自由自在だ。
故に、彼女を選ばなかったのはその狂気故。彼女はレイに少しでも無礼を働いた場合、即座にその存在に向かって牙を剥くだろう。
そんな危ない存在を、人界に連れていけるわけがない。
「うん、それでヴァルキリー、なんで執務室に入ってきた?」
「あら、理由などありませんよ?ただ単純に、執務室の傍を通ったらクーデターが起きるなどという言葉が聞こえて来たので、何事かと思い確認しに来ただけです。」
「へー……なら、もちろん今日頼んでおいたアレは終わってるんだね?」
澄ました顔で答えるヴァルキリーにレイは笑って問いかけた。
形勢逆転とはこのことだろう。彼女は顔に冷や汗を浮かばせながら、執務室の扉をヴァンパイアごと蹴破り、走り去っていった。
尚、彼女の全力で蹴られたヴァンパイアが瀕死になったのは言うまでもない。
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