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いや、してるじゃん

今日から更新を再開します。

 

 先程の騒々しい攻撃はなんだったのかと思うほど、戦場は静かだった。


 クローカは大型のスナイパーライフルを構え、レイが出てくるのを待っていた。それもそのはず、クローカはレイから距離をとったはいいものの、先程と同じようにレイを見失っていた。


 これでまた見つけられなかったら本末転倒である。

 しかし、確実にレイの認識外へ出られたはずなので、もう見つかる可能性は低い。

 このまま隠密行動を続け、レイが出てくる時がクローカにとっての好機。

 その瞬間を狙ってあの澄ました顔面に自慢の12.7ミリメートルの弾丸をぶち込んでやるのだ。


 そして……


「私は誘拐なんてしてなぁぁぁぁい!!!!!」


 そう叫んだ。


 ……いや、してるじゃん。

 同意の上とはいえ、誘拐は誘拐なのだが。それでここまで神域が破壊されては始祖神を始め、神使達はたまったものではない。


 それでも、一割半ほど破壊されているのに対して、もう一割も修復されているのだから、素晴らしき再生力である。


「叫ぶな馬鹿かお前は。あと、一応ここは魔法と冥法と霊法と天法で成り立っているんだから現代兵器を持ち出すんじゃない。」


 不意に背後から声が聞こえた。

 その声は勿論、只今絶賛喧嘩中のレイである。当然だろう。あんな大声で叫べば位置の割り出しなど簡単だ。


 不意を突かれたクローカはその場から数十メートル先に吹き飛ばされた。その衝撃で後ろの森林が跡形もなく破壊される。なんという馬鹿力だろうか。


 咄嗟に受け身を取ったが、勿論これだけで終わるはずがない。連続で鳩尾に拳を入れられ、肋骨が何本か折れる。

 極めつけには踵落としをくらい、地面に打ちつけられたクローカは立ち上がると思い切り吐血する。

 折れた肋骨が肺に刺さったようだ。


 だが、これで終わるわけにはいかない。

 ここで終わると言うことは即ち敗北を意味する。プライドが高いクローカにとってそれはとんでもない屈辱だ。


 現在クローカとレイは三十メートルほど離れている。

 レイの身体の損傷はクローカの身体の損傷よりは軽い。先程とは打って変わって現在はレイの方が優勢だ。


 もはやこれ以上長引かせるとクローカは身が持たないだろう。短期決戦で相手を一撃で屠るしかない。


 では、どうやってレイの懐に入るか。

 それが一番の問題である。一撃で屠るのならば、自身の最大威力の全てを一撃に乗せなければいけない。


 レイが油断をしてその隙に懐に飛び込めればいいが、現実はそう甘くない。クローカとは違い、レイは戦いの間に隙を見せるという愚行はしない。


 ならば一撃で屠るのは辞めだ。短期決戦で終わらせるのは変わりないが、未来予知を上回る速度で打撃を叩きつければいいだけである。


 幸い速度と打撃の強さはクローカの方が上。

 ついでに先程の仕返しとして鳩尾に多めに叩き込み、助骨を自分が折られた本数よりも多く折り、肺に助骨が突き刺さった時に自分よりもっと多く血が出ればいい。


 そう思い、クローカは心の中で握り拳をつくる。

 刹那…


「ガッ!」


 レイは口と腹部から血を流した。明らかにやり過ぎである。

 クローカは瞬き一回にも満たない間に実に数百ほどの打撃をレイに叩き込んだのだ。もう一度言おう、やり過ぎである。


 助骨は折れる所か粉砕し、鳩尾は貫通はしていないもののクローカの手が体内に入り込んでいる。


 ゴポリゴポリと普段普通に生活していれば聞くことがないだろう音が腹部から聞こえる。

 これでも意識を失わないのだから恐るるべき生命力である。

 だが、痛くないわけではない。むしろ、痛くない方がおかしい。苦痛は顔に滲み出ている。腹部から出てくる血は止まる気配を見せず、むしろ酷くなっていく一方だ。


 レイは絶対絶命の危機である。

 ここで降参しなければ、クローカは何度でも打撃を叩き込んで来るだろう。さすがにそれを耐えきれる自信はない。


 いや、流石にそこまではしないだろう。普通はそう思うかもしれない。

 だが、クローカはやる。忘れているかもしれないが、彼女は魔王だ。外見は金髪碧眼と一見天使の様だが、中身は全くの別物である。


 血を好み、人類の負の感情を好み、そして何よりも強い復讐心と憎悪を愛するのが彼女の本質である。

 ぶっちゃけ、彼女がアネルをメイドにしたのはエルフという種族への興味と人類にしては高い魔力、そして何より溢れんばかりの復讐心と憎悪に惹かれたからである。


 最初は彼女の高い魔力を認め、自分の眷属である悪魔に喰わせようと考えていた。彼女が彼処までの高い復讐心と憎悪を持っていなかったら、彼女はとっくにこの世にいないだろう。


 そして、アネルの復讐心と憎悪が完璧に無くなり、その時に彼女がクローカにとってなくすのが惜しいと思われるような人材になっていないと、問答無用で消されることはクローカをよく知る関係のレイやエレンから見れば火を見るより明らかだ。


 レイがクローカを非難したのは、そうなる可能性がゼロではないのにまだ前途ある人界の逸材を本人の同意の上とはいえ連れてきたことに対するものである。


 それで物理的な喧嘩に走るのは短慮すぎるとは思うが、クローカ相手に話し合いで解決しろと言っても無理だろう。だから最初からクローカを挑発し、無駄な時間を潰した。口喧嘩となると口調が悪くなるのは仕様である。普段からああなわけでは決してない。


 さて、この危機をレイはどうやって乗り越えるつもりなのだろうか。

 降参するならばそれはそれでよし、無駄な血が流れるのは防げる。戦いを続けるのだったら余計に血が流れるだけである。




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