この件に関してだけはあの馬鹿殿下に感謝するわ
しばらくの間、父様達と談笑─という名の作戦会議─をしてたんだけど、それは私の所にディアマス殿下が来たことで終わった。
会話を遮られたことに対しての怒りはない。むしろ、今現在の私のテンションはうなぎ登りだ。
「この度は愚弟が大変申し訳ないことをした。本当にすまない。」
「いえ、殿下が謝罪をすることではございません。そして、私の個人的な呪いはもう掛けているので。」
そう言うと、ディアマス殿下は苦笑し、次に兄様に話しかけた。
リズ嬢!見て!目が幸せになるよ!もうネール嬢と睨み合いしなくていいから!
あと、ネール嬢!君はどれだけ王城に輿入れしたいんだい!?ディアマス殿下と私が話してる度に睨んでくるけど、多分ディアマス殿下が私に話しかけてくれるのはあの馬鹿殿下と兄様がいるからだから!
私単体なら多分話しかけてくれることなんてないよ!
うん、この件に関してだけはあの馬鹿殿下に感謝するわ。
そんなこんなでディアマス殿下も一緒に談笑してたんだけど、そこに乱入者が。思わず顔を顰めてしまう。……しょうがないよね。せっかく楽しく話してたのに、邪魔が入ったんだもん。
乱入者はだいたい予想がついてたけど、マオリーヴ子爵とその夫人。二人は顔を真っ青にして、土下座する勢いで頭を下げた。
「アイリーン公爵令嬢!此度の娘の非礼、私の命に懸け償います。大変申し訳ありません!」
「どうか、領民にはご慈悲を!」
……なんでこんな常識的な両親がいるのにアリア嬢は馬鹿に育っちゃったんだろうね。
私の中での七不思議の一つに、他の親族は常識的なのに一人だけどうしようもなく馬鹿っていうのを追加しようかな。
「アリア嬢のした事を子爵達に謝られても困ります。貴方達は何も悪くないのですから。どうか、頭を上げてください。」
そう言うと、ですが…と二人は渋る。
とりあえず、頭を上げようぜ子爵。なんか、私が悪者みたいに見えるからさ。別に、私の個人的な呪いはもう殿下のとは別にアリア嬢にかかってるから。
そして、いくら娘とはいえ、その人の責任を他の人におわせるほど私は鬼畜じゃない。
まず、領民が領主の、それもそのお嬢様のせいでなんの罪もないのに破滅するなんて怖すぎだろ。
うん、まあ、その後は自主規制して頭を上げてもらったんだけど、なんかどっと疲れた。まだ断罪式始まってすらないのに。
………
「今現在より、平民ストルフと平民アリアの断罪を始める!」
そう高らかに宣言したのはこの国の王であり、今回断罪されるストルフの父、ガリウス・レティアンである。
息子を断罪するのは、心苦しいだろうが、仕方ない。ストルフは取り返しのつかない事をしたのだ。
普通の公爵令嬢ならば、まだ救いようはあった。だが、よりにもよって、その公爵令嬢は霊王だったのである。自然の管理者である霊王を貶めるなど霊界では極刑に値する。
ストルフやアリアが彼女にした事を聞いた霊界の者は死なせないなど、罪が軽すぎると文句を言っていたようだが、断罪については霊王も一枚噛んでいるため、どうしようもない。
「罪名は霊王侮辱罪。二人は不貞をし、霊王であるローゼ・フォン・アイリーン公爵令嬢を貶めた。よって、二人は平民に下賜、国外追放とし、断種と不妊の刑とする。」
国王のその言葉と同時に、二人に魔法がかかり、堕落紋が二人の腕に刻み込まれた。
堕落紋とは、深い罪を犯した者には刻まれる深い紋章である。人界にある、あらゆる浄化術でも決して消せる事がなく、可能性があるのは上位天法である。だが、この世界に天法はなく、実質二度と消えないと言っても過言ではない。
アリアはもう嫁の貰い手がいなくなったと言っても過言ではないだろう。仮に、二人が仕事を得ようとしてもこの紋章の事がバレれば雇ってくれる所などないに等しいことを、学園に通ったことのある者なら絶対に知っている。
レイはこの堕落紋を「もう二度と子供が産めないだけ」と楽観視していたが、この紋章の本当の意味を知ると「鬼畜か」と簡単に意見を変えるだろう。
しょうがない。彼女は自分の感情に正直なのだ。
「さようなら。平民のお二人。私は貴方達を許すことは未来永劫ありませんわ。」
レイが決別の言葉を吐き捨てて、あとは国外追放をするだけ。
そんな時、不意にアリアが動きだした。目は焦点が定まっておらず、身体は小刻みに震えている。
そして、彼女は少し大き目のナイフを取り出し、こう言った。
「あんたの…あんたのせいでぇぇぇ!!!」
そして、彼女はレイにナイフを………
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