第5話:金髪とスキンヘッドと村長
第5話
「本当に失礼しました。日本語が通じると思ってなかったものですから」
気を悪くしていない事を願いつつ、一番大事な質問をしてみた。
「あの?変なことを質問するのですが、ココは何県になるのでしょうか?」
あたしは、2人の反応を恐る恐る伺ってみた。
2人は、怪訝な顔をしていた。
(やだー、やっぱり、変な人だと思われているー。そりゃそうだよね。はは)
「ごめんね。ナニケンとはどういう意味なんだい?」
少しの沈黙のあと、スキンヘッドの男が口を開いた。
「えっえーと」
あたしは意外な返答にドキッとした。
(日本語が難しかったのかな?)
「この場所はどの都道府県になりますか?」
あたしは、もう一度分かりやすい日本語を意識してから、質問をしてみた。
「‥‥‥」
また沈黙が流れる。
「トドウフケンというものがよく分からないけど、この場所だったらエジシア王国領サランの村の端っこだよ」
今度は金髪の男が答えてくれた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「はぁ?」
あたしは、奇妙な状況に混乱していた。
(えっあたしからかわれてるの?)
混乱が収まらない私は理解の許容量がいっぱいになってしまう。
「エジシア?サラン?からかっているのなら、やめてください。あたしは、本当に困っていますから。お願いします」
からかわれているのなら、もう終わりにしてほしいという思いであたしは、懇願した。
しかし、2人は顔をまた見合わせて、肩をすくめてしまう。
「君がドコから来たのかは知らないが、ココは紛れもなくエジシア王国だよ」
金髪の男が困った顔をしながら、話しかけてきた。
この人たちは何を言っているのかさっぱり分からない。
おかしな人たちなのだろうか?
それとも‥
(あたしが、おかしいの?)
そう思った瞬間、あたしの足に震えが戻ってきた。
そして2人の、自称エジシア人は気の毒そうな顔であたしを見ていた。
「ここで立ち話しても仕方がない。とりあえず、村長ならなんか分かるかもしれないぜ。一緒に来ないか?俺はウィルス、こっちの金髪はポールって言うんだ」
しばらくの沈黙の後、ウィルスと名乗るスキンヘッドの男が口を開いた。
(怖い気もするけど‥)
「おっお願いします」
あたしは少し迷ったが、ゆっくりと頷きながら答えた。
「それでは、案内しましょう」
ポールと呼ばれた金髪の男が優しく話しかけてくれた、
(もうどうにでもなれ!エジシアでもパティシエでも何でも来いだ)
しかし、あたしの感情ははっきり言ってヤケクソだった。
2人に案内されること15分くらい。
あたしの目の前には、村長の家と呼ばれる木造の建築物の前に居た。
「村長居るかい?」
スキンヘッドのウィルスが、ドアを開けながら尋ねた。
「何じゃ?せっかく昼寝しとったのに」
奥から老人の声が聞こえる。
「すまねぇ、こっちの女の子がちょっと訳ありそうなんだよ。相談に乗ってくれないかい?」
ウィルスは、手を合わせて老人に頭を下げた。
「女の子じゃと?」
しゃがれた声と共に村長と呼ばれた老人が出てきた。
「こりゃあ、また変わった格好をしとる娘じゃのう」
村長はあたしを物珍しそうに見る。
「ちょっと僕たちでは話が分からなかったので、村長さんなら何か分かると思って。さあ話してごらん」
金髪のポールがあたしに話を促してきた。
「実は‥」
あたしは、ココまで来た経緯を話した。
「ふーむ」
ほとんどの話しを終えた後、村長は首を捻って腕を組んでいた。
「おおっ、思い出した!」
5分くらい経った後、村長は大声を上げた。
「ニホンという言葉はいつか聞いた事があったと思っとったんじゃが、タチバナ先生の生まれ育った国の名前がそんな感じじゃった。娘さん、あんたの見た目も先生によく似とる」
村長は手をポンと叩いて説明をしてくれた。
(タチバナ‥日本人の名前だ)
あたしの胸は少しだけ高鳴った。
「タチバナ先生というと、確か有名な探偵だったな」
ウィルスが口を開いた。
「確かにあの探偵さんなら、色んな事は知ってそうですね」
ポールも相づちを打つ。
「その、タチバナさんという人に会ってみたいです。どこにいらっしゃるのですか?」
あたしは、居ても立ってもいられなくなってきた。
「うーん、歩いて行くのはお前さんじゃ無理じゃのう。先生の居るハランの町に行くには、山を2つを越えなくてはならないからの」
村長は首を振りながら教えてくれた。
「それでは、何か交通機関はあるのですか?」
すかさず、あたしは質問をした。
「馬車が出とる。ここは田舎じゃで1番早いので今から10日後にな。しかし、金がかかるぞ。お主今の話じゃと文無しじゃろ?」
村長から辛辣な言葉が出る。
「そっそれは‥」
言葉が詰まってしまった。
「そこでじゃ、先生にはわしから先に紹介状を送っておくから、3日間ここでわしの手伝いをせぬか?そうしたら馬車のお金は建て替えてやるぞ」
(本当は3日も待ってられないけど‥)
選択の余地は無かった。
「お願いします」
あたしは、頭を下げながら腹を括った。
そして、このとき初めて、行方不明の父もこの奇妙な世界のドコかにいるかもしれないという予感が頭に過ぎった。
第6話へ続く




