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第3話:アルバムと写真と幼き記憶

第3話



本棚の奥からアルバムを取り出す。

こうやって開いて見るのは何年ぶりだろうか。


ゆっくりとページをめくってみると、どういう訳か、あたしは父がもうこの世に居ないような気がしてしまって目頭が熱くなってきた。


そんな不吉な考えを消そうと、次のページをまためくってみる。

12年前に両親と幼い私の3人で河原にキャンプに行った時の写真が目に入った。

みんな笑顔で、幸せそうだ。

次の写真は、

「あれっ?こんな写真見たことない」

当たり前だが、父は今よりずっと若い。

しかし違和感はそれじゃ無かった。

父はまるで、物語の中のお城をバックに中世の騎士のような鎧を着ていた。


「そんな趣味があったかしら」

独り言が出てしまう。


その時、突然ガツンと、あたしは酷い頭痛に襲われた。


「痛っ‥」


頭を抑えながら、写真を見つめる。


幼い日の記憶がビックリするくらい溢れてくる。


なぜ今まで忘れていたのだろうか?

写真の場所は‥

この大げさなお城は‥





「あたし‥は‥、ココに住んでいた?」


懐かしさと、怖さと、好奇心が入り混じった不思議な感覚になっていた。


そんなはずはない、だってあたしは‥普通に幼稚園に行って、小学校に行って、中学校も卒業して、今年から高校に入学して、平凡な毎日を送っていたんだから。


でも、その前は‥


今まで、小さい頃の記憶が無いことに違和感を感じたことはまるで無かった。

普通のことだと思っていたから‥


しかし、あたしが赤ちゃんの頃から2歳くらいの頃の話は不思議と父は何も語らなかった。

母のことを思い出すからと思っていた。

「そうじゃない」

あたしは、首を振りながら呟いた。


絶対に意味がある。

幼い日を過ごしたこの場所のことを忘れさせられていたことには、必ず意味がある。

そして、父が居なくなってしまったことにも繋がるかもしれない。


写真をもっとよく見たかったので、アルバムから取り出してみる。


コスプレをしているようにも見える父の顔は、真剣な表情だった。

そういえば、出かける前もこんな表情をしていたと思う。


「なんだろう?」


写真の裏にも文字のようなものが書かれていた。

「英語?でもないか」

日本語は、もちろんのことアルファベットにも見えない。

でも不思議なことに、見覚えはあった。

と言うより、あり得ない話なのだが、読めてしまった。


「ゴクッ」


読もうとしたのだが、どうしても躊躇して生唾を飲んでしまう。

この見慣れない言葉を発してしまえば、この世界の人間では無くなってしまうような、嫌な予感がしたからだ。

「馬鹿みたい。こんなの読んだって消えちゃう訳ないんだから」

少し自嘲気味に笑ってしまった。


ひと呼吸置いて、写真を眺めながら呟いた。


「ラウド_マカ_トム_ラウド‥」


「えっ何これ?」


突然、写真がとてつもない光で輝き出した。

まるで太陽のような、強烈な光に思わず目を背ける。

写真を持っている右手から光が体をドンドン侵食してくる。

首元から頭のてっぺんまで光に包み込まれた瞬間、あたしは体重が無くなった感覚になった。

そして、あたしの姿は父の書斎から消えていた。




第4話に続く




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