第24話:死神と復讐と約束の時間
第24話
「復讐ねぇ。意外とねちっこいところあるじゃないか」
立花は余裕そうに話していたが額からは汗が出ていた。
「うん。僕もビックリしてますよ。ジンさんのおかげで新しい一面が次々と発見出来ました」
平田は微笑みながら話していた。
「まさか、こんなに目立つ場所でやり合ったりしないだろう。君の流儀に反するし」
立花は後ずさりしながら言った。
「そうですね。目立たず綺麗に殺すことが僕の芸術でしたから。でも‥」
突然、空気が張り詰める。
「もう芸術家はやめました‥」
平田は目を大きく開けた。
その瞬間‥
「ぐわぁっ」
立花の身体は吹き込んで壁を突き破り外まで飛ばされた。
「【死神芸術家】改めただの【死神】フィリップ=デロンと申します。お嬢さん」
平田改めフィリップは、あたしにゆっくり近づいた。
「立花さん?えっ」
あたしは怖くて一歩も動けなかった。
「さあて、君を殺したら彼はどんな表情になるでしょうか?」
フィリップの手があたしの顔に触れそうになった時、
「涼子様ぁ!」
ニーナが猛スピードでフィリップに拳をぶつける。
フィリップは店の外まで吹き飛ばされる。
「涼子様、ご無事ですか?私は護衛として失格ですわ」
ニーナは泣きそうな顔であたしの身を案じた。
「あたしは大丈夫。でも立花さんが‥」
あたしは立花の飛ばされた方向を向く。
「先生はあちらですの?」
ニーナはあたしを抱いて、店の外へ飛び出した。
外に行くと立花は倒れていた。
「先生、しっかりしてください。起きてくださいまし」
ニーナが声をかけると立花はよろめきながらも立ち上がる。
「やれやれ、厄介な人になっちゃったよ彼。昔はもう少し紳士的だったんだけどねぇ」
立花は膝の埃を叩きながら言った。
「でもニーナさんが倒してくれました」
あたしがそう言っても二人とも厳しい顔をしていた。
「涼子様、申し訳ありませんが倒せていません。それどころか彼は全くダメージも受けてませんわ」
ニーナは淡々と話す。
「そうだねぇ。我々の選択肢は上手く逃げるしかないだろう」
立花がそう言った瞬間‥
「それはツマラナイ選択肢ですね。ジンさんの【思考力】落ちたのではないですか。だとしたら、残念です」
フィリップが突然目の前に現れた。それも宙に浮きながらである。
「ニーナくん私は2分だけ時間を稼ぐ、その間に涼子くんと逃げなさい」
立花はニーナに支持を出す。
「しょっ承知いたしましたわ。涼子様よく掴まってくださいまし」
ニーナはあたしを再び抱えて、ジャンプする。
「僕を足止めですか?非力な貴方が?冗談のセンスは落ちていないですね」
フィリップは余裕な表情だ。
「冗談が面白かったら笑いたまえ、それが大人のマナーだよ」
立花はコートを脱ぎながら言った。
「また吹き飛ばされますか?今度は2倍の力で行きますよ」
フィリップが目を見開いた瞬間、コートが2人の間に入り、逆にフィリップが吹き飛んだ。
「自分の力の過信が君の弱点だよねぇ。私だって自分の身を守る方法くらい考えるさ」
コートを拾いながら立花は言った。
「驚きましたよ」
瓦礫の中からフィリップが出てきた。
「流石に自分の技ではダメージ無しか。驚かせるくらいしか出来ないとは」
立花は残念そうな表情をした。
「驚いたのはそれじゃありません。そんな子供騙しで僕の足止めが出来ると思っている浅はかさです」
フィリップはそう言った瞬間、姿を消した。
「終わりです」
立花の背後に姿を出したフィリップはそう言い放った。
「ドドーンッ」
爆発音と共に煙が上がる。
「全く、相変わらず小賢しいですね」
フィリップは舌打ちをした。
「はぁはぁ、君の瞬間移動も結構パターン化しているからねぇ」
立花は息を切らせながら話していた。
「しかしそれで、あと1分以上持ちますか?」
フィリップの顔は余裕の表情に戻る。
「何とか努力するよ。君にも出来るだけ協力して欲しいけどね」
立花はニコリと笑った。
「なるほど、まだ幾つか小細工がありそうですね。貴方ごときにこんな技も勿体無いのですが‥」
フィリップは片手に力を込める。
「呪縛光弾‥」
フィリップが手をかざすと、立花は光の球体の中に閉じ込められた。
「この球体が貴方の体を完全に拘束しました。これで、生殺与奪は僕しだいになりますね」
フィリップは、勝ち誇った顔をしていた。
「しかし、このまま殺しただけでは気が収まりません。1つ賭けをしませんか?」
フィリップは立花に話しかけるが、返事はない。
「そういえば口も動かせないのでしたっけ。失礼しました。賭けというのは涼子さんの命です。今から24時間後に僕は彼女を殺します」
フィリップがそう言うと、立花の顔色が変わった。
「そんな顔も出来るじゃないですか。嬉しく思いますよ。涼子さんの命が守れたら貴方の勝ちです。それでは開始しましょう」
言い残して、フィリップは消えてしまった。
「立花さん、大丈夫かなあ」
あたしは、不安そうな声を出した。
「先生なら大丈夫ですわ。きっと後で追いつきます」
ニーナはそう言っていたが顔色は悪かった。
「ニーナくん待たせてすまないねぇ」
後ろから、声がする。
「先生、無事でしたの?」
ニーナが振り向くと、そこには真っ黒の服を来た男が立っていた。
「どうですか?中々似てませんか?」
フィリップは笑いながら、宙に浮いていた。
「先生は、どういたしましたの?」
ニーナは絶叫に近い声を出して聞いた。
「僕は死神ですから‥後はわかるでしょ」
フィリップがそう言い切る前に、
「うわあああ、絶対に許しませんですわ」
ニーナが剣を抜いて斬りかかる。
「貴女はジンさんよりも力は強いけど、単純すぎる」
フィリップは姿を消しながらセリフを吐く。
ニーナの剣は空を切り、フィリップの繰り出した衝撃波に飲まれて吹き飛ばされた。
「さあ、一緒に行きましょうか。お嬢さん」
フィリップは笑いながら、あたしの顔に手で触れると、あたしの意識は無くなってしまった。
約束の時間まで後‥23時間55分
第25話に続く




