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第17話:犯人とテーブルとナイフ

第17話





「私が犯人というのですか?冗談はやめてください。不愉快です」

ケイトは立花に反論した。


「冗談は、好きなのですがねぇ。今回は残念ながら真面目に話をしています。あなたが犯人だと断言しています」

立花はゆっくりとケイトに近づきながら宣言する。


「名探偵と聞いていましたので、もっと頭の良い方だと思っていました。確かに、シェフだから、料理に毒物を混ぜることは可能だと思われたかもしれませんが、今、私は一身上の都合でお休みを頂いています。そうですよね、スタンレーさん」

ケイトは犯人扱いされたにも関わらず、冷静に話していた。


「ケイトの言っていることは本当だ。こんなにお腹の大きいのに働かせる理由には、いかないからな」

スタンレーは同調する。


「もちろん、私は料理に毒物が入っていたとは思ってません。ノーマン氏は、シャンパンから毒物を摂取したのですから」

立花は説明する。


「何を言っているのですか?シャンパンは2つとも毒が入ってなかったと、あなたが証明したじゃないですか」

ケイトは怒りを抑えた表情で言った。


「最初から説明する必要がありますねぇ。そもそも、この会場にノーマン氏は3本のシャンパンを持ってきました。その内の2本は無害なもの、そして最後の1本は毒入り」

立花が指を1本立てて推理を始めた。


「そもそも、ノーマン氏はクラウドさんを殺すためにシャンパンを持ってきたと思われます」

立花の言葉にクラウドは驚く。


「そんなバカな‥」

落ち着きかけたクラウドはまた愕然としていた。


「まあそれは良いのですが‥」


(良くないよ〜立花さん)

あたしは心の中でツッコむ。


「確実にクラウドさんを殺して証拠も隠滅したい。ノーマン氏はケイトさんに協力を強要します。おそらく何か脅迫するネタでもあったのでしょうねぇ」

立花が推理を展開していくにつれてケイトの顔色が段々と青白くなったように見えた。


「しかし、ケイトさんはクラウドさんには全く恨みはない。逆にこの状況を利用してノーマン氏の殺害計画を思いつきます。まずはクラウドさんにメモを渡してシャンパンを飲まないように牽制しました」

立花が先程のメモを取り出した。


「中々飲まないクラウドさんに、イライラしたノーマン氏は自分のシャンパンをグラスに注ぎ飲み始めました。そのシャンパンの瓶の中に毒が入っているとも知らずにねぇ」

立花の推理は更に続いた。


「まあ、ノーマン氏のその後は知ってのとおりだけど、問題は毒入りのシャンパンの瓶だ。誰かが間違って飲んだり、調べられたら大変ですからねぇ。ここで3本目のシャンパンを騒ぎに乗じて毒入りシャンパンとすり替えた」

推理を語る立花の顔をケイトはずっと睨んでいる。


「つまりケイトさん、あなたは見事に2度のすり替えを行った。最初はノーマン氏とクラウドさんのシャンパン。次は毒入りシャンパンと第3のシャンパン。ですからねぇ、まだ近くにあるはずなのですよ。あなたが隠した毒入りのシャンパンが‥」

ここまで立花が話すと、ケイトはテーブルを叩いた。


「でしたら、この部屋を隅々まで探せばいいでしょ。勝手にしてください」

ケイトは、今までで1番大きな声を出した。


「その必要はありませんねぇ。毒入りのシャンパンの場所はもうわかっていますよ。そろそろ自白されることをオススメします」

立花の見透かしたような視線にケイトは目をそらす。


「ハッタリだわ。あなたは名探偵ではなくペテン師ね」

ケイトの口調が段々乱暴になる。


「あまり気が進まないんだけどねぇ。どうしても自白はしないのですかな?」

立花はもう一度質問した。


「知らないものは、知らないわ。いい加減にして」

ケイトは相変わらず激昂していた。


「仕方ないねぇ。ニーナくん」

立花はニーナの方を向いた。


「承知いたしましたわ。先生、信じてますわよ」

ニーナは神妙な顔をしていた。


そして、テーブルにおいてあったナイフを手に取り。



【一閃】



ケイトのお腹は真っ二つに切れたのだ。


「ミスタータチバナ何をやっているんだ!」

スタンレーが叫び出す。


「ケイト、あんたその体は‥」

最初に違和感に気が付いたのはフィリアだった。


そしてあたしも気が付いた。

切れたはずのお腹からは血は一切出ず。中からはシャンパンの瓶がゴトリと落ちたのであった。


ケイトは絶望に満ちた表情で力なく立っていた。



第18話に続く












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