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第16話:絶叫と拘束と宣言

第16話







立花は【あの人】達の集まっている場所に戻っていった。

「いやあ皆さんお引き止めして申し訳ありません。まだ、憲兵隊は来ていませんが我々がここから出られる時間の目処が立ちそうです」

立花の声は自信に溢れていた。


「どういうことかね?ミスタータチバナ」

スタンレーは聞き返す。


「この凄惨な殺人事件の犯人以外は、少し事情聴取すればすぐに帰れるということですよ」

立花は髭を触りながら語った。


「まさか、もう犯人を特定したと言うか?しかし、あの無差別殺人の犯人をどうやって?」

スタンレーは驚いていた。


「んー、先ず最初に申し上げるのは、あれは完全にノーマン氏ひとりを狙った犯罪だということですねぇ」

立花はスタンレーのセリフを否定した。


「だが、彼の持参したシャンパンには毒は入ってなかったのだろう」

スタンレーは反論する。


「そうなんですよ。ところで私は死体についてかなり詳しく観察することで、毒殺されたという結論に至りました。しかしですねぇ、一人だけ最初からノーマン氏が毒によって殺されたと見抜いていた方がいるのです」

立花は、だんだん興奮気味で話している。


「それは、クラウドさん。貴方です」

立花はゆっくりとクラウドを指差した。


「ちょっと待ってくれよ。俺はそんなこと見抜いてなんかないぜ!」

クラウドは大声で否定した。


「いいえ、最初にはっきりとおっしゃいました。【どうして、お前が毒殺されなきゃいけないんだ?】と。いやあ不思議でしたよ。まだ、殺されたことすら分からなかったのですから」

立花は腕を組むようなポーズをした。


「そんなこと言った覚えはない」

クラウドは泣きそうな顔で言った。


「あら、私も近くに居たけど言っていたのは聞いてたわよ」

フィリアが援護射撃する。


「そういえば、言っとったの」

スタンレーも続ける。


「わかった。確かに言ったかもしれない。でも俺じゃねぇ信じてくれ」

クラウドは青ざめていた。


「クラウドくん。残念だよ、君が人を殺すだなんて‥。おい!早く拘束せんか」

スタンレーは部下に命じる。


「本当だ、俺は殺してなんていない。何でもする信じてくれー」

クラウドは絶叫した。


「はい、ストップ。無実の人を拘束までするのはいただけませんねぇ」

立花は拘束しようとした、スタンレーの部下を止めた。


「ミスタータチバナ、君が彼を犯人だと言ったんじゃないか。どうして止める?」

スタンレーは憮然として、質問した。


「いいえ、私は一言も彼を犯人だと言っておりません。なぜ、彼が毒殺を最初に見抜いたのか疑問に思っただけです」

立花はまたまた髭を触りだした。


「それは、彼が犯人だからだろう」

スタンレーは、言った。


「まあ、犯人ならもう少し発言に気を付けるはずです。確かに、おっちょこちょいの犯人が語るに落ちたという可能性もあります。しかし、ノーマン氏を狙っていたのだとしたら、【どうして、お前が‥】というような言い方はしないでしょう」

立花は片目を閉じてクラウド犯人説を否定した。


「クラウドさん、貴方は何か隠していますねぇ。貴方の無実は私が保証しますのでそれを教えてくれませんか?」

立花はクラウドに、優しく尋ねた。


「この会場に来たとき、ポケットに入れた覚えのない紙が入っていたんだ。それにはこう書かれていた【お前は今日毒殺される。何も食べるな飲むな】と‥。こんなことを後から言ったら疑われると思ったから黙っていたんだ。ほらっこの紙だ。」

クラウドはポケットから紙を渡す。


「ふむふむ、やっぱり‥」

立花は、知っていたような口ぶりをした。


「納得しました。貴方が、なぜ何もパーティーで食べなかったのか、最初に毒殺という言葉を吐いたのか」

立花は、メモを大事に保存しようと袋に入れる。


「しかし、そもそもの話に戻るが、ガルシアくんだけを狙って毒殺するだなんてそんな芸当出来るのかね?」

スタンレーは疑問を出した。


「ありますねぇ、ノーマン氏を確実に狙って殺した上で、凶器の毒物を煙のように消す方法が‥」

立花は楽しそうな、表情だった。


「しかも、それを実行出来るのはこの中で一人だけです」

ゆっくりと、立花は【あの人】の前に立つ。


「犯人はあなたですねぇ。ケイト=マハラさん」

立花がケイトに向かって、そう宣言した。

ケイトの目が今までとは、別人のように冷たい目をしていたことに、あたしは気づいた。


長い夜が終焉へ加速していた。



第17話へ続く






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