第11話:ドラゴンと炎と黄金の暴風雨
第11話
「お待たせして、申し訳ありませんですわ」
ニーナと合流した、あたし達は国境を越える手続きへ進む。
(結局護衛の人は居ないけど、どうするのかなあ)
あたしは、そわそわ辺りを見渡しててた。
「それじゃあ、少し徒歩の旅になるけど、怪我しないように気を付けようね」
立花は、平気な顔をして国境の出口へ向かった。
(もしかしたら、モンスターが出るとか立花さんのイジワルから出た嘘かもしれない)
そう願ってあたしもニーナと共に、国境を出た。
「このペースならまあ、夜までには宿場町につくかな」
歩きながら、立花は呟く。
「モンスターなんて居ないじゃないですか」
あたしは立花にそう、話しかけようとした時…
「グォオオオン!」
地面が揺れる程の激しい咆哮が聞こえた。
「えっ、まさか…本当に…」
あたしは恐怖で言葉を失った。
目の前にはジュラシックパークで見たような恐竜に似た巨大な生き物が立ち塞がった。
5メートル位はありそうだ。
「ありゃあ。かなり大型のドラゴンだねぇ。しかも…3匹も居るじゃない」
立花は冷静にドラゴンを見つめていた。
一番大きなドラゴンは大きく口を開けると、炎を吐き出してきた。
目の前の燃えさかえる炎を見て、あたしは死を覚悟した。
(多分火傷するくらいじゃ済まないんだろうなあ)
あたしは、怖くて目をつぶる。
しかし、いつまで経っても炎はあたしに届かなかった。
「あれっ?」
目をおそるおそる開けてみると、ニーナがドラゴンの前に立ちはだかっていた。
さっきまでさしていた日傘で炎を止めている。
「涼子様、ここは私にお任せ下さいまし」
ニーナは、笑顔であたしの方を向いて話しかけた。
「そんな、ニーナさん危険です。」
あたしは震える声を絞り出した。
「心配しなさんな涼子くん。彼女は探偵助手としては、まだまだ修業が足りないが…」
立花はあたしの肩を抱いて言った。
「護衛としては、超一流なのだよ」
ニーナが日傘をひと振りすると、不思議な光を放つ剣に変化した。
「ドラゴンさん、いきますわよ」
剣を構えた瞬間あたしの視界からニーナは消えた。
「えっ。どうなっているの?」
それはまるで、金色の風だった。
ビュンビュンと音を立て、金色の風がドラゴンを横切る。
そして次にニーナの姿が目の前に現れた時…
バタバタと3匹の巨大なドラゴンが血飛沫をあげて倒れていた。
信じられない光景にあたしはポカーンと口を開けっ放しになってしまった。
「相変わらず見事だねぇ」
立花は手を叩いて、ニーナを労った。
「ニーナさんって、こんなに強かったんですね」
あたしは、衝撃の映像がまだ信じられなかった。
「涼子様、はしたないところを見せてしまって恥ずかしいですわ」
ニーナは頬赤らめて、答えた。
「そんなこと無いですよ!すごーく格好良かったです」
あたしは素直な感動を伝えた。
「ニーナくんは、特異体質なんだ。膨大な魔力が身体中を駆け巡っていてねぇ、それを身体能力の強化に使っているんだ。体が金色に光って、目にも止まらないスピードで敵を殲滅するその姿は、黄金の暴風雨とかつて呼ばれていたんだよ」
立花が説明してくれる。
(あの変なアダ名はニーナさんだったのかあ)
あたしは変なアダ名と思ったことを後悔した。
「先生、余計な話までしないで下さいまし。私、その通り名は嫌いですわ。もっと可愛いかったら良かったですのに」
ニーナは頬を膨らませる。
「ははっ失敬。まあ、彼女にかかれば大抵のモンスターは相手にならないかな。私たちを守りながらでもねぇ」
立花の言ったことは、本当だった。
次々と、襲ってくるモンスターをニーナはまるで花でも摘むように一蹴していったのだ。
「立花さんって、将来絶対に尻に敷かれますね」
あたしは小声で呟いた。
「おっ、あそこが宿場町だねぇ」
立花は聞こえないふりをして指をさした。
こうして衝撃の光景を目に焼き付けて、旅の1日目は幕を閉じた。
第12話に続く




