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「いてて...」
そう言って頭を触ると何かヌルッとした感触があった。嫌な気分になりながらも手のひらを見てみる。
血だ。
一体何をしていたのか、状況を把握しようとあたりを見回す。
見たこともない場所。浜辺のようだ。少し遠くの海がどす黒い。
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思い出した。
船が沈んだ。仕事の疲れを癒そうと客船で優雅な休日を過ごそうとしていたのだった。
周りには誰もいない...?
「少しあたりを探してみるか...」
しかし、誰もいる気配がしない。
それに少しあたりが暗くなってきた。今日は寝床と食料の確保が必要だ。
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「山に来てみたが、良さそうな材料がいっぱいだな。ただ、どの木にも食料が全くなってない。」
1人だが孤独を紛らわすために1人で喋り続ける。
そうしてひたすら枝や葉を集めた。
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寝床が完成した。
今日はもう暗い。明日に備えて寝るのが賢明だろう。
「おやすみ...」
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ガサッ
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ガサガサッ
「...なんの音だ?」
人の歩くような音が聞こえる。生存者か、有人島か、歓喜して音の方向を見た。
しかしそこにあったものは、異形。そして絶望。
わずか100m先。あたりが暗いせいかこちらには気づいていない。
黒い影が足をずり、手はだれている。
必死に息を殺す。
消えただろうか...?
異形が見えなくなるまでおそらく3分。その3分は1時間にも2時間にも感じられた。
「早くここから出なければ」