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喫茶サバトラの雑記帳  作者: 無月
猫と紅茶
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【猫と紅茶】第1話

 パイプを燻らせながら僕は紅茶を入れる準備を始める。茶葉を保管している棚の前にしゃがみこんでゆっくり選ぶこの時間が僕は大好きなんだ。

「今日は…記念日だから、ラプサンスーチョンにしよう。」

 英国では晴れの日に好まれて飲まれている紅茶だが、あまりメジャーでもない。人によっては正露丸みたいな味がするという人もいる。分からなくはないけど同意はしかねるかな。

 パイプの火も消え始め、殆どの葉が灰になっている。まだ味わえるが火を付け直す程ではないし、そろそろ換気をしないとせっかくの紅茶が楽しめない。

 僕は灰皿の上に灰を掻き出してから窓を開け、空気清浄機を最大にした。パイプが冷めるまでの間に紅茶を入れてしまおう。


 やかんに汲みたての水を入れ、火にかけ沸騰させる。5円玉くらいの泡がコポコポと出てきたら、先にティーポットとカップを温めるためにお湯を注ぐ。温まったらお湯を捨て、ティーポットに茶葉を1人分より少し多めに入れる。そこに沸騰したてのお湯を1人分いれすぐに蓋をする。ティーコジーを被せ3分くらい待つ。記憶喪失になっても紅茶は美味しく入れられるんじゃないかというくらい身体に染み付いているから一つ一つ確認しなくても良いのだが、ついつい確認してしまう。


 その間に何か食べるものを用意しよう。冷蔵庫にスモークチーズがあったはずだからそれを取り出した。

 そうこうしている内に3分経った。ティーカップに最後の一滴まで注いだら完成だ。


 香りを十分味わってから一口含む。この瞬間が僕はたまらなく好きなんだ。独特の強い香りからは想像出来ないようなまろやかな味。

 「はぁ〜やっぱり美味しい」

 このスモーキーな香りと風味は味の濃い食べ物によく合うから、アフタヌーンティーによく使われる。スモークチーズとも相性抜群だ。他にもしっかりと味のついたスモークサーモンや上海焼きそばなどの中華ともあう。

 この風味が苦手な人はレモンを絞ったり、砂糖をたっぷりと入れると美味しく飲めるだろう。香りが苦手なら他のフレーバーの茶葉に少量混ぜるだけでも楽しめる。


 ……と一人で堪能しながらパイプの掃除をしていると、飼い猫の紬希つむぎが寄ってきた。

 「どうした、むぎはこの香り苦手だったろう?」

 言い終わるや否や紬希は僕の頬を思いっきり引っ掻いてきた。どうやら『くさい』と文句を言いに来たようだ。そんな姿も可愛いが…

『ねぇ、正露丸臭いんだけど』

 「しゃっしゃべった!?!?」

 3年ほど一緒に生活してきたが、今まで一度も喋ったことがない。いや、そもそも猫は喋らないだろう。僕は夢でも見ているのか…??

『全部聞こえてるわよ!!』

 また引っ掻かれた。どうやらこれは夢ではないらしい。

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