表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鋼鉄の夢 穏やかな夢現

作者: からす

お酒は貴重品


「クロードさん、お酒をください」

いつも通りの、なんでもない日。昼飯の後、エーヴィヒに突然酒をねだられた。何を言っているんだこの幼女は、と思うがわけがわからないのはいつものことだった。

「金かパーツと引き換えだな」

パラパラと本をめくって暇をつぶす。

「ケチですね」

「タダほど高いものはないと言う。有料なのはまだ優しいだろう。ほら、ご主人様に尻尾振って小遣いもらってこい」

そして一人の時間を作ってゆっくりする。こいつが居ては一人遊びもできやしない。隙あらばシャワールームにまで突入しようとしてくるのだし、一瞬たりとも気を抜けない生活を強いられているのだ。

「代金は体で」

「食肉としてアンジーに売れば、酒代には充分だろうな」

問題はそれをする気になれないことか。解体には手間がかかるし、血で汚れるからガレージを洗わなきゃならない。

実に面倒だ。自殺して、次のエーヴィヒが来て、自分で自分を解体して後片付けまでしてくれるなら構わんが。いくら頭がいかれてても、そんな猟奇的で狂気的な所業はしたくないだろう。

「飲みたいのはここに居る私です。他の私が飲んでも意味がありません」

「じゃあスペアを一つ売ればいいだろ」

「嫌ですよ、自分の体を売るなんて」

呆れるほどワガママな主張だ。金は払わないけど酒を飲ませろなんて、通るわけがない。

「それに、体でというのはそちらの意味ではありません」

「鉄板を可愛がっても面白くないだろ。あと5年経ってから出直してこい」

「……無理なことを言わないでください。この体はケースの外では1年と持たないんですよ」

今知らされた衝撃の事実。正直どうでもいい。

「じゃあケースの中で5年待ってろ」

「その頃にはあなたが死んでそうですが」

「それもそうか……じゃあそろそろ話を戻すか。パーツか金か、どっちを出す」

「……パーツで。これはご主人様に怒られますね」

「怒られとけ」

怒られてここに来るのが嫌になってくれれば最高だ。怒られるのが嫌で戻りたくない、となる可能性もあるが、そっちは最悪だな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ