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メイドと魔法

「……死にたいのはどなたで?」


 馬車から姿を見せた私を見て馬車を取り囲むようにしていた輩がなにやら動揺しています。

 なにを動揺しているのでしょうか?

 しかし、てっきり傭兵崩れの輩かと思いましたがそうではないようですね。

 見た所それなりによい服を着ているようですし、周りの住民が怯えているところを見るとこの国の貴族かもしれませんね。


「この馬車は完全に囲んでんだととっと金目の物をだしな」

「あと女がいるなら抵抗しないなら助けてやるぜ?」


 下卑た笑みを浮かべながら色々と言ってくれますね。これが貴族ならばこの国の将来は暗いものです。虫酸が走ります。しかし、そんな想いは大きなため息を一つつくことで吐き出します。


「この馬車に指一本でも触れてみなさい。そんなことをしたら……」

「そんなことをしたらなんだってんだ?」


 馬車を囲むようにしている数は十人くらいでしょうか?

 その程度は数の内に入りません。


「生きてるのが辛くなるようなことをして差し上げます」

「へぇ、やってみぱぎゃぁ!」


 冗談だと思ったのでしょう。まずは挨拶代わりに手近なやつへと近づき顎の下から突き上げるように掌打をくれてあげます。もちろんそれなりに手加減はして差し上げてます。殺したら生き地獄が味わえませんからね?

 脳を揺さぶられて意識が飛んだのか糸の切れた人形のように力なく倒れこもうとしていました。

 そんな中、周りへとメイドアイをはしらせます。

 今の私の動きに反応して行動しようとしている人数を確認。数は三人。

 スカートを翻し当身を喰らわすべく駆けます。


「炎よ!」


 私がたどり着くよりも速く杖を振るい魔法が唱えられ幾つもの炎の塊が私に迫ってきます。

 本来、魔法とは唱え終わったならば必殺のものです。魔法を潰すためには同じように魔法をぶつけるしかありません。そしてそれはとても難しいことらしいです。

 そんな必殺でもある魔法が飛来する中、私は速度を落とすことなく駆けながら拳で私に当たりそうなものだけを殴り飛ばしていきます。私の拳に触れた魔法は消えるのではなく殴られた拍子に進む方向を変え、見当違いの方向へと飛んでいきます。


「バカな⁉︎ 魔法を殴るとかどれだけ非常識なんだ!」


 そんなこと言われても殴れたものは仕方ありません。というかドラゴンの皮で作られた皮膚に下級魔法など効くわけもありませんが。

 再び杖を振るって魔法を唱えようとしていますがそうはいきません。駆けながら地面に転がっている小石を幾つか拾い上げるとその勢いのまま下投げで小石を放ちます。


「ぎぃぃぃぃ⁉︎」

「ぎゃぁぁぁぁ!」

「ウバァ!」


 狙い違わず小石構えを取ろうとしていた三人に命中。うち一人は魔法を唱えようとしていた男の手に当たり貫通。痛みで詠唱どころではないようで血を流す手を抑えたために杖を落としています。痛みに慣れてないのが原因ですね。

 悲鳴を上げていようが関係ありません。隙を見せた男に近寄ると今度はお腹に向かって拳を突き出します。

 腕を痛がってた男に私の拳は腹になんなく突き刺さりいろいろと吐き出しながら飛んでいき壁へと激突しました。なんの防御の構えもしてませんが死にはしませんよね?

  ちょっぴり不安になりましたが駆ける合間に踊るようにして回転。再び地面の小石をたくさん拾い上げていきます。

 回転が終わった頃にはエプロンドレスの上にあるのは大量の小石です。


「秘技」

「な、何をする気だ……」


 そんなに怯えなくてもいいでしょうに。

 そんな怯えている方々に笑顔を振りまきながら私は再び回転します。


「メイド小石マシンガン(すとーんばれっと)!」


 私は地面を踏み砕き跳躍。

 エプロンドレスに溜め込んでいた小石を無造作に掴むと上空で体を捻り、空から馬車を囲むように布陣している不届き者どもにむかいそれなりに力を込めて投げつけていきます。普通の人間ならば回りながら石を当てるなどということはできないでしょうが私は機械人形オートマタ、それくらい楽勝なわけです。

  小石を私が投じるたびに悲鳴と血しぶきが上がり崩れて落ちていきます。ですが死ぬよな場所には当てていません。死んだら苦しめることができませんからね。

 小石を全て投じ終えた私は地面へと着地。パタパタとエプロンドレスをはたき小石の残骸や砂を払います。

 そしてとある方向へと向き直ります。


「う、うごくな!」


 そこには恐怖で顔を歪ませた貴族風の男と、その男に首筋にナイフを突きつけられているにも関わらず寝ている老執事の姿がありました。


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