メイドとマジカルリキッド
まさかの三話目
「リップス」
「はいご主人さま」
ご主人さまの麗しい声を聞きながら私は火を吹いた銃器の、いえご主人様の一歩前へ進みでる。
「防御します」
進み出て前に出すのは剣へと姿を変えている右腕。
私の呟きに答えるかのようにして剣になっていた右腕が透明な液体へとなり床へと滴り落ちると右手は元の普通の手へと戻りました。
こぼれ落ちた液体は特に変化もないまま床へ水溜りを作り上げていきますが私の腕からさらに液体はこぼれ落ち続けていきます。
「MIZNOー1型起動」
ある程度の量の液体が床に溜まると、私は短く起動呪文を口ずさみ唱える。
素早く走らされた私の起動呪文に反応し液体が振動、そして瞬時に私とご主人様の前には透明な壁が展開され、迫り来る凶弾の全てを防ぎ、弾き、周りに飛び散らしていく。子気味のいい音を鳴らしながら周りの廃材へと鉛玉はぶち込まれていき、弾かれた鉛玉によりいたるところに穴があいていきます。
「さすがミズノマテリアルの魔導液体は有能だね〜」
「はい、私のイメージした通りの形になってくれます」
ご主人様の知り合いであるミズノさまの作り上げた魔導液体には感謝しかありません。なにせこの魔導液体一つで撃つ、斬る、防ぐの三点セットが私の物になるのですから。
しかもこの魔導液体の有用な点は体の何処からでも出せるという事なんですから。
母様いわく人間の血液のように体を循環さしてなんやらかんやらといっていましたがよくわかりませんでした。
難点は使えば使うほどに私の胸が縮んでいくことでしょうか?
なにせ私の胸は全てが魔導液体の貯蔵タンクのようなものですからね。使えば使うほどに減ります。
ええ、物理的に胸が。
一度最後まで使い切ったことがありましたがそしたらメイド服がぶかぶかになりました。あれでは胸でご主人様を受け止められません。使うのは最低限にしておかないと。
「な、なんなんだてめえらは⁉︎」
はて? 弾を打ち終えたのかいたるところから私達に向けられていた銃口からは煙が上がっています。あと硝煙の香りと。これは帰ったら全部洗濯しなければいけませんね。
ご主人様の服もです。
全部脱がして…… ゲヘヘ
「リップス。次の仕事があるから手早くお願いね」
「はっ、わっかりましたぁ!」
危ない危ない。
トリップ仕掛けました。あ、リップスとトリップって似てませんか? どことなく感じる親近感!
いや、そんなことよりも仕事です。
社会のゴミはゴミ箱へ、売ったお金はご主人様の懐へ。
なんと素晴らしいエコ事業。
リップスはあまりのエコさに涙が出ます。魔導液体ですが。
「あ、ご主人様。生かしておいた方がいいんですよね?」
「なるべくね。無理はしなくてもいいいよ? でも撃ったり斬ったりするのなら脚にしといてね。売り物にならなくなるから」
「わっかりましたぁ」
ご主人様のゴミへの配慮に感激しながら壁を形成していた魔導液体にさらに起動呪文を流し込み、弾がなくなったらしき連中の前で壁が再び液体へと戻り音を立てながら水溜りを作り上げる。
「なにをやってる! 壁が消えたぞ! もう一度ぶち込め!」
不正解。
壁は消えたのではなく消したのだから。壁越しの攻撃ではろくにダメージを与えれませんから。
リップスの壁は非常に硬く、有用です。
ですからご主人様への多少のリスクがありますが壁を消し、攻撃することにしたのです。
「MIZNOー2起動」
ハゲの命令に慌てたように銃へと弾を込めようとしているゴミ共を眺めている間に私はというと膝をつき、右腕を水溜りへと接しながら再びは 起動呪文を唱えます。
すると水溜りが再び蠢き、私の右腕に纏わりつくと限りなく透明に近い液体は右腕の手首から先に透明な剣を作り挙げてしまいます。今回は一体化ではなく手首の上から刃が生えているような上体なのでちゃんと手があります。
「それでは味わいください」
武器の出来を一瞥して確認。
問題ないことを確認したのちにスカートの裾を持ち上げ礼儀正しくカテシーを行います。このためだけに手を残しておいたんですからね。
無論、淑女であるリップスは下品に下着が見えるところまで上げたりしません。どこぞの不良品メイドとは違うのですから。
「ぶっころせぇぇぇ!」
バリエーションがあまりなさそうな大声を上げながらハゲが再び号令を下します。
どうやら弾は込め終えたようです。
ですが遅い。
だってすでに斬りましたし。
『あぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎』
特に綺麗でもない野太く汚らしい悲鳴が廃墟ないに響きました。
見れば大の大人の方々が足を抑え嗚咽を漏らしなが泣いているようです。たわいない。
こうちょいっと?
動くのも面倒でしたし? 人間には見えないくらいの速さで剣を横薙ぎに振るっただけです。
ミズノマテリアルの魔導液体は私のイメージを読み取り、軽く斬れ味が最低限ある長距離を斬り裂けるほどの刃へと変わってくれたわけなのですからなんと楽な作業。もちろんご主人様のご命令通りに殺してはいません。ただ数時間後にはどうなってるかわかりませんが。
いやいやご主人様から離れるのはまずいと判断したまでなんですがね。
離れてたら流れ弾にでも当たられたら私は世界を半分くらいは壊す自信がある。
なぜ半分か? 多分半分か潰したくらいで動力が持ちそうな気がしないからです。あとミズノマテリアルの魔導液体も。
あれは消耗品ですからね使えば使うほどに不純物が混ざり使いにくくなりますから。今の斬撃でも血が混ざったので再びつかうのは不可能。
さすがに使用回数に制限がある武器で世界は潰せない。私、謙虚。
「相変わらずリップスの剣って見えないよねぇ」
「メイドですので」
「解答になってないよ」
私は真面目に答えたというのにケラケラとなにが楽しいのかわからないですが笑うご主人様。
ご主人様が楽しいのであればそれでよし!
「それでこちらのゴミはどうしましょう?」
命令通りに殺してないギャング団の皆さんを指差します。
人を指差してはいけない? いいえ、あれはギャング団です。
ゴミなら指差してもおーけーです。
「ああ、マルカロに連絡しておいたからそのままでいいよ。いい材料になるんじゃないかな? あ、あとトランクケースだけ回収しといてね。取引はされてないわけだし」
「了解しました」
ご主人様の命令を実行すべく私はスキップをするようにして崩れ落ちているゴミ共へと近づくと転がっているトランクケースを手に取ると踵を返します。
「お、お前らナニモンだ……」
おやおや、ゴミのくせに言葉を発するとはこれはレア物?
いや、まずはナニモンということに対して返答しなければ。
「メイドです」
にっこり笑顔のリップススマイル。
メイドというだけで全て解決してしまうほどです。
メイドって便利。
「化け物が!」
なぜか罵倒が飛んできました。
しかし、私も淑女の端くれ。そのような些細な罵倒笑って受け流しましょう。ええ、手は出しません。
「ぎゃぁぁぁぁぁ⁉︎」
ですので足を出すことにします。
あとご主人様の命令を守るために死なない箇所を攻撃しときます。具体的には手を。徹底的に踏み潰しておきます。色々折れる音が聞こえてきますがそれはそれ、悲鳴が良い音楽に聞こえる日がいつかはくるのかもしれません。
今の所は雑音でしかありませんが。
ひとしきり音楽を奏でたところで額をぬぐいますよ。別に汗なんてかいていませんがノリです。
「リップス帰るよ〜」
「はーい」
すでに廃墟の外に向かったらしいご主人様の声に素早く反応して私は返事をします。
ゴミの末路?
そんなのは考えるだけ時間の無駄というものです?
あしたは投稿しないよ!
月曜からするよ!