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メイドと廃墟

本日二話目になります

「いい天気だね〜」

「そうですね、ご主人様」


 のほほんとした雰囲気の掛け合いが響く昼下がり。

まあ、場所は埃臭い廃墟なんですが。

 一人は茶色の長髪を後ろで一括りにし、クリクリとした黒い瞳はを持つ高貴そうな雰囲気を醸し出す少年とも少女とも取れる子供、我がご主人様たるフルーティ様。

 片やその子供より僅かにだが歳が上に見える、こちらも輝かんばかりの金の髪のメイドたる私リップス。

 ご主人様の手にはまだ湯気の上がるティーカップがあり、それを楽しげに口に運んでいる。その姿を薄い赤みを帯びた瞳で眺めていた私はというとおそらくは恍惚とした貌をしているのでしょう。

 どう見ても私たち二人はいたって普通の貴族と従者の様子に見えたでしょう。この場(・・・)でなければ。

 しかし、現実にはこの場で見る私たち二人は異常です。なぜならば今、私たち二人がお茶を嗜んでいる場所というのが|鉛玉が飛び交う戦場である《・・・・・・・・・・・》からです。


「おら出てきやがれ武器商人!」

「今出てきたら奴隷にするくらいで勘弁してやるぞこらぁ!」


 品のない恐喝を繰り返し、手にした武器である銃を天に向け乱射するのは我らが住む街バーディアに巣食うギャング団の一つです。

名前? 知りません。なぜなら小悪党ですし。

 そんなギャング団になぜ追われているかというとそれはご主人様の商売のためです

 貴族然とした子供であるご主人様でありますがその正体は『売れるならば何でも売りますよ〜』がモットーの武器商人であり、今、ご主人様の命を狙ってきているギャング団の皆様は元お客様になります。


「いや〜 あなた方が勝手に契約を変えてきたからじゃないですか〜 ぼくはちゃんと契約通りの商品を持ってきましたよ」


 ため息をついているというのにご主人様の顔には未だに笑みが貼りついているわけですがまったく困ったように見えません

 武器商人たるご主人様、フルーティとギャング団の交わした契約。

 それは至って単純な売買契約です。いわゆる物々交換。


「こっちはかなり安くテロに使えるような魔法爆薬を提供しているのに それをさらに値引きしようとするんだもんなー」

「まったくです。私には価値がイマイチわかりませんがご主人様の決めた値段からさらに安値で買い叩こうとする根性は気にいりません」

「君のせいでもあるんだよリップス?」

「え?」


 交換の場所に選ばれた廃墟で待っていたご主人様の前に現れたギャング団は 先に商品を渡すことを要求してきたのでご主人様は笑顔で了承。

 ぶつの入ったトランクケースをギャング団の足元へ滑らすようにして渡したわけですが中身を確認し、私たちが子供と女であることに気を良くしたギャング団は笑顔で値引きを言い放ち、挙句の果てには武器をチラつかせてきたわけです。

つまりは脅迫。

 ご主人様へ武器を向けられたご、主人様大好すきたる私は瞬時に激昂。

腕を長剣へと変化・・さすとご主人様が止める間も無く閃かせギャング団の一人を肉塊へと変えてやると、ご主人様を脇に抱えるようにして背後の瓦礫の後ろへと跳躍し、瓦礫の後ろへと隠れます。

 そして斬られたギャング団との睨み合いという今の現状につながるわけです。


「ですがご主人様、あのままではご主人様が恐喝されていました」

「恐喝はもうされてたよ?それにまずは話し合いからだよ?」

「ですが……」

「リップス、死体は金にならないんだよ? まぁ、稀に金になる死体ってのもあるけど大概はタダ同然、価値なんかないからね。どうせならあんなゴミでも生かしてお金になるようにするべきさ」


 柔かに笑みを浮かべ、人を人扱いしないえげつないことをさらりと素敵に言い放ち、カップに入った紅茶を飲み干したご主人様はゆっくりと立ち上がります。


「ご主人様!」


 銃器を構えたギャング団の前に無防備に姿を見せるご主人様に慌てたように私も立ち上がり油断なく剣を構え、ご主人様を守るために前に出ます。


「なんだガキ? 今更命乞いか」

「命乞いではないけど質問があるんだよ〜」

「ボス、あの女の手が剣になっていませんか?」


 無数の銃口を向けられているというのにご主人様の笑みはまったく消えないことにギャング団の一部は異様さを感じているようですがどうやらボスであるハゲの方だけは全く気づいていない様子ですね。一人は非常に目ざといようです。


「なんでハゲなの? 剃ってるの? それとも生まれつき? もしくは病気かな? ぼくは一応は武器商人として名が通ってるわけだけど他の物品も取り扱ってるわけだから毛生え薬を用意しようか? いや、まってそれよりもカツラの方がいいかな? なに心配はいらないよ。君のお仲間一人分くらいの値段ならカツラと毛生え藥くらい余裕で準備できるよ?」


 ここでもご主人様は笑顔。

 しかも一切の悪意を含まない笑顔で言い放った本人的には百パーセント善意の言葉ではあったがギャング団のボスであるハゲに対していった言葉は明らかに煽る言葉です。

 その意図していない悪意が素敵ですご主人様!


「……お前さん、殺されてえのか?」


 明らかに怒気、というか殺意の篭った瞳をご主人様へと向けられていますが当然のように笑顔しか浮かべていらっしゃいません。


「も〜 殺す殺されるとか殺伐してますね〜 ほら笑顔笑顔、にこ〜」


 にこ〜といいながら自分の頰の両方を指で上げ笑顔を作るようにしてハゲへと顔を向けられます。

 愛らしい! これで銃口が向いていなければ抱きしめてしまいたいくらいです。


「撃て、ぶち殺せ」


 顔を真っ赤にしたハゲが口を震わせながら手を上へと振り上げるとそれが合図にするかのようにご主人様へと向けられていた銃口全てが閃光を放ち、火を吹いたのでした。

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