メイドとやる気
太陽の光が地上にいる輩を焼き尽くそうとしていると勘違いしてもおかしくない灼熱の天気の中。
「うん、今日もビリビリだ!」
庭にて洗濯物を干そうとした私はカゴから洗濯済みの衣服を取り出しそう声を発します。
明るく言ってもやはり気分は沈みます。なにより私が洗濯をするたびに屋敷の服が少なって言っている気がする今日この頃。
母様の屋敷から戻り数日。
パジャマパーティでかなりの数のご主人様の写真を手に入れて私は大変に満足です。それらの写真はすでに焼き回し、妹達といろいろと交換会まで行いました。
これだけでも母様の屋敷に行ったかいがあったというものです。今でも目を閉じればパジャマを着たご主人様の愛らしさが目に浮かびます。雪のように白い肌。そして眠たげに目尻をこする仕草! そのすべてがこの世のものとは思えないほどの愛らしさでした!思わず襲いかかりたくなるほどの可愛さでしたがそこは我慢しました。メイドですからね。
ですが我慢できなかったバカな者もいるわけで。
その愚か者の名は悲しきかな我が母上たるメルエムアン。
天使のような可愛さを発揮したご主人様に即座に欲情。危険な息の吐き方をしていたので注意をしているとご主人様に襲いかかろうとしました。
ですので妹達と共に迎撃。徹底的にボコボコにしてやりました。如何に常識という道を踏み外したエルフと言えども人ではない私たち妹'sの数の暴力には対抗できずに沈黙。骨という骨を徹底的に砕き、指一つ動かせなくし、さらに体を鋼鉄の鎖で縛り上げ、幾つもの魔法錠がついた棺桶へと放り込み、庭の隅へと埋めてやりました。
しかし、翌日にはどうやった変わりませんがケロっとした顔をした母様をリビングで見かけた時には妹's一同でさすがに唖然としてしまいましたが。
そんな母様の屋敷でのパジャマパーティを終えて屋敷に戻ったわけです。
あれ? メインは商談だったはずですがまあ問題ないでしょう。
そして自分の屋敷に戻り数日の間は普通に仕事をしていたご主人様でしたが私が洗濯物をビリビリに破り途方にくれ、真剣に家事のデータを入れてもらうようにご主人様に進言しようと考えている時に、二階のご主人様の私室から顔を出し唐突に声を大にして叫び始めました。
「スカウントに行くよ!」
どうやら以前母様の屋敷から逃げた侵入者にご執心のようです。そこまで想われている侵入者にかなり、いえ、殺意にも近いほどの嫉妬を感じてしまいますがここはメイドとしてリップススマイルで対応します。
思いついたらすぐにやる、という子供らしい思考をしたご主人様がパタパタと足音を立てながら破れた洗濯物を隠蔽している私の下まで走ってきます。
今日はスーツではなく黒いワンピースと肘まであるロング手袋を着込んでいるようですね。まぁ、商談に行くわけでもないのできっちりした服を着る必要もありませんし。
しかし、動くたびに見える氷雪のように白い脚を見せつけられてしまうと思わずゴクリと喉が動くのがわかります。ですが私は愚かなる母様とは違うのです。欲望に忠実になり襲いかかったりはしないのです!写真はとりますがね!
「じゃ、行くよ」
ご主人様の中ではすでに決定事項のようです。ならば私は異を唱えるわけはありません。
「スカウント、つまりはぶっ飛ばしに行くわけですね。腕がなります」
その場で軽く拳を握り目の前の空間に向け放つことで私がやる気が十分ということが伝わることでしょう。
ご主人様のために私は持てる全ての力を持って私以外の人がご主人様に仕えるのは血涙を流すほどに悲しいものですがご主人様の欲しい人材を力で屈服さしてみせます!
「…… 一応言っとくけど乱暴はダメだよ? まずは交渉してからだよ? 僕は武器と名がつくけど武器商人なんだから」
「古来より暴力こそが一番最適な交渉方法と申しますが?」
恐怖で人を縛るほうがとても容易く感じるのですがどうやらご主人様はそれがお気に召さないようです。
するとご主人様は仕方がないなぁというような顔へと変わります。
「まぁ、片腕くらいで済ませてよ?」
「努力します」
あのレベルの恐らくは人間に片腕くらいで抑えるのはなかなかに大変なのですよね。これは元々の私のスペックが殲滅戦に特化して手加減とが難しいのにあるんです。だから力加減がうまくいかないで家事ができないんです。断じて私が家事が不得意なわけではありません!
間違いでぶち殺してやろうかとかんがえていましたがご主人様の命では仕方ありません。
「それでご主人様。スカウントとおっしゃいますが探す当てはあるのでしょうか?」
「そんなのあるわけないじゃん」
あはははと笑うご主人様。
まさか街の中を隈なく探せとかいうのでしょうか……
さすがにそこまで高性能な索敵系のパーツが組み込まれてない戦闘特化型メイドたる私ではなかなか難しいと思うんですが…… いえ! できないとは言いません! ほら、私はやればできるメイドですから!
「そんな悲壮な顔で覚悟決めなくても闇ギルドに行くんだよ」
よ、よかった。
この灼熱の陽射しの中を走り回らなくては良いみたいです。




