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メイドは止まれない

 ダァン! と軽快な音が馬車から断続的に響き、馬車の中にはほんのりと火薬の臭いが漂います。


「うーん、いまいちだなぁ」


 そんな音を発生さしている人であるご目の前の主人様は手にしているものに対して不満があるようでした。

 ご主人様は手にしている銃を見て首を傾げながらも再び銃口を馬車の外へと向けています。


「まあ、もうちょっと試すかな?」


 手にしていた小柄な銃を不満げな声を上げながらもご主人様は再び、馬車の外に向けて再び銃を発泡していきます。

 その度に外からは悲鳴が聞こえてきます。

 ええ、だってここ街中ですからね。

 他人の迷惑なんて一切考慮なんてしていません。


「あのクズは死んでよし」

「あ、スリだ死んでよし」

「あいつ確かこの前ぼくに喧嘩売った奴の部下か、死んでよし」


 ええ、容赦していません。

 狙っているのも主に悪人ばかりなので止める理由はありません。

 ご主人様のトレードマークである口から血を滴らせる狼の図が描かれている馬車が街中を走ると必然的に犯罪が止まります。

 その理由は今の悪人を狙い撃ち、もとい作った武器の試し撃ちをしているご主人様を見ればわかるというものです。


 ベルモンディアスの目があるとこで悪事に手を出すな。


 これがこの街に住む悪党、小悪党に徹底されていることですから。

 以前取引を反故にしたギャング団の皆さんは新参者でしたしね。

 この街の掟を知らぬのも仕方のないことです。


「ちぇ、外した」


 銃から弾を撃ち尽くしたカートリッジと呼ばれる弾を込めた物を交換し、ご主人様は再び外へと狙いをつけています。

 外出する時に馬車を使用する際にはご主人様はこのようにご主人様曰くの『悪人狩り』をしていますからねえ。しかも狩られるのは悪人だけというのですから町の人達は歓迎しているそうです。


「あーあ、人がいなくなったなぁ」


 狩るものがいなくなったのかご主人様は手にしていた銃を馬車の中へと放り込むと自分も椅子へと深々と腰掛けます。

 私は放り投げられた試作品の銃を拾い上げトランクケースへと戻します。


「お気に召しませんか?」

「んー? 市に下ろす分には問題ないんじゃない? ぼくは気に入らないけどね」


 ご主人様はこう、ドカァァァァンというような超高火力のものが大好きですからね。

 一年前の戦争で使われた画期的な武器としてご主人様が提供さ超連射ガトリング砲などで人が肉片に変わる時などを遠くから見ていたら子供のように大歓声をあげていましたし。


「ま、適当に捌くよ。着いたみたいだね」

「はい」


 馬車が緩やかに速度を落としているのを感じた私は返事を返します。

 それとほぼ同じタイミングで馬車の揺れが止まり、少し間を空けて扉が開かれます。


「お待たせいたしました。メルエムアン邸になります」


 扉を空け、頭を下げるフィルに頷きながら私は先に馬車から降りると周囲を警戒します。

 母様の屋敷の周囲ですから滅多なことはないとは思いますが念のため襲撃を警戒しないといけませんし。

 ご主人様のかわいい顔に傷が付いたら大変ですしね。


「ではこちらに」


 ご主人様が馬車から降りたのを確認したフィルが先導する形で歩き始めます。その後ろを欠伸をしながらご主人様、そしてトランクケースを手にした私が続きます。


「どうして屋敷を持つ貴族ってやたらと玄関まで遠い庭を作るのかな?」

「見栄ではないのですか?」


 歩き始めて五分程経った頃にご主人様がぼやきます。

 五分たったわけなのですがまだ屋敷の姿すら見えません。

 まあ、母様の持つ土地が広すぎるというのもあるんですけどね。主に実験用という意味で。


「母様の場合は実験用に国から土地を買った記憶しております。フルーティ様」

「結構な額だと思うだけどねぇ」

「母様は無駄にお金はありますの で。あと無駄に長生きしておりますし」


 フィル、さらりと毒を吐きますね。

 ですが母様に関してならば間違いではありません。あの人は退屈が嫌いで刺激が大好きで実験も大好きなわけですし。

 なにより趣味で行なっている実験が莫大な富となっているわけで一生遊んで暮らせる程のお金は持っているわけです。

 ま、母様の種族的に一生遊んで暮らせるかどうかはわかりませんが。


「はぁ、疲れたぁ。リップス」

「はい?」


 深々とため息を付き座り込んだご主人様に名前を呼ばれ返事を返します。


「疲れたからおぶって」

「はい! 喜んで! あ、フィル、トランクケース持ってくだい」


 上目遣いで頼みごとをされて断れるでしょうか⁉︎ いや、断れまい!

 前を歩くフィルに向けてトランクケースを投げつけるように渡すとフィルは若干嫌そうな顔をしながらも受け取ってくれます。

 そして今や完全に自分で歩く気など無くなったご主人様を背負うのではなくお姫様抱っこで抱えます。


「いや、おぶって欲しいんだけど……」


 ご主人様の抗議の声など耳にも入りません。そして次の瞬間、私の胸元にふにゅりという音が響きそうな幸せな感触が広がります。


 至福!

 今まさに私の頭には天使がラッパを持ってファンファーレが鳴り響かせています!

 今ならば私はこの背中の至宝を守るためなら限界以上の力を発揮することも可能でしょう!


「さあ! フィル! 母様の屋敷まで一気に行きますよ!」

「あ、あね様基準でフィルみたいなか弱いメイドを計らないでほしい」


 トランクケースを受け取ったフィルでしたが抱えながら左右によたよたと揺れています。

 仕方がないのでご主人を片手で抱えあげながらトランクケースの一つを持ってあげると両手に一つずつ持つことができたようですね。


「さぁ! 行きますよぉ!」


 ご主人を抱えているので流石にいつものように力任せに駆け出すわけには行きません。

 そのため鋭く、素早く足を動かすことにより上半身をほぼ動かさずに高速で移動を開始します。

 パーフェクトメイドたる私には楽勝です。


「ま、まってあね様⁉︎」


 私の加速についてこれなかったフィルが声をあげますがそんなものは私の胸の中にあるご主人様の感触には変えれぬのです!


 そう!止まれないのです!

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