また会える
とあるサークルにての課題です。
テーマは(童話)
恋愛を絡める事
って感じで書いてます。短編が苦手なので面白くないと思います。
でも、誹謗中傷は止めてくださいね。
「ついに、ついに完成したのじゃ!」
「博士、やりましたね」
「あぁ、晴美君。今までありがとう。君の協力が無ければ、完成はしなかったのじゃ」
博士が私に握手を求めてくる。う~ん、握手は良いけど、涙と鼻水でビショビショになった手は触りたくないな。
あっ、自己紹介が遅れました。私、博士の助手をしている新見晴美と言います。で、涙と鼻水でクシャクシャな顔をしているのは発明家&研究家の博士です。
……そう言えば、私、博士の名前って知らないな。まあ、いいや。別に必要ないし。知らなくても問題ないよね、えへっ。
で、何が完成したかと言うと。なんと本を3D化する機械です~。えっ、何? よくわからないって? しょうがないな。ちゃんと説明するのできちんと聞いてくださいね。
この機械の中に本を入れると、機械が本を読み取って、3D化して映写してくれるのです。ん? 意味が分からないって? しょうがないですね。小学生にでも分かるように説明してあげましょう。
この機械の中に漫画を入れます。そうすると、機械が漫画を読み取って、この映写機で映像が出ます。するとそこに登場人物がいるかのように立体感のある映像が映画のように動くんです。
この説明で分からない人は、漫画を自宅で3D映画化してくれる機械と思ってくださいな。
「何を1人でぶつぶつ言っているんじゃ」
「いや、読者に説明を」
「読者って何のことじゃ? まあよい。早速、試運転するぞい」
「博士、どんな本を入れるんですか?」
「もちろん、えっちな……うっほん、とりあえず童話あたりで始めてみようかなと思っておる」
じっー。なんか聞こえたけど、ここは博士の名誉の為に聞こえなかったふり。人間、こういう優しさって必要だよね。まあ、こういう欲望が色んな研究や開発に繋がるのも事実だし。そういう事にしておこう。うんうん。
「じゃあ、博士。桃太郎あたりでどうでしょうか?」
「桃太郎か。桃太郎だと綺麗なお姉さんが出て来ないから、かぐや姫や浦島太郎の方が……」
「何か言いましたか、博士?」
「晴美君。笑顔じゃけど、笑ってない様に見えるのは気のせいかの?」
「気のせいですよ、博士。で、何か言いましたか?」
「いや、何も言ってないぞい」
「では、桃太郎をセットしますね」
「小娘のくせに迫力あるのじゃ」
もう60過ぎのジジィ……もとい、おじいちゃんが何を言っているんだろう? 男の人っていくつになっても馬鹿だよね。
大体、もう立たないでしょ……ごめんなさい。少し下品でしたね。さて、桃太郎の本もセットしたし、あとはスイッチを入れるだけ。
「博士、本のセット完了しました!」
「よし、スイッチオンじゃ!」
「はい!」
おっ、動き出した。今、本を読み取っているんだ。あれ? なんか焦げ臭いぞ。なんか変な光が所々から漏れてるし。大丈夫なのかな。って、うわぁぁぁぁぁぁ~、爆発した~!!
「ぎゃあぁぁぁ~」
「ひぇぇぇ~~~。は、博士、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃ。しかし、何が起こったんじゃ? 訳が分からん」
「いや、作ったのはあなたですので」
やっと部屋の中の煙が消えて視界が広がってきたな。ん? 爆発した機械の陰で何か動いたよ。なんだ、あれ? って、えぇぇぇ~! お、鬼がいる!
「お、おぉ~。実験は成功じゃ!」
「いや、機械は爆発して残骸しか残ってない。これは成功とは言わないでしょ」
「しかし、我ながら凄い機械を作ったもんじゃな。本当に鬼がいるみたいじゃないか」
「まあ、そういう意味では成功ですけど」
しかし、本当にリアルだな。3Dに見えないや。本当にここにいるみたい。……なんで鬼が機械の残骸を動かしているの? 3Dだから透けるんじゃないの? なんかおかしくないかい?
「は、博士。3Dなのに機械の残骸を動かしてますよ?」
「う~む。どうやら機械の爆発によって、実体化してしまったようじゃな」
「冷静に言ってる場合じゃないでしょ! ほら、めっちゃ怒ってますよ!」
これって凄くヤバくない? えっと、逃げ道は……って、扉が爆発で歪んでるよ。あれ、開かないでしょ~。鬼がこっちに来た~! 金棒を振りかぶってる。読者の皆さん。ここまでのようです。以後の実況はありません。では、さようなら。
ガキンッ! 何、この音。私が潰れた音? でも痛くないよ。なんで?
「何をしてるでござる、娘。早く逃げるでござる!」
おぉ~桃太郎だ! 桃太郎が刀で金棒を受け止めていた。しかもイケメンじゃん。ちょっと向●理に似てる。カッコいい~。……そんな事を言ってる場合じゃないな。とりあえず逃げないと。博士、1人だけ机の物陰に隠れるなんてズルい。
「なんで博士1人で逃げてるんですか!」
「いや、晴美君をおとりにしようなんて考えてないのじゃ」
「緊急事態で本音が漏れてますよ」
カキンカキンと剣と金棒が交わる音が部屋中に響き渡る。でも、明らかに体格が違うから桃太郎が押されてるように見えるよ。って言うか、明らかに劣勢だよね。
「ぐわぁ!」
桃太郎がこっちに吹っ飛んできたよ~。あっ、博士の上に落ちた。うん、人を見捨てた天罰だ。ざまぁ~。そんな事を言っている場合じゃないな。鬼がこっち来る。
「桃太郎、大丈夫? まだ戦える?」
「大丈夫でござる」
フラついてるじゃん。本当に大丈夫かよ。しかし、本当にイケメンだな。カッコいい。こんな人が現実に私の側にいたら告白しちゃうかも。そう言ってる合間に鬼がこっち来た~!
「ワンワン!」
「キッーキッー」
「ケーンケーン」
おぉ! イヌ、サル、キジが鬼に攻撃してる! あっ、やられた……早っ!
「ちょっと桃太郎! なんでイヌ、サル、キジなのよ! あんなんで鬼に勝てるわけないでしょ!」
「拙者に言われても困るでござるよ」
「せめてトラ、クマ、タカじゃない? それなら鬼にも勝てそうだし」
「うむ、正論じゃな」
「それは物語を作った作者に言ってほしいでござる」
もう~。時間稼ぎにもならないじゃん! どうすれば……ん? あれ? 鬼の後ろの機械。まだ電源が入ってないかな?
「博士、あの機械。まだ、動いていません?」
「ん? た、確かに。まだ動いているようじゃな」
「あれ、電源を落としたら、鬼って消えませんかね?」
「消えるかもな」
「不確定で不安になる回答、どうもです」
でも、この状況を打開する可能性があるなら、やってみるのも手だよね。って言うか、とりあえずそれぐらいしか出来ることないし。んじゃ、電源を落としてみましょうか。
「桃太郎、ほんの少しで良いから時間を稼いでくれる?」
「何をするのか、全く分からんでござるが了解したでござる」
「んじゃ、頼むわね。上手くいったら、お酒でも飲みに行きましょう」
「わかったでござる」
そう言った瞬間、桃太郎は鬼に向って飛び出して行った。さて、私も戦闘に巻き込まれない様に大回りして機械の所に行こっと。
「博士、離れてください。歩きにくいです」
「いや、しかし、晴美君を危ない目に合わせるわけにはいかんからの~」
「さっき、私をおとりにしたくせに」
「は、早くしてほしいでござる。拙者、長くはもたないでござる」
弱音を吐く桃太郎ってどうだろ。幼児のヒーローでしょ。もう少し、頑張ってよ。そう言ってる間に着いた。さて、電源を切りましょうかね。
「博士、電源落としますよ」
「よきにはからえ」
「この騒動の原因を作ったくせに、なぜ上から目線」
せーの! バチン。電源落としたぞ。どうだ!
おっ、鬼が苦しんでる。あっ、姿が消えかかってる。やった。成功じゃん。……桃太郎もイヌもサルもキジも苦しんでるけど。そっか。鬼が消えるって事は桃太郎も消えるんだ。
「桃太郎、大丈夫?」
「だ、大丈夫に、み、見えるでござるか?」
「見えない」
あっ、断末魔とともに鬼が消えた。桃太郎の姿も消えそう。
「すまないでござる。お酒の約束は果たせそうにないでござる」
「ううん。きっとまた会えるから」
「そうでござるな。きっとまた会えるでござる。またその時まで」
苦しそうな桃太郎だったけど、消える瞬間は笑顔でだった。うん、きっとまた会えるよ。必ず……また会おうね。
「そして全米が泣くんじゃな」
「こんなオチで泣く人がいるか!」