~夢~
朝起きて、リビングへ向かう。
するとお母さんがいつも作る朝食のいい香りがしてきた。
「なんだ。お母さんとお父さんが死んだのは夢だったのか。」
僕はホッとした。こんな悪夢を見たのは初めてだ・・・。
僕は安心と少しの不安を抱え、リビングへ入る。
「おはよう。」
「悠里、おはよう。」
「お兄ちゃん、おはよう。」
お父さんとお母さん、眠そうな顔の理沙と挨拶を交わした。
よかった。やっぱりあれは夢だったんだ。
僕はお母さんとお父さんがいることに感謝しながら朝食を食べた。もちろん、理沙が生まれてくれたことにも感謝している。
「お兄ちゃん、何でニヤニヤしてるの?」
「え?ニヤニヤしてないよ~。」
「あら、本当だわ。ニヤニヤしてる。」
「お母さんまで・・そんなことは気にしなくていいよ。」
自分でも分かるが、ニヤニヤしてしまっている。お母さんとお父さんが死んでしまったことが夢で本当に嬉しかったのだと思う。
「今日だね!玲奈ちゃん達とご飯食べに行くの。」
理沙がテンション高めで急に話を切り出した。
「そうねぇ。楽しみだわ。」
お母さんも、うきうきしながら言う。
「お店って、あの木造のお店?」
「木造かどうかは分からないわ。」
僕は夢のことが気になったので一応聞いてみたが、お母さんは木造かどうか知らないみたいだ。
名前を聞くと、夢で行ったお店と同じ名前だった。
まあ、所詮夢だからな。大丈夫だろう。
朝食を食べ終え、僕は少し散歩をすることにした。
鞄を持ち、僕がいつも通る散歩コースを歩く。
近所で仲のいいおじいさんが物を焼いているのを見かけたので、話しかける。
「おはようございます。」
「おお、悠里くんか、おはよう。散歩かい?」
「はい、そうです。」
「そうかそうか。あ、悠里くんあんまり火のほうへ近づくと危ないよ。」
「え?・・あ!」
「あ!ちょっと待ってよ。今とってあげるから!」
おじいさんが近くにあった火ばさみを手に取り、拾ってくれた。
「すみません。ありがとうございます。」
「いえいえ。それより、このキーホルダー大事なものだったんじゃない?」
「い、いえ。大丈夫です。」
僕が火の中へ落としてしまったのは、お父さんからもらったキーホルダーだ。
黒こげになってしまった。鞄につけていたのに、紐が切れてしまったようだ。お父さんに悪いな・・・。
「そう?一応渡しておくね。」
おじいさんはそう言うと、僕に黒こげになったキーホルダーを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
おじいさんと別れ、家へ向かう。
「ただいまー。」
家へ帰るとお母さんと理沙の声がリビングから聞こえてきた。
「あ、悠里おかえり!どう?この服。」
「え?いいと思うよ。」
「お兄ちゃん、私の服はどう?」
「いいんじゃないかな。」
この状況を見る限り僕が散歩へ行っている間、お父さんはお母さんと理沙のファッションショーにつき合わされていたんだろう。
僕、散歩行っててよかった。




