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~現実~

「もう、お父さんとお母さんは・・・・・・」


消防隊員の人たちの声は僕の耳に入ってこなくなり、炎を目の前に立ちすくんでいた。

そしてふと、この言葉を放った。燃え上がっているお店を見て、もう希望を持つことは出来なくなっていた。


「お兄ちゃん!そんなこと言わないでよ!」

僕の言葉が聞こえたらしく、理沙が震えながら言う。

その隣にいた玲奈は、炎を黙って見つめていた。きっと玲奈も同じことを思っているのだと思う。

炎を見つめる目は少し潤んでいるように見えた。玲奈は小さい頃にお父さんを亡くしていて、お母さんと二人で暮らしていた。お父さんが亡くなった玲奈にとってお母さんは心の支えでもあった。言葉をかけてあげたいと思ったが、今の僕にはそんな余裕はなかったので玲奈に言葉をかけてあげることは出来なかった。

理沙は今にも滴がこぼれそうなほど、涙がたまっている。

「理沙、ごめん。」

苦しんでる二人にあの言葉はきつかったと思ったので謝る。

僕の目から涙は出てこない。なぜだろう。悲しいのは悲しいのだが、実感がまだないのだと思う。


消防隊員の人に呼ばれ、僕達を含めた子供が車で運ばれる。

事故か故意なのかはまだ分からないため、警察署に行き事情聴取が行われるそうだ。

子供のほとんどは恐怖により涙を流して、他の人に宥められている。

玲奈は今にも泣きそうな理沙の背中をさすっている。

僕は、車に乗ってからも燃え上がっていた炎が目の裏に焼きついて怖くて動けなくなっていた。

こんな便りない兄で理沙には申し訳ないと思っている。玲奈だってつらいはずなのに、理沙の背中をさすってくれてる。

僕がしっかりしなくちゃいけないんだ。頑張らないと・・・。


警察の事情聴取を終え、部屋を出ると理沙がいた。

玲奈はさっき事情聴取が始まったらしい。

玲奈を待ってると、警察に僕と理沙が呼ばれた。

さっきとは違う部屋に入り、椅子に座ると険しい顔をした警察から静かな声で告げられた。


《さきほど、消火されたお店から君たちのお父さんとお母さんの遺体が発見されました。》


分かっていたはずなのに、あのお店からもうお父さんとお母さんは出ることが出来ないと分かっていたはずなのに、なぜこんなに苦しい思いになるのだろう。


「お父さんとお母さんが・・うっうっ」


理沙は我慢していた涙を流して泣いている。玲奈がしていたように僕は理沙の背中をさすった。僕と理沙にとって身内の死は初めてのことだった。

部屋を出ると、玲奈や子供達が集まっていた。警察がみんなの家まで送ってくれるというのだ。

僕と理沙、玲奈も送ってもらうことにした。

玲奈の家の近くに来たとき、


「玲奈ちゃん、どうするの・・?」


「え?家に帰るよ。」


「一人で大丈夫?私達の家に来る?」


「ううん。大丈夫だよ。ありがとう。」

理沙が心配して聞いたところで、玲奈の家に着いた。


「じゃあ、またね。」


「理沙ちゃんありがとう。またね、お休み。」


「うん。お休み。」


玲奈を心配そうに見送る理沙。親を亡くしてつらい気持ちが分かるから心配になったんだと思う。

その後すぐに僕と理沙の家に着き、僕達は車を降りる。

鍵を開け扉を開ける。家の電気を点け鞄を置く。

僕も理沙も何も話さない。

沈黙が少しの間続いた。


この沈黙の間、周りを見渡してみる。でも、僕と理沙以外は誰もいない。

お父さんとお母さんが死んでしまった現実を突きつけられた気がした。

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