プロローグ
これは、本当に初めて長編小説を書いた時の作品です。
これは、黒歴史になる作品です。
当時、某超能力マンガにハマっていたので、モロに影響を受けています。
読み返すと、作者が凹む作品ですorz
でも思い入れが深い作品でもあります。
「予知確定……。変動率八パーセント。発生確定率九十二パーセントをキープ。およそ二時間後に事件が発生します」
予知結果が出るメインモニターの前に座り、わたしはデスクの隣に立っている友人に結果を報告する。
「二時間後か……。場所の特定は?」
「都内の中心部です。繁華街がある大通りで、人口が密集しており、被害は予想を上回る大きなものとなるかと思います」
「チッ。結局あれの予知通りになったのか……。至急チームを向かわせろ!」
「大丈夫さ。既に手はうっておいた。彼を現場に向かわせておいたよ」
作戦本部の入口が開き、一人の男性が声を上げながら入ってきた。
その言葉を聞いた友人は「なぜそんな馬鹿なことを……!」と彼に掴みかかる。
「貴様! まさか本当にあの計画を実行させていたのかっ!」
「大事なのは倫理じゃなくて結果だよ。ごちゃごちゃとごねたところで何も始まりはしない」
「クッ……! 私も現場に急行するぞっ!」
彼を乱暴に突き放すと、友人は急いで外へと飛び出していった。
彼は襟を正しながら、余裕の笑みを浮かべている。
「ギフト――神様に選ばれた者、か。そういえばミス・凜花もギフトだったかな?」
突然の彼の問いかけにわたしは、無言で返事をした。彼はわたしを見透かしたように見つめるだけで、答えを求めていないようだった。
メインモニターには、これから起こる未来の映像が流れている。建物は破壊され、道路には傷ついた人々が倒れている。その中心地に、泣きじゃくる子供がぽつんと佇んでいるのを、わたしは胸をえぐられるような気持ちで見つめていた。
三神凪は、姉と共に都内にあるショッピングセンターに買い物に来ていた。
両親は仕事でいつも忙しくしており、姉の遠実が凪の世話をしてくれた。
中学生の遠実は、まだ幼い自分を嫌な顔一つせずに面倒を見てくれていた。
そのため凪は両親よりも、姉を尊敬し信頼していた。周りにいるどんな人よりも、姉が一番好きだった。
姉に嘘をつくことはせず、信頼で応えるべきだと幼いながらもそう思った。たった一つの秘密を除いては……。
いまはまだ小さくて何も出来ないが、大きくなったら彼女の力に――守れるようになりたいと思った。いまよりももっと幼い頃、いじめられていた自分。姉はそんな自分をいつも守ってくれていた。
『お姉ちゃんが、弟を守るのは当たり前だよ』
そう言って微笑んでくれた姉を誇りに思った。
いつか姉を助けられるくらいなヒーローに、自分はなりたいと思った。
「凪、危ないから私の後ろに隠れてなさい!」
だから、目の前の状況はその時が来たのだと、凪の胸は高鳴った。
「三神凪、ですね……。きみには我々と来てもらいましょうか」
全身黒づくめの集団が、真昼の大通りで二人を囲んでいた。サングラスをかけていて、映画に出てくる悪者みたいだなと、凪は思った。
周囲の人達は何事かと見ていたが、厄介なことに関わりあいたくないためか誰も目をあわせようとしない。
黒服の集団の一人が、一歩前に出て凪の腕を掴もうとしたが、姉に振り払われた。
「いきなり出てきて、ウチの弟に何か用でもあるんですか?」
「……。邪魔ですね、貴方。時間がないので少しどいててもらえませんか?」
「えっ……?」
驚きの残る声が響き、小柄な男が右手を振りかざした刹那――姉が弾かれたように後ろへと飛んだ。
「な、何が起こったの……?」遠実はぼうぜんとしながら、呟いた。
「姉ちゃんっ! だいじょうぶ!? 怪我はない!?」
「だ、大丈夫……。凪こそ、怪我はない?」
「自分の心配よりも弟の心配ですか。まったく……反吐が出ますね」
男はサングラスを外し、投げ捨てる。自分と変らない、幼さを残した少年がにやにやと笑みを浮かべている。
「おまえっ――!」
遠実を傷つけられ、歯をぎりぎりと軋ませる。
凪は、怒りにまかせて右手を振りかざした。
右手に、相手を吹き飛ばすという念を込める。直後、彼の体が浮かび上がり背後のビルのガラスを突き破った。
「チッ……! こいつっ――!」
周囲の人達の悲鳴が、四方から聞こえる。
「な、凪っ? 何、いまのは……?」
「ごめん、姉ちゃん。おれ、姉ちゃんに一つだけ隠し事してた」
遠実がショックで顔をゆがめ、目をふせる。
すぐに後悔の念が押し寄せてきたが、もうどうしようもなかった。姉を守るために自分には特別な力が宿ったのだからと、無理矢理納得させる。
凪は、周囲が驚いているいましか逃げるチャンスはないと思い、姉の腕を引っ張りその場から逃げ出そうとした。
直後――
「うあっ!」
「きゃあっ!」
砕けたガラス片をばらばらと地面にこぼしながら、少年は凪達に近づいてきた。周囲にいる他の黒服たちは、彼の邪魔をしないように一定の距離を開けているだけで、何もしてこなかった。
「まったく……。僕から逃げられると思ったのか? 君みたいな乱暴な子は、少しお仕置きが必要だね。とっておきの、あま――いお仕置きが」
少年が右手をふりかざすと、遠実が宙に浮かんだ。
右の手首を捻る動作をすると、その動きにシンクロするように遠実の左腕も捻れていく。
「うあっ……!」
「おい、何やってんだ! 姉ちゃんをこれ以上傷つけるな!」
凪が右手を振りかざすと同時に、向うも左手をかざした。
こちらが先だ、と確信し衝撃波を放った――はずだった。
……力が、発動しない?
「能力の相殺も知らないのか? まだただのガキじゃないか……。
……それに僕は他人の苦しんでる顔を見るのが大好きなんだ。それも目の前で大切な人を傷つけられて歪む、クソガキの顔がな!」
凪の背中に衝撃波が襲いかかる。全身の骨が、ぎしぎしと悲鳴をあげる。
少年は、凪の無様な姿をげらげらと笑いながら、捻っていた右の手首を、更に捻る。
「うあ――っ……!」
遠実が一際高い悲鳴を上げる。左手首から、ぶちぶちっと、小気味いい音が響く。
血管から血が溢れだし、瞬く間に赤く染まっていき、遠実の首が、がくっと垂れた。
凪は目を見開き、その経過を眺めている。
頭の中が、真っ白に染まる。
「おや、この程度で気絶したのか……? まあいいか。喚かれるよりも、おとなしいほうが都合がいいし」
にやにやとした気持ちの悪い笑みを浮かべながら、姉を道路へと投げ捨てる。
崩れ落ちていく姉の、生気のない顔を視界に捉えた。
瞬間――
自分の中で、何かが弾けた。
後のことは、何も覚えていない。
「遅かったか……」
蒼時が現場に到着すると、惨憺たる光景が広がっていた。
瓦礫は山のように積み上げられ、負傷した人が道路に投げ出されている。
蒼時はスーツの懐から組織専用の携帯を取りだし、現状の報告と救援を要請した。
数年前に予知された光景と、現在の記憶を比較する。若干の変化はあるものの、ほぼ同じ光景に拳を握りしめ、歯噛みする。
「これも、全て彼女の――あれの予知通りだということなのか……!」
覚悟はしていたが、実際に惨状を目の当たりにすると、やり場のない怒りが生じる。
蒼時は予知されてからの数年間、予定された未来を回避するために様々な努力を試みてきた。
能力を高め、不可能だと言われることに何度も挑戦した。
成功することもあれば、失敗することもあった。
挫折する時期もあったが、全ては未来の変革のためと歯を食いしばってきた。
しかし結果は変らなかった。
それでも予知とは違う箇所を必死に探す。
そして飛び込んできた光景に、蒼時は目に涙した。
一人の少年が、唇をわなわなと震わせながら、誰かの名前を呼んでいる。
頭から血を流し、気絶している少女を必死に気遣っているようだ。
予知されていた結末とは、少し、違う。
少年に近づきそっと抱きしめると、びくっと少年の身体が跳ねた。
「もう、大丈夫だ。君はよくやった」
彼は蒼時の胸で、堰を切ったように泣き始めた。
「ね、えちゃんが……。気づいたら、姉ちゃんが、きず……ついてて……。血が、たくさん……。どうしよう。姉ちゃんが、死んじゃう……!」
「大丈夫、お姉さんはちゃんと助かる。我々が助ける」
だから君は、何も心配しなくていい。
彼の額に、手を当てる。睡眠中枢を刺激し、人為的に彼を眠らせた。
未来は、きっと変わる。この子が変える。
だから、いまはゆっくりと休むんだ……。
Σ(゜Д゜)
(((( ;゜д゜))))アワワワワ
( ̄□ ̄;)!!
こんな心境です……。
果たして、需要はあるのか心配……。