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異世界ニンジャと亡国の姫  作者: 青鬼
第一章:無限森林脱出編
9/42

ニンジャ、燃え尽きる

異世界ニンジャを読み返してみると、なんかアーメン用語が気に障ったので、適当なセリフに変えておきました。

討ち漏らしが無いか心配ですが、これから先、アーメン用語が使われることは無いでしょう。

「まったく、なにやってんのよアンタは」


 腰に手を当てながら、クレアはやれやれと呆れた様子でそう言った。

 ニンジャのダイナミックな死に様にすっかり怒気も失せてしまったらしく、その表情は柔らかい。

 人の死に様を見て表情を柔らかくするとは、どんな鬼畜少女なのだろう。

 ニンジャは言い知れぬ恐怖を感じずには居られなかった。


「どうせニンジャの事だから、マッハ4くらいのスピードで空を飛ぶことによって発生する衝撃波エネルギーを利用し異空間の門を開こうとでもしたんでしょうけど……失敗に終わったようね。だから言ったでしょ? 人間如きが神様に逆らうなんて不可能だって」


 しかも、異空間の門を開こうと試みたことになっている。

 クレアの中では、ニンジャはどんな認識を受けているのだろうか。

 突飛すぎる発想である。もちろんニンジャは異空間の門を開くなんて事は試みていないし、そもそも不可能だ。そんな大それたことを、普通の忍者如きが出来るはずもない。

 せいぜいが、瞬間移動したり時間逆行する程度。大したことは出来ない。


「なぜ私たちが祟られたのかは分からないけど、焦らなくても大丈夫。きっとなんとかなるわ」


 ニンジャが全ての元凶であるとは露知らず、さしたる根拠もないまま、クレアはニンジャに慰めの言葉を掛けた。

 そんな彼女の優しさに、ニンジャは自分が酷く身勝手な人間だと思い知らされ、涙が出そうになる。


 さて、読者諸君はこう思ったことだろう。

 いくらなんでも大袈裟過ぎではないか、と。

 さすがに泣くほどのことではないだろう、と。

 なぜ、ニンジャはこれほどまで涙もろくなっているのか。

 それには、ある理由があった。


 忍者が忍術を扱うときに使われるニンジャエネルギーの源が何か、読者諸君は疑問に思ったことは無いだろうか?

 唐突だがここで、ニンジャエネルギーについて軽くレクチャーしておこう。


 まず、結論から言えば、ニンジャエネルギーの根本的な源は、忍者の摂取した食べ物である。

 食べ物からエネルギーを得るなど、どの生物にも当てはまることだ。読者諸君はそう思ったことだろう。

 しかし、我々のような、


 摂取、消化、吸収、代謝、排出


 といったプロセスなどではない。

 忍者はもっと画期的な、現代技術を凌駕するエネルギー摂取法を用いているのだ。

 具体的にいえば、


 摂取、消化、吸収、代謝、 E=mc^2


 といった感じである。

 なんと、排泄物となりうる物質を、忍者は全てエネルギーへと変換しているのだ

 いまいちピンと来ない人は、こう考えると良いだろう。


 忍者はUNKしない。


 さて、ニンジャエネルギーについて科学的に証明したわけではあるが、実は、ここにもう一つ重要な要素がある。

 それは、忍者の精神力。ニンジャメンタルである。

 E=mc^2のプロセスを行うためには、ニンジャの精神的な力が必要なのだ!


 つまり、度重なる死亡の連続と、忍術や体術の連続使用により、忍者の精神はすっかり擦り切れてしまっているのだ。

 そんな時に掛けられた優しい言葉。

 まさしく地獄に垂れた蜘蛛の糸を見たような気持ちだったのだろう。

 それほどまでに、ニンジャの精神力は限界だった。

 もはや、ニンジャの精神状態は末期症状を迎えている。これ以上の忍術の使用は、ニンジャの精神に大きな負担を掛けるだろう。


(だからと言って、ここで諦めるわけにはいかないでゴザル。こんな状況に陥ったのは、自分が原因なのだから)


 なんと!

 ニンジャはクレアたちに対して負い目を感じていたのだ。

 知らなかった事とは言え、森の精霊に危害を加え、挙句の果てには森の神様を怒らせてしまったのだから。

 ニンジャは責任を取るべく、脱出方法を探さなくてはならない。

 もしそれが出来ないようなら、オトシマエを付けるべく、ヤキドゲザの後にハラキリだ。

 ちなみに、どちらも日本古来より受け継がれる伝統的な謝罪の方法である。古事記にもそう書かれている。


「まだだ……、まだ地面を掘るという手が……!」


 ニンジャはそう言うと、今度は地面に両手と頭を付き、三点倒立の体勢をとった。


「……まだ何かするつもり?」


 訝しげに眉根を寄せるクレアだったが、次にニンジャが取る行動に目を見開くことになる。


「『忍者掘削術』!」


 そう言うと同時、ニンジャは両腕に力を込めヘッドスピン。身体はドリルめいた高速回転を始めた!

 そのスピードたるや、毎分1000回転!

 地面はみるみる削り取られ、ニンジャは円柱状の穴を残して、あっという間に地中深くへと潜っていってしまった。

 一見、常人ばなれした動きに見えるものの、これはれっきとした体術である。

 つまり普通の人間でも努力次第では可能と言うことだ。

 なので、読者諸君のために「忍者掘削術」の練習法を記載しておくとしよう。


 1、ヘッドスピンを習得する。

 2、ヘッドスピンを極める。


 ね、簡単でしょう?

 ちなみに、この「忍者掘削術」は、有名な土木技術の一つである「ボーリング」の原型とも言われているが、真相は定かではない。


 さて、話を本題に戻そう。

 ニンジャが地中へ潜って数十秒後、ある異変が起こった。

 ゴゴゴ……という謎の地響きと共に、地面が震え始めたのだ。


「な、何が起こっているの……!」


 ただならぬ雰囲気に押され、クレアは後ずさり。そうしている間にも、地響きは大きくなっていく。

 地震だろうか?

 いや、それにしては様子がおかしい。

 地響きの音に混じって、なにか水の流れるような音が聞こえる。


「まさか……!?」


 思いついた一つの結論。

 まさかとは思うが、しかし、あのニンジャならばやりかねない。

 クレアは得も言われぬ不安と僅かな期待を寄せ、事の成り行きを見守ることに決めた。

 そしてその予想が正しいと、彼女は間もなく知ることになる。

 なぜなら地響きの正体は、すぐそこまで近づいて来ているのだから……!


「……きた!」


 万が一に備え、クレアが身構えたその瞬間!

 ニンジャの掘った円柱状の穴から、轟音と共に水柱が噴き出した!


「いいえ、ただの水柱じゃないわ! よく見なさい!」


 クレアの言う通り、よくよく見れば、噴き出しているのがただの水ではない事が分かる。

 なんと湯気が立ちのぼっているのだ。つまりお湯!?

 いいや、ただのお湯ではない。地面から噴き出るお湯と言えば一つしか無い。つまり――――!


「そう、温泉よ! 温泉が湧いたんだわ!」


 なんたる奇跡!

 ニンジャは文字通りその身一つで温泉を掘り当てたのだ、無意味!

 ……おや? しかしニンジャの姿が見当たらない。


「そうね……、ああ! あそこにニンジャが!」


 クレアの指差した先を見れば、水柱の頂点に一つの影。

 あれは見間違えようも無い、ニンジャだ。

 噴き出す温泉の水勢によって、ニンジャの身体が穴から押し流されたのだろう。

 ニンジャはそのまま吹き飛ばされ、放物線を描きながら糸の切れたマリオネットめいた体勢でクレアの足元へと落下、そして墜落。


「残念だったわね、ニンジャ。……でも温泉を掘り当てるなんて凄いじゃない! よくやったわ!」


 クレアは賛辞の言葉を述べるが、しかし返事が無い、まるでしかばねのようだ。


「……どうしたのニンジャ? ……ねえ、返事してよ」


 ピクリとも動かないニンジャの身体を揺さぶるクレア。

 そこで彼女はある事実に気付き、わなわなと震えながら後ずさりをして、叫んだ。


「そんな、嘘でしょニンジャ? ……ニンジャアアアアアア!!」


 なんてことだ。

 ニンジャの精神は壊れきってしまった。

 ニンジャは……廃人と化していた。

燃えたよ……

まっ白に……

燃えつきた……

まっ白な灰に……


ちなみに僕は、ジョーは死んでないと思ってます。

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