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異世界ニンジャと亡国の姫  作者: 青鬼
第一章:無限森林脱出編
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ニンジャ、死す(2)

サブタイトルが思いつかなかったので、ニンジャが死ぬ描写を付け加えた私を、いったい誰が責められようか。

「随分と貧相な建物でゴザルな」

「ああ? いてこますぞ。訂正しろや」


ニンジャの口から思わずそんな言葉が出るほどに、ナッラー王国の英知の結晶は酷いものだった。

それと同時に、自国の英知の結晶をコケにされたクレアは、ニンジャに向かって中指を立てる。しかも、言葉遣いが乱暴になっていた。短気な子だ。

まあ、たしかに、貧相なんて言葉を用いるのは失礼だったかもしれない。反省しよう。

野宿よりはよっぽどマシだろうし、ありあわせの材料で作ったにしては出来が良い方だ。

彼女らは彼女らなりに努力して、このハリボテを組み上げたのだろうし、それに対するねぎらいの意味も込めて、先ほどのセリフを撤回すべきなのだろう。


「ゴミみたいな建物でゴザルな」

「なんでランクダウンしてるのよ。ぬっ殺すぞ」


クレアはますます機嫌を悪くするが、ニンジャに反省の色が無いことを見ると、やがて諦めたように溜息をついた。


「まあいいわ、とにかく入りなさい。今後の事について話があるの」


そう言って、クレアはダンボールハウスの入り口へ歩きだす。

クレアに着いて行く形で、ニンジャはダンボールハウスへ足を踏み入れた。

中では既にペッシェが座っており、傍らには気絶したアレックスが転がされている(ちなみに、暗殺者たちは外に放置だ)。

光源としてキノコ(読者諸君は忘れているかもしれないので説明すると、柄の部分を握れば光るキノコ、ヒカリダケのこと)が吊り下げられていた。


「さて」と前置きして、クレアは床に腰を下ろす。

正座の姿勢から両足を横にずらした体勢。すなわち女座りである。

普段から、乱暴な言葉遣いをしたりウ〇コを踏んだりしてるくせに、こんな時だけ女アピールなどとは、全くもって生意気な少女だ。

ここはひとつ、忠告しておくべきだろう。


「ちょっとちょっとクレア殿。なんでゴザルかその座り方は? まったく頂けないでゴザルな、そんな露骨に女らしさを主張する必要なんてないでゴザルよ? 人間、無理をすれば何かしらの不備を伴うもの。クレア殿はクレア殿らしく、テキトーに胡坐でもかくか、肘でもついて寝転ぶべきでゴザルよ?」


ニンジャがそう言った瞬間、ブチッと何かが切れる音がした。

クレアは引きつった笑いを浮かべながら、ペッシェのシカツノブレードを引き抜き、その先端をニンジャに向ける。


「ああ、そう。アンタが私に対してどんな印象を持っているのかよく分かったわ。ちょっとそこに正座しなさい。介錯してやるわ」


介錯とは首を斬ることだ。物騒な話だ。

それに、武器を向けてくるので、妙な威圧感を感じる。

しかし、クレアにもシカツノを振り回そうとする素振りは無いし、どうせタダの脅しだろう。

ニンジャを怖がらせて、反省させようと言う魂胆なのかもしれない。

まあ、例えシカツノで斬りかかって来ても、素人が武器を振り回したところで、歴戦の戦士であるニンジャに傷一つ付ける事すら――――。


「シカツノビーム!」


シカツノの先端から光線が発射された。

ニンジャの首から上が光線に飲まれ、ニンジャは息絶えた。



「死ぬかと思ったでゴザル」


変わり身の術によって復活した忍者は、復活すると同時にそう言った。


「チッ。とりあえず正座しなさい」

「なんで今舌打ちしたでゴザル?」

「正座」

「ゴ、ゴザル」


いろいろと物申したいところであったが、クレアの剣幕に押されて、ニンジャは素直に正座した。


「今から話し合いを始めるわ。いいわね?」


仮にダメだと言っても、全く聞き入れてくれなさそうな、尊大、傲慢な態度でそう言うと、クレアは人差し指を立てた。


「今、私たちが置かれている状況は、考えられる中では一つしかないわ」


森を進むと必ず同じ場所へ舞い戻るこの現象。

不可思議極まりないこの状況を、しかし、クレアはその原因を知っているらしい。

やけに深刻そうに切り出したクレアに、ニンジャも思わず息を呑んだ。


「祟られているわね」


そして首を傾げた。


「祟り……でゴザルか?」

「おそらく。この森の神様、ゴッド・タマッキに祟られて、森の中の空間をループさせられているのよ」

「…………」


予想外に曖昧で、突飛な答えに、思わず言葉が出ない。

森の神様?

祟り?

なんだそりゃ。意味がわからない。


「だから、タマッキ神に祟りを解いてもらわないと、私たちはここから出られないのよ」


真剣にそう言い放つクレアに対して、ニンジャは手を挙げた。

質問をするためだ。


「待って欲しいでゴザル。いきなり祟りだとか言われても、納得が行かないでゴザル」


詳しい説明を要求する。

流石にこの場面の説明をカットするのは、物語の進行上よろしくないのだ。


「まず、神様と言うと……あの神様でゴザルか? 神社とかで祀られている?」

「多分その神様だけど、そっちの認識とこっちの認識にズレが生じている可能性もあるから、一応説明しておくわ」


なぜズレが生じていると思ったのか、なんて疑問は抱かない方が良いだろう。

展開上の都合である。


「私たちの言う神様は『世界の理を司る者達』の事を言うの。崇拝とか信仰と言うよりは……絶対的な存在に向ける感情の方が強いわね」


畏怖ってやつよ、とクレアは言った。


「土の神様なら地震を起こせるし、火の神様なら噴火を出せるし、水の神様は洪水を呼べるし、風の神様は嵐を生めるし――――森の神様なら、森の中で起きる全ての現象を操れるってことよ。だから、今の状況はタマッキ神の仕業だと考える方が自然ってワケ」

「…………」


イマイチ、想像がつかない。

が、しかし。


「クレア殿は今の状況を祟りだと確信しているようでゴザルが、しかし、本当にそうでゴザろうか?」


そんな非論理的な結論を抱くのは、早計ではないだろうか。

例えば、さきほどペッシェの使っていたような『魔法』と呼ばれる力。

アレを使えば――――。


「魔法で幻覚を見せられている可能性は考えたわ。だから幻覚をレジストする魔法は試してみた。でも効果は無かったわ。空間を弄る魔法は難易度が高いし、しかもこんな広範囲なんて、ニポン最強の魔導師ルルベルクでも、魔王でも無理。それこそ神様にしか出来ないわよ」


次元が違うのよ、とクレアは言った。


「まあ、世の中の有り得ないことは、おおよそ神様の仕業なのよ。覚えておきなさい」


結局、神様の仕業だと押し切られてしまった。

まあ、確かに、この国の常識を知らないニンジャが、今の状況についてどうこう言えるものではない。

こういうことは神様の仕業。

それがニポンの常識なのだ。

受け入れよう。


「で、どうすれば祟りは解けるのでござるか?」

「さあ、わかんない」

「……は?」


一切の躊躇もなく、間髪入れずに、クレアはどうでも良さそうにそう言った。


「今、分からないと言ったでゴザル?」

「ええ。神様のする事に、人間ごときが干渉するのは不可能よ」


だって、相手は神様なんだから。

そう言いながらクレアは床に横たわる。やはり肘をついた。


「とりあえず、タマッキ神が私たちに接触してくるまでは、ゆっくり休みましょう」


それにしても、とクレアは眉を寄せて。


「タマッキ神が私たちを祟る理由が分からないわね。基本的に寛容な神様だから、余程の事をしないと怒らないハズなのよ。例えば……精霊に危害を加えたとかすれば、祟られるでしょうけど」


精霊に危害を加えるとか、まあ、それこそアホのする事よね。

と、クレアは冗談めかしく笑った。


「精霊……でゴザル?」


なんだか聞き覚えのある言葉だ。

第2話でその言葉を聞いたような気がするが――――思い出せない。

まあ、覚えていないという事は、大したことでは無かったのだろう。

キノコの精霊を食べた覚えなど、ニンジャには無いのだ。

忍者は、自分にとって都合の悪い情報は覚えない。


「じゃあ、夕飯を食べながら暗殺者達の処遇についてでも話しましょうか?」

「いや、拙者はここからの脱出法を探るでゴザル」


「キノコ鍋を持ってきて」と言いかけたクレアに、ニンジャは立ち上がりながらそう言った。


「拙者の持つありとあらゆる技術を用いて、脱出して見せるでゴザル!」


神だか何だか知らないが、祟りごときで怯むようでは忍者失格である。

忍者としての誇りに掛けて、この森から脱出してやろうではないか。


「ちょっと、ニンジャ? 脱出を企てるのはあなたの勝手だけど――――!?」


クレアの話も聞かずにニンジャはダンボールハウスから飛び出し、木から木へと飛び移るようにして、森の奥へと姿を消した。

基本的に、忍術を使う所を一般人に見られるワケにはいかないからだ。


「タマッキ神の機嫌を損なうようなこと、ゼッタイにするんじゃないわよー!?」


遥か後方から聞こえてくる声に対して、ニンジャは返事をしなかった。

数分ほど進み続けた所で(野営地へと戻らない程度進んでから)、ニンジャは足を止めた。

周囲をグルリと見渡して、野営地の近くへ戻っていないことを確認してから、ニンジャは印を結ぶ。


「やってやろうじゃないか――――で、ゴザル」

キャラ紹介


名称:リリファルカ(暗殺少女)

年齢:12歳

性別:女

職業:暗殺者

出身:オサカ帝国

目的:クレアの誘拐

説明:

オサカ帝国の暗殺者。

暗殺の才能に非常に秀でており、オバチャン部隊を率いるほどに地位も高く、本人の実力も高い。暗殺の一分野のみならばニンジャをも上回るほど。つまり凄い。

ただし、ニンジャの忍術に虚を突かれ、噛ませキャラみたいにやられてしまう。

暗殺者としての訓練を受けるうちにマゾ気質が開花し、痛みに対してなんの抵抗も持たなくなった変態さん(連載開始時の設定ではマゾでは無かったのだが、拷問シーンでの残虐な雰囲気を少しでも払拭するべく、強引にマゾ設定を付け足した)。

今後のストーリーでも登場する予定だが、見せ場は無いだろう。

魔法の才能に秀でた姉を持つが、その設定が活きるのは当分先。

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