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異世界ニンジャと亡国の姫  作者: 青鬼
第一章:無限森林脱出編
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空間ループする森

ストック尽きたので、続きは完全に不定期更新になります。

「ほら、『ニンジャが選ぶ、危ないキノコ10選・第1位』のマボロシダケを食べるでゴザル」

「だ、誰が食べるかそんなの! やめろ、顔に押し付けるな! そんな拷問方法、私は好きじゃない!」

「森の出口を教えるでゴザル。でないと三途の川を見る事になるでゴザルよ」

「なんてものを食わせようとしてるんだ!? でも絶対に教えない! いっそ殺せ!」


セクハラ紛いの方法で情報を聞き出そうとするニンジャと、二重の意味で口を固く閉ざす暗殺少女。

ニンジャが懐から取り出したキノコを暗殺少女の口にねじ込もうとするものの、暗殺少女はキノコから顔を背け、頑なに口を閉じて拒絶の姿勢を取っていた。流石のドMアサシン、略してマゾシンも、キノコを前にしては怯むらしい。

2人が不毛なやり取りを始めてから数分後、痺れを切らしたアレックスがとうとう前に進み出た。


「ほら、さっさと白状しろ」


そう言うと、暗殺少女の頭をガッシリ掴み、無理矢理その口に手をかけた。

アレックスの意図を察したのか、暗殺少女は全力で歯を食い縛る。しかし、抵抗虚しく、暗殺少女の口は簡単にこじ開けられてしまった。


「さあニンジャ、そのキノコをコイツの口にブチ込んでやれ」

「了解でゴザル」


アレックスの勧めるがままに、ニンジャはマボロシダケを暗殺少女の口に突っ込んだ。目的のためならば手段を選ばない。忍者に慈悲など無いのだ。


「やめろォ! うぐっ……ゴクン。うぇぇ……」


無理矢理にキノコを口の中に入れられ、吐き出す事もままならず、暗殺少女はとうとうマボロシダケを飲み込んでしまった。さしものアサシンエリートも涙目である。が、問題はここから。


「うぅ……あ……ア……アガガガガガガガ」


マボロシダケの効果により、幻覚症状に陥った暗殺少女から、森の出口を教えてもらわなければならないのだ。

しかし、暗殺少女はビクンビクンと痙攣し、焦点の合わない目で明後日の方向を見ながら紫色の泡を噴き出している。どう見ても道案内どころではない。


「さあ、森の出口まで案内するでゴザル」


しかし不思議な事に、暗殺少女はニンジャの言葉を聞くと、ピタリと痙攣が止み、泡を噴き出すことも無くなった。ただし、目の焦点は合わないままである。

フラリフラリとよろめきつつも、暗殺少女は敬礼のポーズを取ろうとして、自分が縛られている事を思い出し、そのまま言った。


「いえす、ゆあ・まじぇすてぃ」


相変わらず目の焦点があってない。

まるで薬物中毒者の目だ、実物を見たことは無いが。


「コチラニナリマス」


異様な口調とカクカクした動きで、暗殺少女は縛られたまま歩き始める。


(よいこのみんなには見せられない映像ね)


暗殺少女のあまりの惨状にクレアは思わず目を背ける。

常識に疎いクレアでさえ、ニンジャの鬼畜所業は目に余るものだったが、なんにせよ森から脱出する目処がついたことは確かだ。少々複雑な心境ではあるが、ニンジャにねぎらいの言葉を掛けるぐらいはしておくべきかもしれない。


「上出来よニンジャ。いい加減こんな陰気臭い森から抜け出ましょう」


「バッチリ」とばかりに、クレアは親指を立ててサムズアップ。

ニンジャの肩をポンポンと叩くと、率先して暗殺少女に着いていった。

それに続こうとしたアレックスがふと立ち止まり、オサカノオバチャンを指さしながらクレアの背中に声を掛ける。


「おい姫さま。この暗殺者達はどうするんだ?」

「ほっときなさい」


禍根を絶つためにもオサカノオバチャンは始末しておくべきなのだろうが、クレアはそれを命じなかった。

特に意味は無い、気まぐれである。


「あぁ、私って本当に優しくて可愛くてステキな王女よね。命を狙ってくる相手すらも許しちゃう博愛の精神。こいつぁ白馬の王子様もメロメロだわ!」



「…………」


そんなクレア達を呆然と見送るニンジャ。その表情は驚愕に満ちている。

オサカノオバチャンを放置したからでも、クレアの言葉に呆れたからでもない。

もっと、重大な疑問を抱いたからだ。


「せ、拙者の知識では、ヨーロッパにおいての『親指を立てる仕草』の意味は……『お前のケツにブチこんでやろうか!?』だったでゴザル。ということはつまり……」


顔から血の気が引くのを感じながら、震える声で、ニンジャは呟いた。


「クレア殿は拙者にブチ込む気でゴザル?」


とてつもなく恐ろしい想像をするニンジャであった。

もちろん、クレアには、ニンジャにブチ込む気は毛頭ない。普通にねぎらいの意味で親指を立てただけだ。



暗殺少女の進むままに歩きはじめて数十分後、ニンジャ達はさっそく途方に暮れていた。

と言うのも、暗殺少女に着いて行った先では、オサカノオバチャンが縛られたまま地面に転がされていたのだ。

つまり、先ほど居た場所へ一周して戻って来てしまったという事になる。


「どういうことだオイ……。元の場所に戻ってるじゃねえか! さっさと森の出口へ連れて行きやがれ!」


暗殺少女の胸倉を掴むアレックスだったが、暗殺少女は白目を剥いて奇天烈キテレツな言葉を返した。


「ホモはせっかち。これだからいけない」

「何を言ってるんだ!」


会話が通じていないことに、アレックスは苛立ちで青筋を立てた。


「チッ! 目を覚ますんだぜ!」

「あべしっ!」


暗殺少女の雪のように白い頬に、ビンタを一発お見舞いしてやる。

暗殺少女の瞳に正気と興奮が宿ったのを確認してから、こめかみにエルボーを食らわせ、気絶させた。

それを見て、クレアが眉をひそめる。


「今さらだけど、女の子に暴力振るうのはどうかと思うわ。そして、気絶させる意味あったの?」

「男女差別はしない主義なんでな。そんな事より、どうやってこの森から脱出するんだぜ! 真っすぐ歩いてたはずなのに、同じ場所に戻ってきやがった! こんなのまるで超常現象だぜ!」

「アレックス、あなた疲れてるのよ。さっきから語尾がおかしいし、今日はもう休んだ方が良いわ」

「冗談じゃあないぜ! こんな暗殺者の居る森で眠れるか! 俺はラムラット王国に着くまで絶対に眠らないからな!」


その瞬間、ニンジャは素早くアレックスの背後へと回り込み、すかさずその首筋うなじに手刀を叩き込んでいた。目にも留まらぬ早ワザである。


「当て身でゴザル」


ニンジャの当て身をモロに食らい、アレックスはそのまま前のめりに倒れこむ。

アレックスが気絶したのを確認してから、ニンジャは「よし」と頷いて、クレアに話しかけた。


「今日はここで野宿でゴザルな」

「そうね。不服だけど仕方ないわ」

「では、私は野営の準備をするので、ニンジャは食料調達をお願いします」

「分かったでゴザル」



食料調達は着々と進んだ。

森の至る所に怪しいキノコや気味の悪い野草が生えていたし、水はペッシェの魔法で作り出せる。偶然にもニンジャは土鍋を持っていたので、夕飯(現在時刻が分からないので、もしかしたら朝飯や昼飯かもしれない)はキノコスープにしよう。

また、どこへ進んでも必ず元の場所へ戻るので、ニンジャが道に迷う事は無かった。

いや、言い直すとすれば、既に迷っていたので道に迷う心配は必要なかった。

やはり、この森は何かがおかしい。

ニンジャは言い知れぬ恐怖を感じていた。


「ニンジャ。夕飯の準備はどんな調子かしら?」


グツグツとキノコを煮ている所で、クレアが声をかけてきた。


「ありあわせの材料で作ったにしてはいい感じでゴザル。見るでゴザル、この毒々しい紫色を」

「なんで毒々しさを追及したのよ。バカじゃないの?」


バカとは何だ。バカとは。


「それより、野営の準備はどんな感じでゴザルか?」

「ふふん、良い質問だわ。見て驚きなさい! これこそ、我がナッラー王国のありあわせの材料で作られた、究極の野営建築物……!」


そう言ってクレアが指差したのは、紙の箱で組み上げられた小さな家だった。


「ダンボールハウスよ!」

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