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皇妃さまは艶やかに笑う  作者: 田上 みあ
皇妃さまは今日も艶然と笑う
7/22

皇妃さまは今日も艶然と笑う

先帝と皇子二人の名前を変更しました。(2012/04/23) 

一部文章を修正しました(2012/09/22)

 ユスティーナは15歳で成人を迎えるとすぐに、当時20歳で皇太子の座にあったエドヴァルドの下に嫁ぐ。


 アスナルト帝国では、皇帝しか後宮を持つことはできない。そして、皇帝および皇太子の正式な子供、つまり帝位継承権を得ることができる存在は、後宮の女たちから産まれた子のみと定められていた。後宮外で関係を持った女性から産まれた子が、皇帝の血を本当に引いているという確証が全くないからである。しかし唯一の例外が、神前で互いに誓い合い正式な婚姻関係を結んだ皇太子妃の産んだ子であった。後宮を持つ前の皇太子の子供であるが、皇太子妃から産まれた子のみは、帝位継承権を得ることができた。唯一の正式な妻である、ということもあったが、皇太子妃には常に護衛がつき、皇太子以外との密通などはほぼ不可能である、という事実があるからというのが大きな理由であろう。


 10代の頃から多くの女性と浮き名を流していたエドヴァルドであったが、未だ非嫡子の一人も産まれてはいなかった。そのため一部の家臣からは心配する声も上がっていたのだが……そんな家臣たちの心配をあざ笑うかのように、婚姻後すぐにユスティーナの妊娠が明らかになる。十月十日後、無事に産まれたのが、現第一皇子アルヴェルト・アスナルトである。そしてそれから数ヶ月後に再びユスティーナは身ごもり、現第二皇子であるユリウス・アスナルトを産む。二人の帝位継承者を無事この世に産み出したユスティーナは、皇太子妃としての役目を全うしたといっても過言ではない。臣下たちは、皇帝の血が無事継承されていこうとしている様に、ほっと胸をなで下ろした。


 エドヴァルドが22歳、そしてユスティーナが17歳のとき、エドヴァルドはアスナルト帝国の皇帝の座を、自身の父親から譲り受ける。アスナルト帝国では後継問題の関係から、皇帝存命中の帝位の委譲が常であり、皇太子が22歳から40歳の間にその帝位を譲らなければならないという決まりであった。代々の帝位の委譲は、皇帝の死などの例外を除き、皇太子が30歳前後のときに行われるのがほぼ通例となっていたため、早々の帝位の委譲に少なからず反発の声もあがったが、エドヴァルドの才能は幼少の頃から遺憾なく発揮されており、結局のところほとんど問題なく周囲に受け入れられた。エドヴァルドの父であるサムエルも決して皇帝として悪かったわけではなかったが、彼の最大の欠点は、自身が皇帝であることを憂いていたことだろう。サムエルは、幼い頃からいずれ帝位を継ぐ者として教育されてきたが、彼自身はアスナルト帝国という大国の長として大きな権力を持つよりも、街で暮らす平民のような穏やかな暮らしをずっと切望していたのである。


 エドヴァルドが皇帝につくと、その後宮には各地から多くの女たちが送られてきた。彼女たちがエドヴァルドの寵を争って騒がしく暮らしていた中、ユスティーナは後宮の一角でしばらくひっそりと暮らしていた。二人の皇子を産んだ皇妃の存在を、後宮の女たちがつい忘れてしまうほどに、ユスティーナは一切その姿を表に出すことはなかった。


 ユスティーナの性格をよく知るマリアンにとっては、一番不気味な期間だったと、今ではしみじみと思う。


 そんな中ある日突然、彼女は牙を向くことになる。後宮の粛正であった。彼女はじっくりと伺っていたのだ。エドヴァルドの皇帝としての能力、後宮の者たちの振る舞い、その一つ一つをじっくりと眺めていた。アスナルト帝国で絶大な力を持つロレイン公爵家の人間であり、かつ皇太子を産んだ妃であるユスティーナに、後宮内でも、宮廷においても、敵う者などほとんどいなかった。


 この日から、彼女は”皇妃ユスティーナ”の道を歩み始めたのである。




「ねえマリアン。私、街に行ってみたいわ」


 ある日突然ユスティーナは、瞳を輝かせながら、側に立つマリアンにそう言った。


「皇妃さま、それは無理だと思います。後宮からの外出はほとんど認められておりませんもの」


 申し訳なさそうに答えるマリアンに、ユスティーナは笑顔を向ける。


「あら、何を言っているの、マリアン。認められるに決まっているじゃないの。私は誰だと思ってるの。皇妃ユスティーナよ」


 マリアンはユスティーナの言葉に面くらい、一瞬何か言おうと口を開きかけたが、すぐに諦めたように頷いた。ユスティーナは、やはりユスティーナであったのである。


「分かりました。すぐに許可を頂いて参ります」


 すぐさま外宮へ足を運んだマリアンは、後宮を管理する内宰府に赴き皇妃の外出許可を求めた。ユスティーナの名に慌てたのだろう。話は宰相からエドヴァルドの下に届き、本来なら認められるはずのない話であったが、皇帝の名で許しが出ることになる。



「皇妃さま、大変遅くなりましたが、無事許可を頂くことができました」


 マリアンがユスティーナの居室を出てから、再び彼女の下に戻ってきたのは数時間後であった。皇妃の外出の目的、外出先、連れて行く共の者の数や、護衛の問題。ユスティーナの「街に行きたい」という言葉だけから、彼女の意を正確に酌み取り、マリアンはその全ての問題を片付けてユスティーナの下に戻ってきた。少し疲れを滲ませたマリアンに、ユスティーナは笑顔を向ける。


「あら、当たり前じゃないの」


 さも当然であると言わんばかりに、皇妃さまは今日も、艶然と笑う。


"艶然" は "えんぜん" とよみます。


すいません、急いで書いたので結構適当になってしまいました・・・。

次の話にこの関連の話を入れようと思ってたんですけど

なんかうまく入らなかったので閑話休題的な感じで入れることにしました。


とりあえずユスティーナだけが

例外的にふらふら外出できてるんですよってことです・・・(^^;


いつか書き直したいです。


しかし速攻皇子を産むとか、全くユスティーナに都合のいい設定ですね。

(自分で言うなw)

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