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皇妃さまは艶やかに笑う  作者: 田上 みあ
皇妃さまは今日も悠然と微笑む
5/22

◇2

 それからユスティーナがまず行ったことは、マリアンに命じてフレアの生活を調査させることであった。やると決めたからには徹底的に。それがユスティーナのやり方であった。反論できない正当な理由をつきつけて徹底的にお灸を据える。ユスティーナは他の後宮の女たちと違い、自分の立場を利用することはほとんどない。だからマリアンを含め、宮廷の家臣たちのほとんどはユスティーナのことを好いていた。

 

 そういったユスティーナの様々は性格を、後宮に来て長いテオドラは把握していたはずである。ユスティーナは普段後宮の女たちの争いには無関心であるが、自身のテリトリーを侵されることを心底嫌う。テオドラは、ユスティーナの逆鱗に触れることなく長く後宮で寵妃の立場にあった女性である。決して性格がいい人間ではなかったが、ユスティーナも彼女の賢さを認めていた。

 

 数週間後、調査結果が記された報告書がマリアン経由でユスティーナに手渡された。

 

 自室のソファーにゆったりと腰掛け、お気に入りのハーブティーを優雅に飲みながら、ユスティーナはじっくりと報告書に目を通した。事前にマリアンも目を通していたが、そこには後宮での生活だけではなく、フレアが帝国に来る前の、ハメルーン王国での生活についての情報も添付されている。宮廷内の人間だけでなく、公爵家の力も利用させてもらったのだ。主人がやると決めたからには、どんな些細なことでも完璧にその命令を遂行する。それがマリアンの信条であった。


「ふふ。よくできた報告書だったわ、マリアン。ありがとう」


 一通り報告書を読み終えたユスティーナは、テーブルの上に報告書の束を置きながら、マリアンに微笑んだ。


「有り難いお言葉でございます、ユスティーナさま」


 ユスティーナの言葉に、マリアンも微笑みを浮かべながら礼をした。しかしマリアンには、報告書を読み終えたユスティーナの目が笑っていないことが分かっていた。どの部分がユスティーナを怒らせたのか、マリアンには分かる。


「それにしても、テオドラも大胆なことをしたものねぇ。この私を利用するなんて」


 やはりユスティーナさまは気付いておられたか、とマリアンは思う。


 結論からいうと、おそらくフレアはテオドラにはめられたのであろう。後宮に来てまだ日が浅いフレアは、ユスティーナの怖さを知らない。後宮の中で表に出てこない皇妃など存在しないも同じだ、と思っていたに違いない。現に、報告書にもそのような発言をしていたことが記されている。


 フレアとテオドラの騒動は、早朝に湯殿を利用するフレアの習慣を、テオドラが利用したことで起こった。フレアの部屋から湯殿へ行く道筋の近くに、ユスティーナの居室が存在する。フレアがちょうどユスティーナの居室の側を通りかかるその瞬間を見計らって、テオドラが前方からやってくる。互いに侍女を何人も引き連れて歩く後宮の寵妃たちは、向かい合ったとき、どちらが道を譲るかでその序列が決まるといっても過言ではない。フレアはもちろん、引かなかった。寵妃の名をもらい侍女の数も格段に増え、自分は後宮の中で今最も皇帝の寵愛を受けている存在だという自負が、フレアの中にはあった。向かい合った相手は、同じく寵妃の名を持つ存在であるとはいえ、過去の遺物だ。恐るるに足らない。フレアはおそらくそう考えたのであろう。テオドラに道を譲るよう無言で促した。しかしテオドラは引かなかった。そして、あの騒動が起こった。


 些細なことであった。罠とはいえないほどの。しかし、フレアはそのテオドラがしかけた巧妙な罠にかかってしまった。その傲慢さと、無知さ故に。そして、ユスティーナの気を引いてしまった。


 ユスティーナの居室は、後宮の他の女たちとは少し離れた場所に位置している。だから、後宮の女たちがユスティーナの居室の側に来ることはほとんどない。むしろ近寄らないようにしていると言っても過言ではない。後宮の中でも古参の女たちは、これまでにユスティーナの勘気に振れ、後宮を追い出された女たちの末路を知っている。行く必要がない場所に、敢えて近づくことはない。しかしフレアは、そのような事情を知らなかった。だから、自室から湯殿への近道として、ユスティーナの居室の側の通路を使っていた。


 そしてテオドラに、そこに目をつけられてしまった。


 ユスティーナの居室の側を通ることが、禁じられているわけではない。そして寵妃どうしの小競り合いも。フレアとテオドラの騒ぎは、実は互いに何の落ち度もない。テオドラは、ユスティーナの性格をよく知っていた。理不尽な処罰はしない、ということを。だから、少し騒ぎを起こすことでユスティーナにフレアの存在を印象付けさせ、そして、彼女のことを調べさせるように仕向けた。テオドラは、フレアがユスティーナの怒りを買う行いをしていることを知っていた。同時に、自分にはユスティーナの怒りを買う理由が何もない、という自信もあった。


「まあいいわ。今の問題はこのフレアとかいう女ね」


 ユスティーナの目に冷たさが増す。


「私の部屋の近くで騒ぎ立てただけでは飽き足らず、こんなこともしでかすなんて。少しお灸を据えてあげるだけのつもりだったけど、この女、後宮には必要ないわ」


 冷え冷えとした視線をマリアンに向け、ユスティーナは言う。


「陛下にお会いするわ。すぐに知らせを向かわせなさい」


 マリアンはさっと頷くと、指示を出すためにすぐさまユスティーナの自室を後にした。


ユスティーナの口調が困る

砕けた口調にするか、お姫様口調にするか


それにしてもなんか文章がくどいですね…

色々削れそう…

もっとちゃちゃっと軽く書きたいです

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