9日目
キスの翌日、15分の空気は少し違っていた。
言葉よりも、沈黙が多い。
だけどそれは“気まずさ”ではない。
心が静かにほどけていくとき、
人は言葉を探さなくなる。
タクヤ「……昨日のこと、後悔してない?」
タクヤの問いかけに、エリはほんの一瞬、空を見上げた。
雲ひとつない昼下がり。
柔らかい光が、彼女の横顔をやさしくなぞっていた。
エリ「ううん。後悔……してないよ。
たぶん、今までで一番、
ちゃんと息ができた気がしたから」
タクヤはゆっくり頷いた。
彼女の心に届いたという確信が、
胸の奥をあたためた。
それからの日々、
15分はゆるやかに変化していった。
どちらともなく手がふれるようになった...
エリがタクヤの手をぎゅっと握る
タクヤも握り返す
ぎゅっ…ああっ気持ちが落ち着く…
若い男の子なのに…安心する…
こんな若い子に心を惹かれるなんて…
絶対に誰にも知られたく無い…
ファミレスのバックヤードとはいえ同僚の目も気になる
二人はそれ以上には踏み込めなかった。
タクヤは女性経験が無くこれ以上
どうしていいのか分からない
ある日、いつもの15分は裏口の物陰で
タクヤは思い切ってエリをハグした…
ドキドキする…
たかがハグに二人はドギマギする
エリはぽつりと言った。
「私ね、最初は、“おとなしい子だな”って思ってたんだよ」
タクヤは目を伏せずに聞いていた。
エリ「でも、違った。あなたは……
私より、ずっと強い。
私が見たくなかったものから、
逃げずに真っ直ぐに向き合ってる」
こんな関係許されるはず無い…
若者の未来を奪っちゃいけないのに…
タクヤ「エリさんがいたからです。
僕、怖かったですよ。でも……
あなたが笑ってくれたとき、全部救われたんです」
若さなのか、一途に思い込むと
他が見えなくなる…
エリは少し照れたように笑い、
そっとタクヤの肩に頭を預けた。
もう、“時間”なんてどうでもよかった。
でも、“日常の15分”を守ってきたからこそ、今がある。
カズ「なんか、君ら最近仲良過ぎない?」
雰囲気で察する
タクヤ「ああ、いい感じだよ」
今日は一緒に帰るんだ♪
カズ「ふ~ん」
調子に乗ってコケるなよ
今日はファミレスの裏口で待ち合わせ、
シフトを調整してもらって帰り時間を合わせた
エリの家までの帰り道。
タクヤの家の前を通るいつもの道。
今日は自転車を止めた。
エリが自ら言った。
「……少しだけ、寄っていっていい?」
言っちゃった...